2008年9月24日 (水)

キジョラン(鬼女蘭)   鬼女の生まれ変わり

名前 キジョラン(鬼女蘭)
分類 ガガイモ科キジョラン属
花期 8月~9月
生育地 常緑樹林内
私が出会った場所 東京都・高尾山

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 キジョランはランの仲間ではない、ガガイモ科のツル性の植物である。キジョランはどこででも出会える植物ではないが、高尾山ではそのキジョランに普通に出会うことができる。特に2号路では写真のような見事なキジョランに出会うことができる。

 キジョランの花に関心を持つ人はあまりいない。「これが花なの」と思うような花である。下の写真は望遠レンズを使って撮ったキジョランの花である。この花がいかに地味か理解できるであろう。

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Dscf0476kijoranjpg1jpg1キジョランは漢字で書けば鬼女蘭。和名は、種子の白毛を髪を振り乱した鬼女のものとみなしたことによる。そうキジョランの魅力はその種子なのである。冬から早春にかけて、高尾山ではこの白毛が風に舞う。

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このキジョランを食草とする蝶がいる。アサギマダラという美しい蝶だ。アサギマダラは、この白毛のように夢のようにひらひらと舞う。

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 アサギマダラという蝶は鬼女の生まれ変わりではないだろうか。鬼女の種子に出会って、そんなことを考えた。

◆関連記事 

アサギマダラ 渡りをする蝶

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2008年9月21日 (日)

キツリフネ  私にさわらないで

名前 キツリフネ(黄釣舟)
分類 ツリフネソウ科ツリフネソウ属
花期 6月~9月
生育地 平地の渓流沿い、湿った林内
が出会った場所 日本全国の山で普通

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 帆掛け船のような形をした黄色い花ということでキツネフネという名前がつけられた。赤紫の花をつけるツリフネソウと同じ仲間である。キツネフネはツリフネソウとくらべやや高いところに自生する。

 学名は Impatiens noli-tangere 。属名Impatiensは「こらえきれないもの」という意味。Impatiensはインパチェンスという発音でホウセンカの仲間の属名である(日本で売られているインパチェンスはアフリカホウセンカ)。小種名noli-tangereは「私にさわらないで」。学名を属名、小種名と並べると「こらえきれない、私にさわらないで」となる。学名らしからぬ学名である。英名はTouch-me-not.フランス名はNe-me-touchez-pas、いずれも「私にさわらないで」花言葉も「私にさわらないで」である。

 なぜこのような世界的な共通性がうまれるのだろうか。それは熟した果実が、軽く触れただけで音を立ててはじけ飛ぶという性質に由来している。ホウセンカの仲間の特徴である。

 雨の礼文島で写真のキツリフネに出会った。女性的な花だと思った。清楚な美しさをまとったその花は「私にさわらないで」と語っているようだった。

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2008年9月19日 (金)

キキョウ  桔梗色の空

名前 キキョウ(桔梗)
分類 キキョウ科キキョウ属
花期 7月~9月
生育地 平地および山地
が出会った場所 野生では長野県にある日本百名山の麓で出会っただけ(8月初旬)

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 花に興味を持ってからしばらく、キキョウを園芸種だと思っていた。野生で見られる花ではないと思っていた。
 花に興味を持って山歩きを始め10年、野生のキキョウに長野県にある日本百名山の麓で初めて出会った。

 『万葉集』の山上憶良の歌に「秋の野の花を詠める二首」が載っている。

花を指折りかき数ふれば
七種の花
萩の花尾花(おばな)葛花(くずばな)
瞿麦(なでしこ)の花女郎花(おみなえし)
また藤袴(ふじばかま)朝顔の花

 さてこの歌の最後に詠まれている朝顔の花の正体は実はキキョウであると言われる。その根拠として朝顔が庭の花で野の花でないことや、朝顔はもともと日本にあった花ではなく、日本への渡来が平安時代であることから万葉集が編纂された奈良時代には見ることができない花であること等があげられている。

 宮澤賢治の名作『銀河鉄道の夜』には桔梗いろが銀河を覆う空の色として使われている。

がらんとしした桔梗いろの空から、さっき見たやうな鷺が、まるで雪の降るやうに、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに舞ひおりて来ました。

美しい美しい桔梗いろのがらんとした空の下を実に何万といふ小さな鳥どもが幾組もめいめいせはしくせはしく鳴いて通って行くのでした。

 私は賢治の描く桔梗いろの空と鳥の取り合わせの美しさに圧倒された。目がくらむほどに美しい…
 賢治が好んだ美しい色を宿したキキョウが、野生で普通に見られるようになればいいと思う。

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2008年9月18日 (木)

ワレモコウ  さびしききわみを感じる花

名前 ワレモコウ(吾亦紅)
分類 バラ科
花期 7月~10月
生育地 平地および山地(山地では普通に見られる)
が出会った場所 埼玉県・久喜市、他、長野県・霧ガ峰、山梨県・大菩薩峠、群馬県・尾瀬ヶ原 その他多くの場所で 

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 バラ科であるが、花はどう見てもバラの仲間には見えない。しかし、その独特の風情はなぜか人を惹きつける。古くは「源氏物語」の匂宮の巻にも描かれ、現在は花材やドライフラワーでもよく使われている。

 「徒然草」には「家にありたき木は…、(中略)秋の草は荻薄、きちかう(キキョウのこと)、萩、女郎花、藤袴、しおに(シオンのこと)、われもかう…」とある。ワレモコウは兼好法師の美意識に適う花なのである。

 ワレモコウを描いた俳句や短歌には心惹かれる歌が多い。

吾も亦(また)紅(くれない)なりとひそやかに  高浜虚子
吾亦紅 すすきかるかや 秋草の さびしききはみ 君におくらむ 若山牧水

 さびしき極みをプレゼントする。何とすてきなプレゼントだろう。わびしき極みは美しさの極みでもあると私は感じる。さて、ワレモコウを描いた現代の詩を最後に紹介したい。    

      ワレモコウ まど・みちお

やあ!
と思わずぼくは
笑いかけたような気がする

やあ!
とひびくようにきみも
笑いかえしてきたような気がする

どこもかしこも
しらない草ばかりぼうぼうの
この草原にことしもきて
やっと見つけた顔なじみ
ワレモコウ!

やまびこの子どもが忘れていった
ボンボンのように
雲のハンカチの上にちらばって
五つ六つ

いまごろ
どこでどうしているだろう
「ワレモコウっていうのよ」
と教えてくれた
あの去年の
リスのような目の女の子は

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2008年9月12日 (金)

キンエノコロ 黄金色の草地

名前 キンエノコロ(金狗尾草)
分類 イネ科エノコログサ属
生育地  道ばた、草原
私が出会った場所 埼玉県・春日部市内牧サイクリングロード、杉戸町、宮代町、栃木県・日光駅周辺、福島県・大内宿 他多数

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賢治に『どんぐりと山猫』という童話がある。童話集『注文の多い料理店』の第1話である。主人公の一郎は山猫から「めんどなさいばん」への出頭状をもらい、翌日、谷川に沿った小道を上の方に上っていく。そんな彼の前に突然黄金(きん)いろの草地が現れる。

  一郎がすこし行きましたら、谷川にそったみちは、もう細くなって消えてしまいました。そして谷川の南の、まっ黒な榧(かや)の木の森の方へ、あたらしいちいさなみちがついていました。
  一郎はそのみちをのぼって行きました。榧の枝はまっくろに重なりあって、青ぞらは一きれも見えず、みちは大へん急な坂になりました。一郎が顔をまっかにして、汗(あせ)をぽとぽとおとしながら、その坂をのぼりますと、にわかにぱっと明るくなって、眼がちくっとしました。そこはうつくしい黄金(きん)いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まわりは立派なオリーブいろのかやの木のもりでかこまれてありました。
 その草地のまん中に、せいの低いおかしな形の男が、膝(ひざ)を曲げて手に革鞭(かわむち)をもって、だまってこっちをみていたのです。

  多くの人が黄金いろの草地は想像上の世界だと思うだろう。しかし、黄金いろの草地は存在する。ドングリの季節、キンエノコロの草原は夕日を浴び黄金いろの草地となる。この言葉を失うほどの美しい世界を、埼玉の平地ではどこでも普通に見ることができる。
 埼玉県春日部市に内牧サイクリングロードという場所がある。私はそこで夕方走るのが好きだった。特に秋の夕暮れ、道ばたのキンエノコロを見ながら走るときの幸せといったら…。お金は全くかからない、贅沢である。

撮影 上から

 平成18年9月23日 日光・大谷川
 平成19年 杉戸町高野台

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2008年9月 6日 (土)

ツリガネニンジン  露とともに輝く花

名前 ツリガネニンジン(釣鐘人参)
分類 キキョウ科
花期 8月~10月
生育地 平地および山地(山地では普通に見られる)
が出会った場所 埼玉県・春日部市、北海道・礼文島・利尻島、長野県・四阿山、福島県・安達太良山、その他日本各地の山野で

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 ツリガネニンジンはキキョウ科の多年草。和名は花の形を釣り鐘に、根を薬用の朝鮮人参にたとえたもの。俗謡で「山でうまいはおけらにととき」とある。そのとときがツリガネニンジン。若芽は癖がなくやわらかで様々な料理方法で食される。

 上の写真は霧に包まれた礼文島で撮ったもの。ツリガネニンジンは朝露の似合う花だ。宮澤賢治もツリガネソウの名前でこの花を詩や童話に登場させている。まずは童話「貝の火」を眺めてみよう。

風が吹いて草の露がバラバラとこぼれます。つりがねそうが朝の鐘を、「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と鳴らしています。

次に「春と修羅 第二集」から 「山の晨明に関する童話風の構想」の一部を紹介したい。

さうしてどうだ
風が吹くと 風が吹くと
傾斜になったいちめんの釣鐘草(ブリユーベル)の花に
かゞやかに かがやかに
またうつくしく露がきらめき
わたくしもどこかへ行ってしまひさうになる……

20080820_img_8830ed_2

 宮澤賢治にとっても、この花は露と深く結びついているようである。朝霧の中、この世のものとは思えない美しさに、わたしもどこかへ行ってしまいそうになる。

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2008年9月 3日 (水)

バンダイクワガタ 百名山・磐梯山の固有種との出会い

名前 バンダイクワガタ (磐梯鍬形)
分類 ゴマノハグサ科
生育地と花期 磐梯山特産(6月から7月前半)

私が出会った場所 裏磐梯(7月後半)

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明治二十一年七月十五日の朝、磐梯山は大爆発をした。噴き上げた濃い灰のため、しばらくは四方暗黒、遠くから眺めると、柱状をなした煙の高さは、磐梯山の、三、四倍に達した。やがてその煙は傘のように広がって、大空を覆ったという。

 深田久弥の日本百名山「磐梯山」はこんな書き出しで語られる。
 これだけの噴火は生態系にも多大な影響をもたらしただろう。磐梯山にはバンダイクワガタという特産種がある。平地で普通に見ることができるオオイヌノフグリの仲間である。この植物はその噴火の後も生き残り、今も登山者を楽しませている。

 2008年6月、何度か週末に磐梯山登山を試みようとした、磐梯山に登るなら磐梯山特産のバンダイクワガタが咲いている時期に登りたいと思ったからだ。しかし、仕事と天気の関係で登ることができなかった。

 そして同年7月末、磐梯山に登った。バンダイクワガタとの出会いはまったく期待していなかった。しかし…、たった一株だけ咲いていた。「ありがとう」という気持ちでいっぱいになった。

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2008年6月 7日 (土)

ウツギ(別名・ウノハナ)  「夏は来ぬ」

名前 ウツギ(空木) 別名・ウノハナ(卯の花)
分類 ユキノシタ科ウツギ属
花期 5月~6月
生育地 平地および山地の川沿いや林縁
私が出会った場所 埼玉県・蓮田市(黒浜地区 5月)、東京都・御岳渓谷(5月)、高尾山(5月)、神奈川県・不老山(6月初旬)、その他 日本の各地で出会っている

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 ウツギは空木。枝が中空になることから名前がついた。別名・卯の花は旧暦4月の卯月に花が咲くことによる。卯の花で思い出されるのが名曲「夏は来ぬ」。その1番と5番に卯の花が描かれる。作詞は国文学者・佐佐木信綱。国文学者だけに中国に々の文字がないことから、佐々木ではなく佐佐木と書くようになったという。

 そんな文学者が書いただけあってその言葉の使い方は子どもには難しく、「夏は来ぬ」は「夏は来ない」という意味だと思っていた。大人になるまで卯の花もホトトギスもクイナ(「夏は来ぬ」で歌われているクイナはクイナの仲間のヒクイナのこと)も知らなかった。知らないのに言葉の響きは大好きだった。卯の花やホトトギス、クイナがどんな生き物か知るようになって、ますますこの曲が好きになった。

夏は来ぬ

1番
卯の花の匂う 垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍び音(しのびね)もらす 夏は来ぬ

5番
五月闇(さつきやみ) 蛍飛び交い
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ

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2008年5月27日 (火)

ショウジョウバカマ  ショウジョウとは何か?

