2008年6月 7日 (土)

ウツギ(別名・ウノハナ)  「夏は来ぬ」

名前 ウツギ(空木) 別名・ウノハナ(卯の花)
分類 ユキノシタ科ウツギ属
花期 5月~6月
生育地 平地および山地の川沿いや林縁
私が出会った場所 埼玉県・蓮田市(黒浜地区 5月)、東京都・御岳渓谷(5月)、高尾山(5月)、神奈川県・不老山(6月初旬)、その他 日本の各地で出会っている

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 ウツギは空木。枝が中空になることから名前がついた。別名・卯の花は旧暦4月の卯月に花が咲くことによる。卯の花で思い出されるのが名曲「夏は来ぬ」。その1番と5番に卯の花が描かれる。作詞は国文学者・佐佐木信綱。国文学者だけに中国に々の文字がないことから、佐々木ではなく佐佐木と書くようになったという。

 そんな文学者が書いただけあってその言葉の使い方は子どもには難しく、「夏は来ぬ」は「夏は来ない」という意味だと思っていた。大人になるまで卯の花もホトトギスもクイナ(「夏は来ぬ」で歌われているクイナはクイナの仲間のヒクイナのこと)も知らなかった。知らないのに言葉の響きは大好きだった。卯の花やホトトギス、クイナがどんな生き物か知るようになって、ますますこの曲が好きになった。

夏は来ぬ

1番
卯の花の匂う 垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍び音(しのびね)もらす 夏は来ぬ

5番
五月闇(さつきやみ) 蛍飛び交い
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ

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2008年5月27日 (火)

ショウジョウバカマ  ショウジョウとは何か?

名前 ショウジョウバカマ(猩々袴)
分類 ユリ科
花期 4月~5月
生育地 山地の谷沿いや湿地
私が出会った場所 日光・戦場ヶ原、竜王峡、長野・戸隠森林公園、白馬山麓、新潟・角田山 他 山地のたくさんの場所で出会っている。

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ショウジョウバカマは私が二度に渡ってその名前の由来を間違えた花だ。はじめ私はこの花を耳で覚えた。そしてこの花はショウジョバカマだと思った。要するに、少女袴、少女がはく袴である。図鑑を見てこれがショウジョバカマではなくショウジョウバカマだと知る。漢字で書くと猩々袴。猩々がはく袴という意味であった。ここで私は第二のミスを犯した。私はオラウータンがはく袴という意味にとったのだ。要するに私はその当時、猩々=オラウータンだと思っていたのだ。

確かに、オラウータンは猩々という呼び方で呼ばれることがある。私は、猩々という動物をエドガー・アラン・ポーの作品『モルグ街の殺人』で知った。翻訳されたその作品に猩々という動物が登場する、そしてそれはオラウータンのことだと書かれていた。そのためショウジョウバカマという名前を聞いたとき、オラウータンの袴のことだろうと認識したのだ。今から考えれば