名前 ショウジョウバカマ(猩々袴)
分類 ユリ科
花期 4月~5月
生育地 山地の谷沿いや湿地
私が出会った場所 日光・戦場ヶ原、竜王峡、長野・戸隠森林公園、白馬山麓、新潟・角田山 他 山地のたくさんの場所で出会っている。

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ショウジョウバカマは私が二度に渡ってその名前の由来を間違えた花だ。はじめ私はこの花を耳で覚えた。そしてこの花はショウジョバカマだと思った。要するに、少女袴、少女がはく袴である。図鑑を見てこれがショウジョバカマではなくショウジョウバカマだと知る。漢字で書くと猩々袴。猩々がはく袴という意味であった。ここで私は第二のミスを犯した。私はオラウータンがはく袴という意味にとったのだ。要するに私はその当時、猩々=オラウータンだと思っていたのだ。

確かに、オラウータンは猩々という呼び方で呼ばれることがある。私は、猩々という動物をエドガー・アラン・ポーの作品『モルグ街の殺人』で知った。翻訳されたその作品に猩々という動物が登場する、そしてそれはオラウータンのことだと書かれていた。そのためショウジョウバカマという名前を聞いたとき、オラウータンの袴のことだろうと認識したのだ。今から考えれば、昔から日本に存在するショウジョウバカマにオラウータンが使われるなどということがある可能性があるはずがないのは、自明の理なのであるが。

 ショウジョウバカマの猩々は中国の伝説上の怪物・猩々のこと。人の言葉を理解し、酒を好むという。猩々の名がつく生き物としてショウジョウトンボがいるが、いずれもその赤い色から猩々の名前がつけられている。蛇足ではあるが、ショウジョウバエは赤さからではなく、酒を好むことから猩々の名前がついているのだという。

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2008年5月26日 (月)

ミゾソバ  風うつくしき日暮かな

名前 ミゾソバ(溝蕎麦) 別名・ウシノヒタイ(牛の額)
分類 タデ科
花期 7月~10月
生育地 平地から山地の水辺
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町、春日部市 他 全国各地で出会っている。

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 ミゾソバは溝蕎麦。溝に生える蕎麦に似た草という意味である。別名ウシノヒタイ。これはミゾソバの葉の形が、牛の顔を正面から見た形に似ていることによる。

 ミゾソバは美しくかわいらしい花を咲かせる。ただ、夕暮れ時に見るこの花はまた違った趣を呈するのだ。俳句にミゾソバを詠み込んだ山口みちこはきっとその美しさに出会ったに違いない。

溝蕎麦の風うつくしき日暮かな  山口みちこ

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ハキダメギク 夕暮れ時に輝く花

名前 ハキダメギク(掃溜菊)
分類 キク科
花期 6月~11月
生育地 関東地方では道ばたに普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町 他 道ばたに普通に見ることができる

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 大正時代、東京世田谷の掃き溜めで見つかったことから植物学者・牧野富太郎によって命名された。帰化植物で、ふるさとは熱帯アメリカ。

 教師である私の専門は英語だが、ある時、理科を教えることになったことから真剣に植物を学び始めた。そして、植物に興味を持ち、身近な植物の名を覚えていった。そんなときこの花に出会った。小さくてかわいらしい花だと思った。早速、植物図鑑で名前を調べて愕然とした。「ハキダメギク」。この花の本質を好きになれば名前など関係ないと言い聞かせても、どうしてもこの名前が、この花に対しての愛おしい気持ちを萎えさせた。そんな時 まど・みちおの詩に出会った。

◆ハキダメギク  まど・みちお

落し物を拾おうとして
かがんだ小母さんかなんかが
まあ!
と びっくりするのです
いきなり 目の前に
星でも みつけたように
そのへんの 道ばたや
畠のふちなどで…

でも 落し物をする人が
そんなに しょっちゅう
いるわけも ありませんから
ほんとは だれも気がつきません

いやな名前をつけられたまま
ひっそりと光っている
そんな米つぶほどの花のことなどは…

「ハキダメギク」という名前をつけられなけば、まど・みちおが取り上げることはなかったろう。そう思えば「ハキダメギク」という名も悪くはないかとも思う。

さて、小母さんがこの花を見つけたのはいつだろう。おそらく夕暮れ時ではないだろう。
もし、夕暮れ時だとしたら、その美しさといったら…

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2008年5月20日 (火)

ナズナ  清少納言が認めた草

名前 ナズナ(薺) 別名・ぺんぺん草
分類 アブラナ科
花期 3月~4月
生育地 平地の草原、道ばた
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町 他 全国各地で出会っている

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ひっそりかんとしてぺんぺん草の花ざかり  山頭火

 ぺんぺん草はナズナの別称。果実の形を三味線のバチにたとえた命名である。春の七種の一つで、日本では室町時代から七種粥に入れるようになったという。地味な花ではあるが、花に目を近づけて眺めてみると、一株のぺんぺん草の中に、花盛りが感じられる。「枕草子」第六十六段「草は」で、清少納言はおかし(趣がある)と思う草をいくつもあげている。なずなはそのうちの一つである。あげられている草花はどちらかというと地味なものばかりであり、その趣味とそれらを選ぶ感性は私の好みでもある。

 私は雪の日に見るなずなが特に好きだ。

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2008年5月10日 (土)

フモトスミレ 高貴な紫をまとった花

名前 フモトスミレ(麓菫)
分類 スミレ科
花期  3月下旬~5月中旬
生育地 山地
私が出会った場所 東京都・大塚山、埼玉県・子の権現、栃木県・塩原渓谷遊歩道

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山渓ハンディ図鑑「日本のスミレ」でフモトスミレは「地味ながらもハイセンスな逸品」と紹介されている。言い得て妙と感じた。私は、花の後ろ側の紫色にハイセンスさを感じる。はっとするような鮮やかな紫である。

撮影 平成20年4月 子の権現

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2008年5月 8日 (木)

ニオイタチツボスミレ  かお くっつけて しゃがんでた(まど・みちお)

名前 ニオイタチツボスミレ(匂立坪菫)
分類 スミレ科
花期 3月下旬~5月中旬
生育地 開けた草地、明るい落葉樹林下
私が出会った場所 栃木県・三毳山、東京都・裏高尾、神奈川県・大山

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前回の寫眞館「エイザンスミレ」で紹介した、まど・みちお作『すみれのはな』には続きがある。

すみれのはな まど・みちお 

きがついたら しゃがんでた
かお くっつけて しゃがんでた
すみれのはな
すみれのはな
それは ちいさな こもれびに
いっしょうけんめい さいてたよ

 私はこのスミレに出会うと、いつもしゃがんで顔をくっつけてみる。そのスミレの名はニオイタチツボスミレ。花にかすかな芳香があることで知られている。このスミレの花を知っている人の多くは、私と同じような行動をとるようだ。裏高尾で、このスミレの花に鼻を近づけている人たちと何度も出会った。

 悲しいことに私はこのスミレの花に匂いを感じたことがない。おそらく私が花粉症であることに関係があるのだろう。この花が咲く頃は私の花粉症の症状のピーク時に当たるからだ。私以外の人でも、このにおいを感じない人はいるようである。裏高尾で出会った人たちの、半分は「いい香り」と言って喜んでいたが、半分は「においがしない」と私と同じ感想を語っていた。

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2008年5月 6日 (火)

エイザンスミレ  ひとりぼっちでさいてたよ(まど・みちお「すみれのはな」)

名前 エイザンスミレ(叡山菫)
分類 スミレ科
花期 4月~5月
生育地
私が出会った場所 埼玉県・伊豆ヶ岳、栃木県・日光小倉山、県民の森、東京都・高尾山、御岳山、神奈川県・大山 その他多くの山で

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童謡『ぞうさん』で有名なまど・みちおに「すみれのはな」という私のお気に入りである詩がある。

    すみれのはな  まど・みちお

しらないまに いっていた
こんにちはって いっていた
すみれのはな
すみれのはな
それは さみしい やまみちに
ひとりぼっちで さいてたよ

 この詩を読んで、私が思い浮かべたのはエイザンスミレ。写真のように葉が深く裂けているので、見分けが難しいスミレの中でもこのスミレはかんたんに同定できる。もっと葉が裂けるヒゴスミレというスミレが存在するが、こちらはエイザンスミレと比べ見られる場所は局所的である。

 さみしいやまみちに ひとりぼっちで咲いているイメージにぴったりのスミレだと思う。

撮影 
上 埼玉県伊豆ヶ岳
下 栃木県県民の森

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2008年5月 3日 (土)

ハクサンチドリ 林間学校の思い出 その2

名前 ハクサンチドリ(白山千鳥)
分類 ラン科
花期 6月~8月
生育地 高山
私が出会った場所 群馬・至仏山、長野・岩菅山、八方尾根、千畳敷カール 他

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 前回の寫眞館「ギンリョウソウ」で林間学校の紹介をした。その時の林間学校でもう一つ、印象に残っている花がある。それはハクサンチドリ。出会った山は、志賀高原にある岩菅山。

 岩菅山は高山である。山登りが苦手な生徒達はへとへとになっていた。私は最後尾の生徒につき、生徒達を励まし励まし登った。花を紹介しながら、ゆっくりゆっくり登った。そして、頂上近くの難所のざれ場でハクサンチドリに出会った。美しい蘭の花をじっくり味わい、そしてなんとか頂上にたどり着いた。

 登山の後、夕食のバーベキューが美味しかったこと。そして、その後行われたキャンプファイヤー。
  暗闇の中に浮かび上がる炎、そして谷川俊太郎の「生きる」の詩が、闇と炎の中を静かな響きとして流れていく。炎がすべて消えた後、打ち上げられた花火の美しかったこと。実行委員達の目から涙がこぼれ、そしてその涙は波紋のように伝わっていった。

  あのとき「生きる」とともに読まれた、まど・みちおの詩「山のてっぺん」をあの当時の実行委員は覚えているだろうか。実行委員達が、この詩が今の私たちにぴったりと選んできた詩だった。

   山のてっぺん まど・みちお

ふもとの小川までおりてきて
ふりかえると
山のてっぺんは 空の中にまだ明るい

ほら あそこに
豆つぶみたいになって ぼくたちがいる
豆つぶなのに
あんなに よく見えて
さっきのままに 風にふかれて
まわりの山々や
とおい町や
町のむこうの海や
海のもっとむこうにかすむ明日へ
あんなに まぶしく手をふって

いつか また
あそこへ登っていく日のぼくたちを
あのまま ああして
待っているかのように

  この詩はあのときの自分たちにぴったりなのではなく、あのときから何年もの時が経過した今にぴったりなのではないかと思う。あの頃の私たちが、岩菅山の頂上で待っている気がする。あの頃の私たちに会ってみたいと思う。話してみたいと思う。

ハクサンチドリは思い出深い花だ。

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2008年5月 2日 (金)

ギンリョウソウ(銀龍草)② 林間学校での思い出 その1

名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている

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  この花を見ると思い出すのが、林間学校でのこの花との出会いだ。訪れた場所は志賀高原・岩菅山。当時、総合的な学習の時間などというものはなかったが、私は学活の時間を使い、下見で確認した鳥の鳴き声を教えたり、そこで見られる花を紹介するなどした。ただ、頂上を克服を目指し、登り切ったはいいけれど、もう二度と山になど行きたくないというような根性重視の苦行僧的登山は行いたくなかった。

  事前の学習が功を奏し、生徒が目の前に現れる花や鳥に興味を持ってくれた。 
  黒地に白い星模様のついたホシガラスが現れたり、先頭を行く生徒たちから「カケスが出ました」という連絡が入ったりと、それはそれは楽しい登山だった。

  頂上にたどり着き、下山途中で見つけたのがこの花・ギンリョウソウ。一緒に歩いていたクラスの生徒はこの花の不思議な魅力に捉えられた。この花を囲んで、この花の魅力を語る自分とその話に目を輝かせて聞きいる生徒たち。今・総合的な学習の時間で私が求めているのはこんな学びの姿勢だ。少なくとも教師→生徒という一方的な学びの場ではなかったのではないかと思う。この時一緒に花や鳥を楽しんだ生徒は、きっとこの後の山登りでも「この花なんだろう」などと考えてくれているはずだと私は思っている。

ギンリョウソウの花はあの頃を思い出させてくれる。

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2008年4月27日 (日)

スミレ(菫) アテナイのシンボルであった花

名前 スミレ(菫)
分類 スミレ科スミレ属
花期 4月~5月
生育地 日本全土の人家付近から丘陵まで
私が出会った場所 埼玉県春日部市、杉戸町、久喜市 他

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 スミレにはたくさんの種類がある。写真のスミレは、スミレの中のスミレ。
 人里に多く、「万葉集」にも登場するなど、古くから親しまれてきた花である。

 古代ギリシャではスミレはアテナイのシンボルであったという。アテナイ人は墓にスミレを供えた。また、ローマ人はその風習を継承し、スミレを墓に捧げに行く日を「スミレの日」と呼んだという。

 

 私は子どもの頃、野原で見つけたスミレを家に持ち帰り庭に植えた。その紫色の花が私を引きつけて放さなかったからである。スミレは枯れることなく、ずっとずっと庭の植えた場所で生きた。種もつけた。しかし、毎年知らず知らずのうちに種をつけているのだ。いつも気にしているのに、どうして花を見ることができないのかそれが不思議だった。大人になって閉鎖花の存在を知るまで。閉鎖花とは,花を開かずに,自分で種子を作ってしまう花。自宅の庭は条件が悪かったのか、スミレは花を咲かせず閉鎖花だけを作ったようだ。閉鎖花という存在を知らなかった私は、毎年、今年も花が咲いたのを見逃したと残念がったのであった。

  私が勤務している中学校の駐車場にスミレが咲いていた。今でも、子どもの時のようにスミレにときめきを感じることができることが嬉しい。

撮影 平成20年4月 久喜市

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ギンリョウソウ(銀龍草)① 『西の魔女が死んだ』で描かれた植物

名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている

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昨日紹介した『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)にはキュウリグサと共にもう一つ印象深い植物が登場する。主人公が林の中にある穴の中に落ちたとき、その植物が穴の中一面に咲いているのだ。その植物は物語の中で次のように表現されている。

◆穴の脇は更に深い洞のようになっていて、その一面に美しい銀色の花が咲いていたのだ。暗い林の奥の、そのまた暗い、ほとんど陽も届かないはずの場所に。その植物は二十センチくらいの、葉を持たない銀白色の鱗をつけた茎の先に、やはり銀細工のような小さな蘭に似た花をつけていた。それが何十本となく、まるで茸かつくしのように地面から生えているのを見るのは不思議な光景だった。

山の植物を少し知った人なら、この描写でこの花が銀龍草(ギンリョウソウ)だとわかるだろう。この小説の他の植物は片仮名で表現されているのに、このギンリョウソウは銀龍草にギンリョウソウというルビが振ってある。確かに漢字で表現したくなる素敵な名前の植物である。私の幻の森にふさわしい幻のような花だ。

撮影 2004年6月 駒止湿原にて

◆関連記事
キュウリグサ 『西の魔女が死んだ』で描かれた花 その1

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2008年4月26日 (土)

ハナイバナ  キュウリグサに似た花

名前 ハナイバナ(葉内花)
分類 ムラサキ科ハナイバナ属
生育地(分布) 日本全土の道ばた、畑、庭にごく普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、宮代町 他Img_3887

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 ハナイバナはキュウリグサと同じムラサキ科の植物。名前は葉と葉の間に花をつけることによる。キュウリグサ以上に味気ない名前ではあるが、キュウリグサとの違いを理解するにはよいのかもしれない。前回紹介したキュウリグサは、茎の先にサソリの尾の形に花を多数つける。

 3月から5月はハナイバナとキュウリグサのどちらも花を咲かせるので紛らわしい。6月になるとキュウリグサの花は終わり、ハナイバナのみが咲くようになり、ハナイバナはその後11月くらいまで花を見ることができる。

撮影 平成20年4月 埼玉県杉戸町

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キュウリグサ 『西の魔女が死んだ』に登場する植物

名前 キュウリグサ(胡瓜草)
分類 ムラサキ科
花期 3月~5月
生育地(分布) 日本全土の道ばたや庭
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市 他 日本の各地
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『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)という小説は生命を扱った素敵な物語だった。この度、映画化されたようである。

この物語には、シジュウカラ、エナガ、コガラ、ホトトギス、ホオノキ、クサノオウ、カヤツリグサ…と、たくさんの生き物が登場する。それがどんな生き物か知らなくてもこの小説を楽しむことはできる。しかしその生き物が映像として浮かぶとき、この物語は更に面白さをますはずだ。

 主人公の少女はサンルームの床のれんがの隅に生えている小さな雑草に興味を持つ。そしてそのワスレナグサを小さくしたような青い花にヒメワスレナグサという名前を付ける。素敵な名前だ。この花の正式名がキュウリグサであることは最後で提示されるが、この物語に心を動かされた人はこのキュウリグサがどんな植物か知っておくといいだろう。もむとキュウリのような匂いがするというキュウリグサ(試してみたが、そういわれればキュウリの匂いという気もする、その程度の匂いだと私は感じている)、私の好きな花の一つでもある。都会、田舎に関わらず日本中の平地のどこでも見ることができる花だが、とても小さいのでこの花に目を止める人はほとんどいない。

 こんな可憐な花なのに、名前はキュウリグサ。ドナウ川の川辺で恋人のため花を摘もうとした青年が、川に落ち急流に飲まれる前に恋人に花を投げ「私を忘れないで」と叫んだことから名前がつけられたといわれるワスレナグサ(勿忘草)と比べるとかわいそうな気もする。『西の魔女が死んだ』は、このちっぽけな花に多くの人が目を向けるきっかけを作ってくれるかもしれない。そうなればいい。

※撮影 2008.4 埼玉県・杉戸町

◆関連記事 
ギンリョウソウ(銀龍草)① 『西の魔女が死んだ』で描かれた花 その2

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2008年4月 6日 (日)

カタクリ 紫色の怪しい文字

名前 カタクリ(片栗) 
分類 ユリ科・カタクリ属
生育地 低山林内
私が出会った場所 埼玉県・寄居町、栃木県・三毳山、東京都・高尾山、福島県・仁田沼、新潟県・角田山・臥牛山・弥彦山・樋曽山、長野県・白馬 他多数 

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 かたくりの一つの花の花盛り         高野素十

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宮澤賢治の『若い木霊』という作品にカタクリは登場する。多くの人にとってはカタクリは花を楽しむ植物であるが、賢治が注目するのはその葉だ。私はこの賢治の作品を読んで以来、カタクリの葉の模様も楽しむようになった。

  (若い木霊は)ふらふら次の窪地にやって参りました。 
その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいかたくりの花が咲いていました。
  若い木だまにはそのうすむらさきの立派な花はふらふらうすぐろくひらめくだけではっきり見えませんでした。却ってそのつやつやした緑色の葉の上に 次々せわしくあらわれて又消えて行く 紫色のあやしい文字を読みました。
「はるだ、はるだ、はるの日がきた、」
  字は一つずつ生きて息をついて、消えてはあらわれ、あらわれては又消えました。
「そらでも、つちでも、くさのうえでもいちめんいちめん、ももいろの火がもえている」

紫色の怪しい文字から、世界を紡ぎ出す賢治に惹かれる。

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撮影 上から
     平成18年4月1日 樋曽山
     平成19年4月7日 角田山
     平成19年4月7日 角田山
     平成19年3月17日 三毳山
     平成19年3月17日 三毳山

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2008年4月 5日 (土)

オオミスミソウ(雪割草) みんな夢 雪割草が 咲いたのね

名前 オオミスミソウ(大三角草) 別名 雪割草
分類 キンポウゲ科・ミスミソウ属
生育地 平地~山地 日本海側に分布
私が出会った場所  新潟県・弥彦山、角田山、樋曽山(角田山の隣にある、登山口に案内さえ出ていない山)、臥牛山

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みんな夢雪割草が咲いたのね  
                三橋鷹女

鷹女のこの句が好きだ。鷹女が描いた雪割草に会うために、4月になると新潟の山々を訪れる。新幹線を使えば、新潟にあっという間に着いてしまう。そして、この美しい花と出会うことができる。青い花、ピンクの花、白い花そのグラデーションからなる雪割草のお花畑は美しい。その色のバリエーションの多さは不思議であり、その不思議が強烈な美を生み出している。

撮影 平成19年4月7日  角田山 
    平成20年5月     佐渡(一番下の写真)

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2008年3月31日 (月)

コブシ 初めての担任・お別れ会・そしてコブシの花

名前 コブシ(辛夷)
分類 モクレン科モクレン属
花期 3月~4月
生育地 丘陵、山地
私が出会った場所 東京都・高尾山、群馬県・伊香保森林公園、長野県・戸隠森林公園
類似種との違い タムシバというコブシとそっくりの花を咲かせる気があるが、コブシはコブシは花の下に小葉がある。タムシバにはない。

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 コブシの花をみると思い出すことがある。
 それは教師になって初めて担任したクラスのことである。

 私のクラスは1年2組だった。初めての担任ということで、がむしゃらに生徒とぶつかった。ずいぶんへまもしたがたくさんの涙と笑いがあった。毎日、毎日が新鮮だった。

 終了式の前日の午後、クラスのお別れ会が開かれた。班の出し物、歌、ゲームなど生徒が企画したお別れ会。ゲームも生徒と一緒に参加した。罰ゲームなどもやらなければならなかったりした。そんなお別れ会の終盤、「これなーに?」というゲームが始まった。

 指名された数名の生徒が水槽の中にあるものを手で触って当てる。豆腐などはまだいい、ねばねばの納豆であったり生卵であったり、「うわー」という感じのゲームだった。そして「最後は先生お願いします」。みんなの盛大な拍手の中、拒否することができず私は目隠しをした。いったい、私はどんなものを触らなければならないのだろう。恐る恐る手を水槽の中に入れた、生徒の悲鳴のような叫び声が聞こえる。思わず手を引っ込めた。また、手を入れる。しかし、手は何も触れることができない。「もっと下、もっと下」と生徒たち。私を恐る恐る水槽の下まで手を伸ばした。いくら私が初めて担任をした若造の教師だとしても、ぱちんと手を挟むねずみとりのような仕掛けを試みたりはしないはずだと信じて。

  手は、何か薄いものに触れた。両手で形を確かめると、それは四角形のとても軽い何かだった。しかし、私が想像するものの中にどうしてもその物体と合致するものは存在しない。私は、降参した。目を開けると、私の手にあったものはメッセージカードだった。「先生、一年間ありがとうございました」と書かれていた。胸が熱くなって、そのカードを見つめて、ただ何も言わずに立っていた。生徒たちの顔は笑顔だった。

  驚きはそれだけでは終わらなかった。黒板に貼られている模造紙に書かれたプログラム。そのプログラムには中ほどに折りこんで隠されている部分があり、学級委員がその折り込みを伸ばすと、そこに「先生感動のコーナー」という文字が現れのだ。「なんだなんだ」とびっくりしていると、学級委員の男子が私へのメッセージを書いた原稿用紙を取り出して読み出した。

  その原稿用紙は前日、私が「初めての担任としての記念にするから、どんなことでもいいから書いて提出してくれ」と全員に渡したものだった。その気持ちに応えて、この日の朝、みんながみんな何枚もに及ぶ熱いメッセージを書いて提出してくれたのだった。しかし、絶対忘れるはずのないクラスをまとめ続けてきた男子学級委員だけが、「本当にすみません、家に置いてきてしまいました」といって提出しなかったのだ。まだ未熟だった私は、「なぜおまえが」とみんなの前で怒ってしまった。そのなぜが、一瞬にして氷解した。提出しないで怒られることまでも計算に入れて、こんなことを企んでいたんだ。涙があふれ、止まらなくなった。生徒も泣き出した、誇張ではなく、みんな泣いた。

 お別れ会が終わり、私は外に出た。私の目の前には学校のシンボルであるコブシが満開の花を咲かせていた。この当時の私は植物のことを全然知らなかった。コブシという木はこの学校に来て覚えた。夕日に輝く、コブシがまぶしかった。
 
 コブシの花をみると私はあの日のことを思い出す。

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2008年3月29日 (土)

フデリンドウ  お別れの日の思い出

名前 フデリンドウ(筆竜胆)
分類 リンドウ科リンドウ属
生育地 平地から山地  
私がであった場所 埼玉県・蓮田市、春日部市、栃木県・竜王峡 その他

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 リンドウは秋に咲く花だと思っていた。しかし、日本には春に咲くリンドウが3種類あったのだ。その一つがフデリンドウ。

 この花を初めて認識したのは、忘れもしない教師となって初めて勤務した学校での最後の日。初めて教員になってから10年後の3月31日のことである。私は朝の新聞を見て愕然とした。なぜか毎年紹介されていた異動する教員が掲載されていないのだ。自分の異動を自分の口で私が顧問を務めている演劇部員に伝えるということはとてもつらく苦しいことだった、できれは部員が新聞を見てそこで知り、覚悟を決めて部活に来てほしかった。しかし…。登校してきた演劇部員は皆笑顔だった。
 そんな笑顔の生徒たちを集めて、異動の話をした。そして、何度も自然観察に訪れた黒浜沼に出かけることを提案した。
私のあとを継いでくれる顧問の先生のためにも、お別れ会的なしめっぽくて、後を引くような別れはしたくなかった。今後のしっかりした見通しも話し、部員達もちょっと安心し、笑顔での自然観察会が始まった。そんなとき、部員の一人が
「先生、この青い花なんですか」
と聞いてきた。それが、この花だった。
 私は、この年免許外で1年生の理科を担当したことから、学校周辺の草花を覚えた。そして、覚えているうちに草花に興味を持った。わからない草花を見つけると、すぐに理科の先生に聞き、それでもわからない時には図鑑で調べた。そうしてこの周辺の植物ならほとんどなんだかわかると言えるくらいになった。しかし、この花は何かわからなかった。外国からやってきた園芸種の野生化したものではないかなどとも思った。
「離任式で来る時までに、調べておくよ。これはみんなとの思い出の花になったね」
そして離任式のスピーチで宿題の答えを話した。
「君たちとの思い出となったあの花はフデリンドウでした」

「青い花」という小説で有名なノヴァーリスに次のような文章がある。

すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。
きこえるものは、きこえないものにさわっている。
感じられるものは感じられないものにさわっている。
おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。

好きな文章の一つだ。
その後私はフデリンドウを、急に目にするようになった。フデリンドウが急に増えたなどということはない。今までは目には入ってきていたのに、その映像をとらえていなかったのだ。「みえるもの」と「みえないもの」、それは 私自身 の世界が変わることで変わってくるものなのだと思う。
今の私がみえているものがさわっている、みえないものとはいったいどんなものなのだろう。

撮影 

上・埼玉県蓮田市
下・福島県いわき市

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2007年6月30日 (土)

エゾノタチツボスミレ(蝦夷の立坪菫)

名前 エゾノタチツボスミレ(蝦夷の立坪菫)
分類 スミレ科
花期 5月~6月
生育地 山地(本州中部地方以北)
私が出会った場所 山梨県・八ヶ岳山麓、長野県・岩菅山

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先日訪れた八ヶ岳でのこと。私はバスに乗り遅れた。昼はバスの便が少なく、次のバスまで2時間近く待たなければならない。2時間は短い時間ではない。
私は近くをぶらぶら散策することにした。そしてエゾノタチツボスミレに出会った。
このスミレは、私が植物に興味をもつようになった年に登った山で出会った花である。スミレにもこんなに背が高いものがあるのだと思った。
そのときの私は、このスミレは山ではどこででも普通に出会える花なのだろうと思った。その時から15年。私は今日までこのスミレに出会うことはなかった。久しぶりの再会である。
あれから15年たった今も、エゾノタチツボスミレほど背が高いスミレには出会っていない。

バスに乗り遅れることも、悪くはない。いや、バスに乗り遅れた悔しさから何とかして悪くないことにしようとしたことは正解だった。

撮影 平成16年6月17日(日) 八ヶ岳美濃戸口周辺

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2007年6月25日 (月)

クリンソウ(九輪草) サクラソウの女王と褒め称えられた花

名前 クリンソウ(九輪草)
分類 サクラソウ科
花期 5月~6月
生育地 山地の湿り気のある場所
私が出会った場所 栃木県・日光・中禅寺湖、山梨県・ 入笠山

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 クリンソウはサクラソウの仲間である。サクラソウに比べずっと大きいので、サクラソウの仲間というイメージでとらえるのは難しい。
雨に濡れたクリンソウの群生。美しい。

 日本を最初に訪れた植物学者はイギリスのロパート・フォーチュン。その彼が、日本で最も美しく、心惹かれる花として挙げたのがクリンソウ。彼はクリンソウを「サクラソウの女王」と褒め称えた。現在、白やピンクのクリンソウを見かけることがあるが、それはイギリスで品種改良されたものの逆輸入なのだという。

撮影 平成19年6月24日(日) 入笠山

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エゾノコリンゴ 初恋の似合う花

名前 エゾノコリンゴ(蝦夷の小林檎)
分類 バラ科リンゴ属
花期 5月~6月
生育地 林縁や湿地(上高地や八ヶ岳山麓に多い)
私が出会った場所 八ヶ岳山麓

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エゾノコリンゴは蝦夷の小林檎。おしゃれでかわいらしい名前。
私はエゾノコリンゴという響きを、島崎藤村の『初恋』のイメージと重ねてしまう。
もちろんこの詩に出てくるリンゴは、リンゴの実ではあるが。

 まだあげそめし前髪の
 リンゴのもとに見えしとき
 前にさしたる花櫛の
 花ある君と思ひけり

 やさしく白き手をのべて
 リンゴをわれにあたへしは
 薄紅の秋の実に
 人こひ初めしはじめなり

エゾノコリンゴには初恋が似合う。

撮影 平成19年6月15日(金) 開校記念日の八ヶ岳にて

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2007年6月24日 (日)

スズラン (鈴蘭) 雨の入笠山で

名前 スズラン(鈴蘭) 別名 キミカゲソウ(君影草)
分類 ユリ科
花期 4月~6月
生育地 山地や高原の草地
私が出会った場所 山梨県・入笠山

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鈴蘭を見に入笠山に出かけた。

一週間前は天気予報が外れ、見事な晴れの日曜日となり、八ヶ岳を満喫した。今日も天気予報は外れた。しかし、予報が晴れであったので見事な雨の日曜日となった。富士見駅に到着するとほぼ同時に雨が降り始め、入笠湿原に到着したときには本格的な雨となった。
晴れもいいが、雨もまたいい。鈴蘭は雨が似合う花だ。

鈴蘭は蘭という名がついているが、蘭の仲間ではなく百合の仲間である。バルザックの代表作に『谷間の百合』という小説があるが、谷間の百合とは鈴蘭のことである。別名・君影草。鈴蘭は世界各地ですてきな名前がつけられている。花が階段状につくことから「妖精の階段」「天国への階段」「ヤコブの階段」などとも呼ばれている。またスズランはフィンランドの国花でもある。

撮影 平成19年6月24日(日)

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キバナノコマノツメ  スミレの名前がついていないスミレ

名前 キバナノコマノツメ
分類 スミレ科
花期 6月~8月
生育地 亜高山~高山
私が出会った場所 山梨県・八ヶ岳、長野県・八方尾根

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 私はスミレの仲間が好きだ。今までたくさんの種類のスミレを見て楽しんできた。そんなスミレの仲間の中で、ただ一つスミレという名前がつかないスミレがある。それがキバナノコマノツメ。北杜夫の小説『神々の消えた土地』で出てきたという記憶がある。しかし、インターネットではヒットしなかった。記憶違いであろうか……、小説を読み直そうとしたが、小説が見つからない…

 キバナノコマノツメは世界的に分布するスミレである。北極圏をぐるりと取り巻くように分布するほか、ヒマラヤでも見ることができるという。日本でも北は北海道から南は屋久島まで分布している。

撮影 平成19年6月17日(日) 八ヶ岳 

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2007年6月21日 (木)

ホテイラン(布袋蘭) 思わぬ出合い

名前 ホテイラン(布袋蘭)
分類 ラン科
花期 5月~6月
生育地 針葉樹林内
私が出会った場所 八ヶ岳

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思わぬ出会いというものがある。ツクモグサに会いに出かけた八ヶ岳で、ホテイランに出会った。清楚な花。思わぬ出会いというものはうれしいものである。

撮影 平成19年6月17日(日)  八ヶ岳にて

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2007年6月20日 (水)

ツクモグサ(九十九草)  八ヶ岳にて

名前 ツクモグサ(九十九草)
分類 キンポウゲ科オキナグサ属
花期 5月下旬~7月
生育地 高山帯の乾いた草地
私が出会った場所 八ヶ岳(横岳)

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 数日前の天気予報では、梅雨入り直後の土日は雨という予報だった。ところが突然天気予報が晴れマークに変わった。このチャンスを逃す手はないと、八ヶ岳に出かけた。目的の一つはツクモグサに出会うこと。ツクモグサは日本固有の植物で、本州ではでは八ヶ岳の横岳(山頂付近)とそして白馬岳・雪倉岳でしか出会うことができない。ツクモグサは晴れていないと花が開かない。雲一つない青空。午前11時にツクモグサの群落のある横岳に到着した。重たいカメラを背負っての登山だったが。来てよかった。

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撮影 平成19年6月16日(土)  八ヶ岳横岳にて

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2007年6月11日 (月)

オニノヤガラ(鬼の矢柄) 地元で見られる目立たない蘭の花

名前  オニノヤガラ(鬼の矢柄)
分類 ラン科
花期 6月~7月
生育地 雑木林の林内
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、群馬県・尾瀬ヶ原

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  オニノヤガラは腐生植物。葉緑体を持たない。ナラタケの菌糸から養分をとるという共生生活を送る。自宅近くの林で今年も見られるという情報をもらい、見に行った。

  まことに地味な植物ではあるが、この植物は絶滅危惧種として埼玉のレッドデータブックに登録されている。この植物、蘭の仲間である。花をアップで見ると確かに蘭の特徴を持っている。蘭の仲間として採集されるなどということがあるのだろうか……

撮影 平成19年6月9日(土) 杉戸町

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2007年5月17日 (木)

ササバギンラン  盗掘

名前 ササバギンラン(笹葉銀蘭)
分類 ラン科キンラン属
花期 5月~6月
生育地 山野の林内
私が出会った場所 埼玉県春日部市

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埼玉県レッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているササバギンラン。生まれ故郷である春日部市のとある場所で見つけた。この場所で見るのは初めてのことだった。うれしくて一週間後再びその場所を訪れた。しかし……盗掘されていた。
誰かが言った。花を好きな人は心が豊かだ。
そう思いたいのだが……、花を好きな人もさまざまである。

撮影 埼玉県春日部市 平成19年5月

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2007年5月14日 (月)

ユウシュンラン ギンランの変種との出合い

名前 ユウシュンラン
分類 ラン科 ※日本の野生植物(平凡社)によればギンランの変種
花期 4月後半~5月
生育地 山野の林野
私が出会った場所 栃木県・塩原渓谷遊歩道、竜王峡

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 ギンランに出会ったと思った。ギンランで間違いはないようだが、ギンランの変種、ユウシュンランであるようだ。竜王峡ではこの花をギンランとして紹介した。平凡社の日本の野生植物によれば間違いではないのだが、山渓ハンディ図鑑山に咲く花ではまるで別種であるように扱われている。こちらのほんの愛用者からは間違いと指摘されそうである。

 花の案内は難しい。

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撮影 

1枚目 平成19年4月29日 塩原渓谷遊歩道
2枚目 平成17年 竜王峡

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2007年5月 5日 (土)

オオヤマザクラ 桜の森の満開の下

名前 オオヤマザクラ(大山桜)
分類 バラ科
生育地 山地
私がであった場所 福島県・裏磐梯、長野県・白馬山麓

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「桜の花が咲くのだよ」
「桜の花と約束したのかえ」
「桜の花が咲くから、それを見てから出掛けなければならないのだよ」
「どういうわけで」
「桜の森の下へ行ってみなければならないからだよ」
「だから、なぜ行って見なければならないのよ」
「花が咲くからだよ」
「花が咲くから、なぜさ」
「花の下は冷めたい風がはりつめているからだよ」
「花の下にかえ」
「花の下は涯(はて)がないからだよ」
「花の下がかえ」
 男は分らなくなってクシャクシャしました。
「私も花の下へ連れて行っておくれ」
「それは、だめだ」
 男はキッパリ言いました。
「一人でなくちゃ、だめなんだ」

坂口安吾の小説、『桜の森の満開の下』の一場面である。
その小説に出てくる人を狂わせてしまうまでに惹きつける桜とは何桜だろう。
私は山に咲く、オオヤマザクラだと思う。

梶井基次郎の『桜の樹の下に』で描かれた桜も、私はオオヤマザクラだと思う。

撮影 平成19年5月5日 裏磐梯

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2007年4月21日 (土)

イチリンソウ(一輪草) 寂しさの似合う花

名前 イチリンソウ(一輪草)
分類 キンポウゲ科
生育地 山野
私が見た場所 東京都・高尾山、栃木県・三毳山(群落になる)、埼玉県・四阿屋山など

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イチリンソウ(一輪草)の花が妖精に見えた。

Img_5392

 イチリンソウはキンポウゲ科イチリンソウ属に属する花。和名のイチリンソウは茎の先端に花を一個開くことによる。

 イチリンソウの仲間は、早春木々が芽吹く前の、太陽の光が十分に地面に届く間に成長し、花を咲かせる。そして、木々の葉が茂る頃には実を結び、姿を消していく。イチリンソウの仲間はヨーロッパでスプリング・エフェメラル(春のはかない命)と呼ばれている。美しい響きを持った言葉だ。イチリンソウには寂しさを感じるうたが多い。

  真実寂しき花ゆえに一輪草とは申すなり 北原白秋
  道なき谺一輪草の寂しさよ         加藤加世子

撮影 平成19年4月21日 三毳山

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2007年4月16日 (月)

ヒカゲツツジ 坪山にて

名前 ヒカゲツツジ(日影躑躅)
分類 ツツジ科
生息地 山地の岩尾根など
私が出会った場所 坪山

Edimg_5118

ヒカゲツツジとはなんとも寂しい名前である。今まで見たいと思ったことはなかった。
実際見てみると、美しかった。心惹かれる花であった。

撮影 平成19年4月15日(日) 坪山

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2007年4月15日 (日)

イワウチワ 坪山にて

名前 イワウチワ(岩団扇)
分類 イワウメ科イワウチワ属
花期 4月~5月
生育地 山地の岩地
私が出会った場所 群馬県・谷川岳、神奈川県・坪山

Edimg_5084

Edimg_5100

イワウチワはしばらくあこがれだった花。あこがれだったけどいつもいつも見られなかった花だった。

 谷川岳に、この花を見に行った年は、例年にない大雪で天神平が雪で埋まっていた。花どころではなかった。次に、いわき市にこの花を見に行った。時期が早かったようで、てかてか光る葉を見ることはできたが、花は咲いていなかった。

 初めて見ることが出来たのはリベンジで出かけた谷川岳だった。不思議なもので一度見られると次々と見るチャンスが訪れる。
 坪山はヒカゲツツジの群生で最近急に人気が出てきた山。その山でイワウチワに出会った。こちらの群生も見事だった。

撮影 平成19年4月15日(日) 坪山

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2007年4月 9日 (月)

キバナノアマナ  黄に染まる

名前 キバナノアマナ(黄花の甘菜)
分類 ユリ科
花期 4月~5月
生育地 山野
私が出会った場所 新潟県・臥牛山

Img_4714g

キバナノアマナはあこがれの花。先日訪れた高尾山で見られるかと思ったが見ることはできなかった。そのあこがれの花に新潟で出会えた。
あこがれの生き物は100を超える。それだから毎年あこがれとの初めての出会いがある。わざわざ会いに行かなくともひょんなことで出会うことがある。今回もそんな出会いだった。

撮影 平成19年4月8日 臥牛山

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2007年4月 8日 (日)

コシノコバイモ  あこがれの花

名前 コシノコバイモ(越の小貝母)
分類 ユリ科バイモ属
花期 3月~4月
生育地(分布) 北陸地方の低山(他 静岡県、福島県)
私が出会った場所 新潟県臥牛山

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昨年新潟を訪れたときには、探しても探しても見つけることができなかった花。見つけられなかったためあこがれになった花、そんな花に今年は出会えた。
道ばたではない、望遠でなくては撮影できないような場所にひっそり咲いていた。

撮影 平成19年4月8日  村上町臥牛山

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2007年3月31日 (土)

ノウルシ 黄に染まって

名前 ノウルシ(野漆)
分類 トウダイグサ科トウダイグサ属
花期 4月~5月
生育地 河岸などの湿地
私が出会った場所 埼玉県・さいたま市(岩槻地区、東岩槻、田島ヶ原)

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さいたま市にある田島ヶ原にサクラソウを見に行った。
サクラソウは美しかった。
そしてそのサクラソウに負けず劣らず美しいのが、一面を黄に染めるノウルシだ。

撮影 平成19年3月31日 田島ヶ原

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シュンラン(春蘭) 清楚なうすみどり

名前 シュンラン(春蘭)
分類 ラン科
生育地 山地、丘陵
私がであった場所  埼玉県・杉戸町、宮代町、東京都・高尾山、陣馬山、栃木県・三毳山
   他

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 私が住んでいる地元の杉戸町でシュンランを発見した。
 地元にこんなすてきな蘭が自生しているなんて、今まで知らなかった。

 平成4年に初版が出た「野草大百科」には、「野生の蘭では最も普通に見られる花」と記されている。本当にそうだったのだろうか。その当時も普通に見られたという記憶は私にはない。春蘭は山野草ブームで乱獲されている蘭である。少なくとも21世紀においては、普通に見られる花ではなくなっている。

 多くの図鑑に別名「ほくろ」が紹介されている。花にある斑点をほくろに見立てたのである。植物学者・牧野富太郎博士は、中国に春蘭という別の植物が存在することから、「ほくろ」を標準和名にした。私は、春蘭という呼び名の方が好きだ。シュンランは派手な装いを拒む、清楚な花と感じるからだ。そして、春蘭の方が響きに清楚なものを感じるのだ。

   てふてふひらひらひらかうとしてゐる春蘭  山頭火
   春蘭や雨をふくみてうすみどり        杉田久女
   

Img_4227

撮影 平成19年4月 埼玉県杉戸町

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2007年3月 4日 (日)

セツブンソウ  白い妖精

名前 セツブンソウ(節分草)
分類 キンポウゲ科セツブンソウ属
花期 石灰岩地の樹林内
生育地 2月~3月
私が出会った場所 栃木県・星野町、埼玉県・四阿屋山

Edimg_3835

Img_3826

 セツブンソウは白い妖精のような花だ。

 節分の頃から開花が始まり、初夏には地上部が枯れてしまう。スプリング・エフェメラル(春の短い命)と呼ばれる生き物の一つである。出会える場所が限定されているのは、セツブンソウが石灰岩地を好むという特性による。ただ、咲いている場所では群生する。

 私は冬の厳しい寒さの中、春と訪れを知らせてくれる白い妖精たちに心ときめかせて会いに行く。

撮影 平成19年3月 四阿屋山

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2006年10月26日 (木)

コブナグサ(小鮒草) 草紅葉に映える草

名前 コブナグサ(小鮒草)
分類 イネ科
花期 9月~11月
生育地 湿った草地、田の畦、道ばた
私が出会った場所 埼玉県・宮代町 他

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今までこの草に美しさを感じたことはなかった。今日、草紅葉をバックにこの草を眺めたとき美しいと思った。最近イネ科の植物に美しさを感じる。

撮影 平成18年10月22日(日) 埼玉県宮代町

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2006年10月21日 (土)

ナンバンギセル(南蛮煙管)  思い草

名前 ナンバンギセル(南蛮煙管) 別名 思い草
分類 ハマウツボ科ナンバンギセル属
花期 7月~9月
生育地 山野のススキ、ミョウガ、サトウキビが生えている場所
私が出会った場所 埼玉県・武蔵森林公園

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ススキの群落を見つけると腰をかがめて中を覗き込む。ひっそりと咲くナンバンギセルに出会うため。必ず見つけられるわけではないが、見つけることができたときは心の中がぽっとあたたかくなる。南蛮煙管という名前は、桃山時代煙草とともにもたらされた煙管に似ていることからつけられたもの。万葉の時代には思い草とい名前で登場する。

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらになぞものか思はむ

が有名。うつむきかげんにつく花を恋に思い悩む女性に見立てた感性が素晴らしい。実はこの草はススキの根に寄生している。ススキの栄養を吸い取りつつその根もとで可憐な花を咲かせているのだ。そのような事実が、この花を現代の人間に見立ててみたいという気持ちにさせるのだが…。やめておくとしよう。私はこの花を見つけてぽっとあたたかくなる心を大切にしたい。

撮影 平成18年10月 武蔵丘陵森林公園

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2006年10月16日 (月)

イヌスギナ  ツクシとスギナの合成写真のような…

名前 イヌスギナ(犬杉菜)
分類  トクサ科トクサ属
生育地 原野、川原、池沼などの湿った場所
私が出会った場所 千葉県・流山市

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イヌスギナの写真は、ツクシとスギナを合成してつくりあげた植物を思わせる。最近はツクシを見たことがない子どももけっこういて、ツクシを知らない子にとっては私がこの植物に感じる面白さはわからないかもしれない。

撮影 平成18年10月15日 千葉県流山市

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2006年10月10日 (火)

オギ(荻) 秋の到来を知らせる草

名前 オギ(荻)
分類 イネ科ススキ属
花期 9月~10月
生育地 河原、水辺
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、栃木県・奥鬼怒林道 他

Img_77941

オギとススキは似ている。多くの人はオギをススキだと思っている。実際この写真からこの花がススキではなくオギと分かる人は少ないと思う。オギとススキは似ているが生育場所は異なる。ススキは山野路傍の到るところに生育するが、オギは水辺に多く生育する。

オギは古来から秋の到来を知らせる草として知られてきた。山本健吉編集の『基本季語500選』(講談社学術文庫)にはオギは「オギ」ではなく「荻の声」という季語で紹介されている。

紀貫之は『拾遺集』に

荻の葉のそよぐおとこそ秋風の人に知らるる始なりけれ

という歌を残している。オギの葉が秋の初風にそよぐ音に、秋の到来を感じるという贅沢は人工音に満ちあふれた現代においては味わうことは難しい。現代はオギの句を詠む人はあまり多くないようであるが、少ない句の中で私は秋元不死男の次の句が好きである。

頬ずりに子は目を閉づる荻の声    不死男

Img_78301

私は荻の美しさを伝えたい。

撮影 
上 平成18年10月10日 奥鬼怒遊歩道
下 平成18年10月10日 宮代町古利根川

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2006年10月 5日 (木)

メマツヨイグサ 富士には、月見草がよく似合う 

名前 メマツヨイグサ(雌待宵草)
分類 アカバナ科マツヨイグサ属
花期 6月~9月
生育地 各地の道ばた、河原など
私が出会った場所 

 Img_73391

 正確にいえば月見草は待宵草とイコールではない。しかし太宰治が「富嶽百景」で「富士には月見草が似合う」と書いた月見草は待宵草(更に正確にいえばオオマツヨイグサ)のことである。植物学的には別の月見草があることを知った上で、私は待宵草を月見草と呼びたい。

 太宰治は「富嶽百景」で富士山を称えようとしない。それどころか富士を楽しむ遊覧客が乗り込んでいるバスの中で、富士には一瞥も与えようとせず富士と反対側の山路に沿った断崖をじっと見つめている老婆に共感を覚えたりするのだ。その老婆がぽつりと呟く。

「おや月見草」

そして老婆は、細い指でもって、路傍の一か所をゆびさすのだ。「富嶽百景」の中で私が一番気に入っているシーンである。

そして太宰は次のように続ける。

三七七八メートルの富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんというのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった。富士には、月見草がよく似合う。

富士山には目もくれず月見草に心を動かされる老婆。私も太宰同様共感するところがある。富士山が嫌いなわけではないが、山好きの私はまだ富士山の山頂に立ってはいない。

撮影 平成18年9月30日(土) 杉戸町

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2006年9月29日 (金)

ミズヒキ  水引と名づけられた理由 

名前 ミズヒキ(水引)
分類 タデ科タデ属
花期 8月~10月
生育地 日本各地の林ややぶの縁に普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、宮代町、栃木県・日光(小倉山) 他 日本各地で出会っている。

Img_71541

ミズヒキを漢字で書くと水引。水引とは進物用の包紙などを結ぶのに用いる中央で染め分けされた紙糸のこと。祝事・進物用に使われる紅白のものが一番イメージしやすいパターンであろう。写真のミズヒキに水引という名前が付けられたのはこの花が上からみると赤く、下からみると白く見えることに拠ると言われている。洒落た命名である。

さて、なぜ上からみると赤、下からみると白く見えるのか。この花を近くで見るとその秘密が分かる。今までこの花をこんなに近くで見たことはなかった。

撮影 平成18年9月24日(土) 高尾山3号路にて

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2006年9月28日 (木)

ノガリヤス  日だまりの中で

名前 ノガリヤス(野苅安) 別名・サイトウガヤ
分類 イネ科ノガリヤス属
花期 8月~10月
生育地 山野の草地ややぶ
私が出会った場所 埼玉県・宮代町、栃木県・日光(小倉山) 他、日本各地で普通に出会える。

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ほとんど注目されることのないイネ科の植物。
私はそんなイネ科の植物を撮るのが好きだ。

ノガリヤスは野に咲く苅安の意味。苅安はイネ科ススキ属の染料植物。苅安は「刈り安い」の意味だという。別名はサイトウガヤ。斉藤茅ではない。漢字で書くと西塔茅となる。比叡山の西塔付近で初めて採集されたことから名付けられたらしい。

    撮影 平成18年9月24日(土) 日光・小倉山

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2006年9月27日 (水)

ヤマゼリ  野生の生け花  

名前 ヤマゼリ(山芹)
分類 セリ科
花期 7月から10月
生育地 山地の渓谷の縁や林下
私が出会った場所 栃木・日光(小倉山)

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森の中に花が生けてある。そんな感じがした。
ヤマゼリの白とミズヒキの赤のコラボレーション。美しい。

  撮影 平成18年9月24日(土) 日光・小倉

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2006年9月26日 (火)

ツルギキョウ 高尾山で出会った絶滅危惧種

名前 ツルギキョウ(蔓桔梗)
分類 キキョウ科ツルギキョウ属
花期 8月~10月
生育地 山地
私が出会った場所 東京都・高尾山

Img_73191

高尾山で見慣れない花に出会った。同じキキョウ科のバアソブやツルニンジンと似ているが、ちょっと違う。それは初めて出会う花、ツルギキョウだった。高尾山の花図鑑には「高尾山で希少種」と書かれている。環境省も絶滅危惧種Ⅱ種に指定している珍しい花。高尾山で最も人通りの多い1号路に咲いていた。私がこの花に気づいたとき、この花に気をとめている人は一人もいなかった。それはこの花にとってよいことなのかもしれない。

高尾山は、いつ訪れても楽しい山である。

   撮影 平成18年9月24日(日) 高尾山1号路にて

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2006年9月20日 (水)

ママコノシリヌグイ  許される名前と許されない名前

名前 ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)
分類 タデ科タデ属
花期 5月~10月
生育地 日本全土の道ばた、林縁、水辺
私が出会った場所 埼玉県・巾着田  他

Img_69031

ママコノシリヌグイとはおぞましい名前である。漢字で書くと「継子の尻拭い」。継子とは親子の血のつながりのない、実子でない子のことである。
写真をクリックして拡大してみてもらうと分かると思うが、この植物には鋭い棘がある。ようするに継子の尻をこの棘のある茎で拭くということからついたた名前だ。実に嫌な名前である。私がこの美しい植物の名前を変えるべきだと考えているのは、差別の響きのある言葉があまりにも露骨に使われているからである。

私は植物のイメージを損ねるどんな名前も変える必要があるなどとは思っていない。睾丸の古語であるふぐりを使ったオオイヌノフグリ、屁や糞の匂いがするヘクソカズラ、葉がくさい匂いのするクサギなどは可哀想な名前だと思う反面、是非残してほしい名前だとも感じる。そこには差別的な響きが存在しない。観察会でこれらの植物の名前の由来を紹介すると、それを知った人たちに笑いが生まれる。それは心地よい笑いの部類に入ると思う。しかし、ママコノシリヌグイはどうだ。私はこれを笑いとして紹介することは絶対にできない。紹介するときは怒りとともに紹介している。紹介していて楽しくない。

植物の名前は変えられないということはないようで、呼び方が変更された植物が高山植物などでは現在進行形の形で存在する。

こんな差別的な花の名はこの美しい植物にふさわしくない。名前を変えよう。すぐ変えよう。

 平成18年8月18日 埼玉県・巾着田

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2006年9月19日 (火)

ヒガンバナ 別名・マンジュシャゲ  赤、赤、赤の世界

名前 ヒガンバナ(彼岸花) 別名・マンジュシャゲ(曼珠沙華) 
分類 ヒガンバナ科ヒガンバナ属
花期 9月
生育地 田の畦や土手
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、宮代町、巾着田(大群生することで有名)、他 日本の各地で普通に出会える

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雨の中に咲く曼珠沙華の花。美しい。
赤、赤、赤の世界がそこにあった。

曼珠沙華はを詠った詩はどれも妖しい。黄泉の世界と繋がっているような詩が多い。例えば、北原白秋の詩。

  曼珠沙華 北原白秋

 GONSHAN. GONSHAN. 何処へゆく。
 赤い御墓の曼珠沙華、
 曼珠沙華、
 けふも手折りに来たわいな。

 GONSHAN. GONSHAN. 何本か。
 地には七本、血のやうに、
 血のやうに、
 ちやうど、あの児の年の数。

 GONSHAN. GONSHAN. 気をつけな。
 ひとつ摘んでも、日は真昼、
 日は真昼、
 ひとつあとからまたひらく。

 GONSHAN. GONSHAN. 何故泣くろ。
 何時まで取っても、曼珠沙華、
 曼珠沙華、
 恐や赤しや、まだ七つ。

例えば昭和13年の歌謡曲「長崎物語」の1番

    長 崎 物 語 歌 谷 真酉美
           作詩 梅木三郎  作曲 佐々木俊一

  赤い花なら 曼珠沙華
  阿蘭陀屋敷に 雨が降る
  濡れて泣いてる じゃがたらお春
  未練な出船の あゝ鐘が鳴る
  ララ鐘が鳴る

例えば曼珠沙華を詠った俳句

 曼珠沙華抱くほどとれど母恋し         中村汀女
 まんじゆさげ月なき夜も蘂ひろぐ       桂信子
 まんじゆしやげ昔おいらん泣きました 渡辺白泉

私は、タンポポのような花にも惹かれるが、曼珠沙華にも魅力を感じる。

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   赤、赤、赤の世界に白も混じる。白花曼珠沙華も魅力的である。

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平成18年9月18日 埼玉県・巾着田にて

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2006年9月17日 (日)

ツユクサ ( 露草) つゆ草を花と思ふは誤りである

名前 ツユクサ(露草)
分類 ツユクサ科ツユクサ属
花期 6月~9月
生育地 日本全土の道ばた、草地
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、宮代町 他、日本の各地で

Img_68861

ツユクサの青は見事である。このような見事な青い花が、日本中のどこでも普通に見ることができるというのは幸せなことだと思う。徳富蘆花はツユクサを次のように表現した。

つゆ草、又の名はつき草、螢草、鴨跖(おうせき)草なぞ云つて、草姿は見るに足らず、唯二弁より成る花は、全き花と云ふよりも、いたづら子にむしられたあまりの花の断片か、小さな小さな碧色の蝶の唯かりそめに草にとまつたかと思はれる。寿命も短くて、本当に露の間である。然も金粉を浮かべた花蘂(かずい)の黄に映発して惜気もなく咲き出てた花の透き通る様な鮮やかな純碧色は、何ものも比ぶべきものがないかと思ふまでに美しい。つゆ草を花と思ふは誤りである。花では無い、あれは色に出た露の精である。姿脆く命色美しい其面影は、人の地に見る刹那の天の消息でなければならぬ。

             徳富蘆花 『みみずのたはこと』

ツユクサは露の草。俳人・飯田龍太は次のように詠う。

露草も露のちからの花ひらく

童謡『ぞうさん』の詩人まど・みちおにツユクサを詠った詩がある。

 ツユクサのはな まど・みちお

はねのように かるかったのか

あの はるかな ところから
おちてきて
よくも つぶれなかった
あおぞらの しずく

いまも ここから
たえまなく
ひろがっていく
なみの わが みえます

あの そらへの
とめどない おもいなのでしょうか

 なぜツユクサはこうも詩心を動かすのか。それは花のコバルトブルーの色彩によるものであろう。この色の正体はコンメリニンという色素。この色素の名前はツユクサの学名「コンメリナ」からとられた。このような美しい青色が出る理由については、古くから研究され、現在はマグネシウムが関係していることがわかっているようだ。

撮影 平成18年9月17日(日) 杉戸町

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2006年9月 7日 (木)

エノコログサ  地味な花の輝くとき

名前 エノコログサ(狗尾草) 別名 ネコジャラシ
分類 イネ科エノコログサ属
花期 8月~11月
生育地 日本全土の日当たりのよい道ばた荒れ地
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町 他・日本各地で出会っている

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エノコログサ。花全体を犬のしっぽに見立てて命名された。この花で猫をじゃらすことから、ねこじゃらしと呼ばれることもある。ちなみにこの仲間の英語名はFoxtail grass。イギリスではこの花は狐の尾に見立てられている。

イネ科の地味な花。
しかし、こんな地味な花が輝くときがある。夕映えのエノコログサは美しい。

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2006年9月 5日 (火)

モウセンゴケ 生と死の出会う場所

名前 モウセンゴケ
分類 モウセンゴケ科モウセンゴケ属
花期 7月~8月
生育地 山地から亜高山の湿地
私が出会った場所 栃木県・尾瀬ヶ原、福島県・宮床湿原、駒止湿原、吾妻連峰、長野県・志賀高原、 愛知県・葦毛湿原 他 日本の多くの湿原で見ている

Img_65831

トンボがとまっているのではない、食虫植物であるモウセンゴケに捕らえられているのだ。
吾妻連峰の湿原でこのような風景を何度も目にした。
自然とは生と死が隣り合わせの場所である。
目を瞑って通り過ぎては本当の自然を語ることはできない。

Img_1357

こちらはモウセンゴケの花。コケといっても苔の仲間ではない。

Img_1330

こちらは、モウセンゴケの仲間・トウカイモウセンゴケの花。愛知県にある葦毛湿原で見ることができる。

撮影 上から

・吾妻連峰・藤十郎付近の湿原にて 平成18年8月27日
・志賀高原 8月
・葦毛湿原 8月

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2006年9月 1日 (金)

チングルマ  花の後の魅力

名前 チングルマ(稚児車)
分類 バラ科チングルマ属
生育地 高山帯の雪渓の縁、砂礫地
私が出会った場所  富山県・立山室堂、群馬県・至仏山、福島県・吾妻連峰

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チングルマの名前は花が終わった後の実が稚児がもつ風車に似ていることに由来している。稚児車(チゴグルマ)がチングルマと変化したようだ。田中澄江の「花の百名山」では黒部五郎岳の花としてチングルマが選ばれている。しかし、そこにはチングルマの花の記述はない。描かれているのは花が終わった後のチングルマの姿である。

真夏の黒部五郎の谷はミヤマヨツバシオガマの赤や、コバイケイソウの白、シナノキンバイの黄で埋まり、チングルマの花は早や早やと散って、花柱が伸びて羽毛のように空にむかってそよいでいた。そのさかんな姿を見ながら、この氷河のあとを残す谷には、たった一人、はるばると辿り着いて、力尽きて倒れ死んだひとが、千年二千年の昔からたくさんいたのではないか。氷河期のそれ以前からもと思い、その埋もれた遺骸を吸って、こんなにも花々が、いろ鮮やかに美しいのではないかと思われてならなかった。 (「花の百名山」 田中澄江 著)

夕陽を浴びた花を終えたチングルマの群落に出会った。チングルマ、その花も好きだが、花の後はもっと好きである。

20080726_img_7023ed

撮影
1枚目 平成18年8月26日(土) 西吾妻山
2枚目 平成18年至仏山
3枚目 千畳敷カール(チングルマの花)

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2006年7月23日 (日)

コヒルガオ 電流よ流れよ!

名前 コヒルガオ(小昼顔)
分類 ヒルガオ科ヒルガオ属
花期 6月~8月
生育地 日当たりのよい平地の草地・道ばた
私が出会った場所 埼玉県杉戸町、宮代町、久喜市 他 日本の各地で出会っている

Img_18851

   ひるがほに電流かよひゐはせぬか  三橋鷹子

どこにでも咲いているヒルガオ。
誰も気にとめることのないヒルガオ。
そんなヒルガオに電流を感じる感性が私にもあれば…

7月23日 杉戸高野台にて撮影

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2006年6月25日 (日)

ネジバナ ねじれ方いろいろ

名前 ネジバナ(捩花 別名・モジズリ)
分類 ラン科ネジバナ属
花期 5月~8月
生育地 日当たりのよい草地や芝生
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市 他 様々な場所

Img_19331_1

ネジバナはランの仲間である。平地でただ一つ普通に見ることができる野生蘭。
写真のネジバナは私が駐車している場所のすぐ隣にある芝生の中に咲いていた。

7月2日(日) 自宅周辺で住民による草取りが行われた。この写真のネジバナは刈り取られていた。ちょっと淋しい。

幸い私の住んでいる周りのネジバナは、ネジバナだけ刈り取られずに残っている。私の周りに住んでいる人たちは、ネジバナの美しさを知っている。

 さてこのネジバナだが、ねじれ方が決まっているわけではない。左まきもあれば右まきもある。ねじれないものもあれば、ねじれ方が途中で変わってしまいまっすぐ立てなくなってしまったものもある。花の色もピンクから白まで変化に富んでいる。そんなねじれ方のいくつかを紹介しよう。

Img_2215_2

これは巻き方の逆な二つの花。

Img_2198

巻きが足りない花。

撮影 6月25日  杉戸高野台

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2006年6月24日 (土)

ハルカラマツ 雨の日の散歩

名前 ハルカラマツ(春唐松)
分類 キンポウゲ科カラマツソウ属
花期 6月~7月
生育地 湿った草地
私が出会った場所 栃木県・日光(戦場ヶ原)

Img_18301

ハルカラマツはあまり注目されることがない花である。
しかし、雨の日のハルカラマツの美しさといったら。

雨の日の散歩もまた楽しいものだ。

撮影 6月 奥日光・戦場ヶ原

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2006年6月20日 (火)

コケイラン 気品のある花

名前 コケイラン (別名 ササエビネ)
分類 ラン科
花期 5月~6月
生育地 山地のややしめった林内
私が出会った場所 栃木県・戦場ヶ原

Img_18041

奥日光戦場ヶ原でコケイランと出会った。心がときめく。
日本の蘭は、胡蝶蘭やデンドロビュームのような豪華さはない。
しかし、私は日本の蘭の多くに気品を感じる。

撮影 6月 奥日光・戦場ヶ原

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2006年6月15日 (木)

イワセントウソウ デューラーの言葉からの連想

名前 イワセントウソウ(岩仙洞草)
分類 セリ科イワセントウソウ属
花期 3月~5月
生育地 深山の木陰
私が出会った場所  栃木・戦場ヶ原、埼玉・雲取山、長野・八ヶ岳山麓

Img_09421

NHKで毎週放送されている迷宮美術館は、私の数少ないお気に入りの番組の一つである。
先日その番組でデューラーが取り上げられ、その中で彼の言葉が紹介された。

芸術は自然の中にあり
それを探し当てることのできる者だけが
芸術に生きることができる

この言葉に触れたとき、私の脳裏にある花の姿が浮かんだ。
その花はイワセントウソウ。図鑑では無視されてしまうか紹介されるとしても小さくしか紹介されない花だ。
私はこの花を見ると線香花火を思い出す。
全然話題に上らない花。でも、私にとってはとても素敵な花。

            撮影2006年6月5日 戦場ヶ原

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2006年6月14日 (水)

セッコク 高尾山で出会った蘭

名前 セッコク
分類 ラン科
花期 5月から6月
生息地 山地の樹上
私が出会った場所 高尾山6号路

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Img_13571

 セッコクは蘭の仲間である。樹上や岩に多数の根を出し着生する。高尾山の六号路にある杉林で見られるセッコクの群落は有名だ。紹介すれば盗掘の危険がある蘭の仲間で、これだけ大々的に紹介されている例が他にあるだろうか。

 初めて高尾山にセッコクを見に行ったとき、しっかり頭上の木を見なければ見過ごしてしまうのではないかと思った。しかし、そんな心配はいらなかった。凄まじいという形容がふさわしいと思われるほどのセッコク、またセッコク。杉の木に取り憑くようにして咲くその美しさは妖しいさを内包している。

 このような美しさの前ではただ立ちつくすしかない。

撮影
6月10日(土) 高尾山 6号路

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2006年6月13日 (火)

モミ ハイジが愛した樹

名前 モミ(樅)
分類 マツ科モミ属
生育地 亜高山帯
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・塩原、

Img_1326_2 

モミの大木の下に立つと『ハイジ』を思い出す。

風の強い日にハイジがなによりも心をひかれたのは、山小屋の裏で三本の老いたもみの木がたてるざわめきでした。高いこずえでごうごうと鳴る、深い、なにか秘密めいたざわめきほど、不思議で、素晴らしいものはありませんでした。ハイジはその下に立って耳をそばだて、木が大きな力にたわみゆさゆさとゆれるのを、いつまでもいつまでもじっと見上げているのでした。(『ハイジ』ヨハンナ・シュピリ 作 上田真而子 訳)

そんな大きなモミの木も、ちっぽけな若芽から始る。
森の奥で、倒木の上に芽を出したモミの子どもに出会った。Img_11151

撮影 
上 塩原渓谷遊歩道
下 高尾山3号路 6月

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2006年6月11日 (日)

サイハイラン 高尾山での蘭との出会い

名前 サイハイラン(采配蘭)
分類 ラン科サイハイラン属
生育地 山地
私が出会った場所 東京都・高尾山

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高尾山でサイハイラン(采配蘭)と出会った。高尾山の複数の場所で出会うことができた。
図鑑でしか見たことのなかった蘭との初めての出会い。初めての出会いは、うれしい。

                          写真  6月10日(土) 高尾山

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2006年6月 9日 (金)

カントウタンポポ 小声で言ひてみて一人

名前 カントウタンポポ (関東蒲公英) 
分類 キク科タンポポ属
生育地 道ばた・野原(昔からの場所に多い)
私が出会った場所 埼玉県杉戸町、久喜市、春日部市ほか多数 

 Img_4243 Img_0610

   たんぽゝと小声で言ひてみて一人   星野立子
   けふはふけの道のたんぽぽ咲いた  種田山頭火

心に残る俳句である。セイヨウタンポポに押され、数を減らしているカントウタンポポ。そんなカントウタンポポにこれら俳句は似合う気がする。

撮影
(上) 杉戸町
(下) 塩原 大沼

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2006年6月 3日 (土)

エビネ(海老根) 江戸時代にもあったエビネブーム

名前 エビネ(海老根)
分類 ラン科
花期 4月~5月
生育地 山野の落葉樹林
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・佐野市

Edimg_6938

  最近訪れたとある林 でエビネを見つけた。エビネは林の奥でひっそり咲いていた。エビネは盗掘によって絶滅の危機に瀕しているランの仲間である。

 エビネは漢字で海老根と書く。根の形が海老にみえることから命名されたという。そんな根の形を見てみたいという衝動に駆られるが、盗掘のために絶滅の危機に瀕しているという状況下では、根を見るようなことは、教師である自分にはとてもできない。

 エビネの名前が最初に文献に現れるのは1491年。大沢久守の日記「山科家礼記」に花材としてエビネを生けたことが記されている。江戸時代になるとエビネは園芸植物として人気を博すようになり、江戸中期には多くの品種が作られたという。そして、昭和40年から50年にかけて、再びエビネブームが起こる。そして、多くのエビネが盗掘され、それは今も続いているというわけである。

Edimg_6916  

 私が愛用している「山渓ハンディ図鑑山に咲く花」のエビネの項目に黄色型の海老根が紹介されていた(キエビネではない)。栃木県の山でその黄色型を見つけた。望遠レンズを使って写真を撮ったが、遊歩道のから離れたところで近寄れるところになかったため、エビネに絡まっている蔓が外せなかったのが残念。でも近寄れる場所ならとられてしまったと考えると仕方がないのだが。

Img_5372

撮影 上から

平成18年5月 東京都高尾山
平成19年5月 東京都高尾山
平成19年5月 栃木県佐野市

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2006年5月13日 (土)

スイバ(酸葉) 別名・スカンポ すかんぽ、すかんぽ 川のふち

名前 スイバ(酸い葉 別名・スカンポ)
分類 タデ科
花期
 5月~8月
生育地 人家の周辺、草地、田の畦などに普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町 他 全国各地で出会っている  

Pict0001

 スイバの別名はスカンポ。目立たない花である。ところが、このような目立たない花を詩に詠み込んだ人がいた。北原白秋である。そしてその歌に曲をつけたのは山田耕筰。その曲は「酸模(スカンポ)の咲く頃」

土手のすかんぽ、
ジッワ更紗。
 
晝は螢が、
ねんねする。
 
僕ら小學、
尋常科。
 
今朝も通つて、
またもどる。
 
すかんぽ、すかんぽ、
川のふち。
 
夏が來た、來た。
ド、レ、ミ、ファ、ソ。

どんな内容なのかよくわからないのに、耳に残る歌である。

 スカンポはスイバともいう。スイバは漢字で書けば酸葉である。これは茎や葉に酸味があることによる。そのためスカンポを詠った短歌、俳句にはそれを噛んだという作品が多い。そしてその句は甘酸っぱいようなほろ苦いような味がする。

すかんぽを噛めばおぼろに父のこと 角川春樹
すかんぽを噛んでまぶしき雲とあり  吉岡禅寺洞
すかんぽや口笛風に和す夕べ    大関靖博
すかんぽの茎の味こそ忘られぬいとけなき日のもののかなしみ 吉井勇

 これから語るのは、私がデジタル一眼レフEOS30Dを購入した時のことである。

 夕方、朝から降っていた雨が上がり日が差してきたので家の近くでいくらでも見ることができるスカンポを300ミリレンズを使って撮影してみた。デジタル一眼レフデビューの瞬間である。今まで美しいと感じることのなかったスカンポであったが、そんなスカンポにも美しく輝くときがあることを発見することができた。写真は目に写ったものを映し出すだけのものではないということ、今まで理解していた気がしていたが今日その理解が数歩先に進んだという気がした。下の写真はそのデビュー作である。

Img_00481

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5月13日(土)杉戸町

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2006年5月 5日 (金)

ツクシ(土筆) 土筆なつかし

名前 スギナ(杉菜) その胞子体がツクシ(土筆)
分類 シダ植物トクサ科
生育地 平地の草原、畑など
私が出会った場所 日本中で出会っている

Tsukushidscf1462jpg1加藤楸邨に「土筆なつかし一銭玉の生きゐし日」という俳句がある。

どうやら土筆は私を含めて多くの人に懐かしさを思い出させる植物であるようだ。
私の世代では「土筆なつかし5百円札の生きゐし日」といった感じであろうか。字余り等を気にしなければ穴の空いた50円玉の生きゐし日でもよいと思う。

幸い私が住んでいる埼玉県の杉戸町では周りにまだ土筆を見るところが残っている。土筆が珍しさから生ずる懐かしい植物にならなければよいと思う。

Img_6317

Img_8776

撮影 上から
 白馬山麓
 裏磐梯
 埼玉県宮代町

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2006年5月 4日 (木)

ミズバショウ(水芭蕉) 懐かしい花

名前 ミズバショウ(水芭蕉)
分類 サトイモ科
花期 5月~7月
生育地 湿地
私が出会った場所 栃木・塩原(大沼)、群馬・尾瀬、長野・白馬山麓、戸隠森林公園、福島・仁田沼、

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夏の思い出

夏が来れば 思い出す
遥かな尾瀬 遠い空
霧の中に 浮かび来る
優しい影 野の小道
水芭蕉の花が 咲いている
夢見て咲いている 水のほとり
石楠花色に 黄昏る
遥かな尾瀬 遠い空

夏が来れば 思い出す

遥かな尾瀬 野の旅よ

花の中に そよそよと

ゆれゆれる 浮き島よ

水芭蕉の花が 匂っている

夢見て匂っている 水のほとり

まなこつぶれば なつかしい

遥かな尾瀬 遠い空

 『夏の思い出』ではの思い出として水芭蕉が実に見事に語られている。しかし、この歌にあこがれて、真夏の尾瀬では、この歌の水芭蕉とは似ても似つかぬ、巨大な葉だけがめだつ水芭蕉を目にすることになる。作詞をした江間章子さんは、一度も尾瀬に行かずにこの曲を書いたそうだ。夏は夏でも尾瀬ヶ原では水芭蕉は梅雨時の花である。

 とはいっても、私はこの『夏の思い出』という曲が大好きだ。この歌を口ずさむと、懐かしいという気持ちで心が満たされる。

撮影 平成18年5月4日 居谷里湿原

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2006年5月 2日 (火)

ヤマツツジ 泉鏡花の世界に誘う花

名前 ヤマツツジ(山躑躅)
分類 ツツジ科
生育地 山地
私が出会った場所 栃木県・那須、日光霧降高原、戦場ヶ原、八方ヶ原、長野県・八ヶ岳  他

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 泉鏡花に『龍潭譚(りゅうたんだん)』という小説がある。鏡花の物語世界の中でも特に好きな作品である。

 『龍潭譚』はツツジの丘で遊んでいた少年が、幻想の世界に誘い込まれ、幻想と現実の間のせめぎ合いを経て現実世界へと戻ってくるといった幻想潭である。

 主人公の少年は躑躅(つつじ)の丘でハンミョウという美しい昆虫に出会い、そのハンミョウに顔を刺される。そしてそれが異界をさまようきっかけとなる出来事となる。鏡花はそのハンミョウを「毒虫」として描いている。前回、前々回の寫眞館で紹介したとおり、実はハンミョウには毒はなく、毒があるのはハンミョウに似た前述したツチハンミョウである。

『私がこの作品を気に入っているのは、「行く方も躑躅(ツツジ)なり、来し方も躑躅なり」という躑躅の丘の表現があまりに見事だという理由による。

◆両側つづきの躑躅の花、遠き方は前後を塞ぎて、日かげあかく咲込めたる空のいろの真蒼き下に、彳(たたず)むはわれのみなり。

◆ゆう日あざやかにぱつと茜さして、眼もあやに躑躅の花、ただ紅の雪の降積めるかと疑はる。

躑躅にもいろいろあるが、ヤマツツジやレンゲツツジのオレンジが幻想へ導く色としてふさわしく思われる。満開の躑躅に囲まれて、その中を一人歩けばそのあまりの美しさに恐ろしさを感じることであろう。

撮影 5月 八方ヶ原

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2006年4月14日 (金)

ウラシマソウ(浦島草) 浦島太郎から取られた名前

名前 ウラシマソウ(浦島草)
分類 サトイモ科テンナンショウ属
生育地 山野の木陰
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町・さいたま市岩槻地区 その他

Img_4196

 オオタカが見られるという場所に出掛けた。そこは私が住んでいる杉戸町のとある場所。そこでこのあたりでは珍しい植物が群生している場所を見つけた。写真の植物の名前はウラシマソウ。漢字で書けば浦島草である。
鞭状に垂れ下がった花序の付属物を、浦島太郎が釣り糸をたれている姿に見立てて命名された。
学名はArisaema urashima Hara 。ここにも「浦島」の名前が使われている。Haraは原で発見した人の名前だろうかと思ったが、これは「haima=血」を表した言葉で、葉柄にある斑点にちなんでいるそうだ。

正岡子規にウラシマソウを詠んだ次のような句がある。

   枕もと浦島草を活けてけり

結核という死の病と闘いながら、枕元にこんな不気味な植物を活けてしまう子規。すごい人物だと改めて思う。

撮影 平成18年4月9日(土) 埼玉県杉戸町

 

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2006年4月 9日 (日)

タカオスミレ(高尾菫) 高尾山の思い出とともに

名前 タカオスミレ(高尾菫)
分類 スミレ科
花期 3月~4月
生育地 高尾山
私が出会った場所 東京都・高尾山

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春休みの最後の日曜日を使って、高尾山に出掛けた。高尾山は私の記憶に残っている中では、この世に生を受けて初めて登った山である。

確か小学1年生の時ではなかっただろうか。その頃の私が一番こころときめかせていたのは昆虫採集だった。特にチョウに心惹かれていた私は、捕虫網を持って父と共にこの山に登った。

寺山修司がなくなった後、彼を偲ぶ演劇が上演された。彼の初期の代表作『毛皮のマリー』はそのトップとして上演された。そのオープニングシーン、暗闇の中、捕虫網を持った少年達が浮かび上がる。幻想的に捕虫網を操る少年達は美しかった。そして「懐かしい」という気持ちで満たされた。

 今から20年以上前の話である。おそらく私だけでなく、多くの観客が捕虫網の少年に「懐かしさ」を感じたはずである。明らかに、懐かしさを伴った美しさを狙った演出であった。さて、いまの子どもたちが大人になったとき、果たして捕虫網の少年は懐かしさ呼び起こすだろうか?高尾山に登りながら、そんなことを考えていた。

Img_4387_2

高尾山は動植物の宝庫である。高尾山の名前が付いている植物もある。その一つがタカオスミレ。ヒカゲスミレの葉の表面が焦げ茶色から黒紫色になったもので、高尾山で初めて採取されたことからその名前が付いている。

 今年の冬は寒さが厳しく、花の時期も遅れ気味ということで、タカオスミレに会えるかどうか心配であったが、日影沢で見ることができた。
高尾山に登ってから約40年。かつての昆虫少年は、昆虫だけでなく、花、鳥、両生類、キノコなどなどさまざまな生き物に興味を持って、この場所に戻ってきた。

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2006年4月 6日 (木)

オウレン(キクバオウレン) 雪国植物園にて

名前 オウレン(キクバオウレン)
分類 キンポウゲ科オウレン属
花期 3月~4月
生育地 山地の林内
私が出会った場所 新潟県・角田山、樋曽山、雪国植物園

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長岡の雪国植物園で撮影したオウレン(キクバオウレン)。この植物園は自生種を植物園として守るというスタンスの植物園であり、その方向性は私好みだ。雨に濡れたオウレンの花が魅力的だった。

撮影 
上 新潟県・雪国植物園
下 新潟県・角田山

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2006年4月 3日 (月)

マンサク まず咲く花

名前 マンサク(満作)
分類 マンサク科マンサク属
花期  3月~4月
生育地 山地の乾いた斜面
私が出会った場所 埼玉県・四阿屋山、新潟県・弥彦山・雪国植物園、福島県・裏磐梯

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 マンサクの花に始めてであったのは、新潟県にある弥彦山。山頂近くはまだ雪が残っていた。
 マンサクの花を図鑑で知ったときの私の感想は、「これが花?」というものだった。はじめはまったく魅力を感じなかったが、年を重ねるにつれこのような一見地味な花により魅力を感じるようになってきた。野生の状態で出会いたいと思うようになった。
 マンサクという名前の由来には二つの説がある。一つはこの花がよく咲く年は豊年満作と言われることから。もう一つはこの花が他の花に先駆けて「先ず咲く」ことから。

弥彦山は頂上付近までロープウェイで行ける。ほとんどの人が山頂からの眺望を楽しんだ後、ロープウェイを使って麓まで戻る。私は麓まで歩くことを選択したが、それは大変静かな山歩きであった。

まんさくやかへりみて誰も居らぬ路  
                    滝 春一

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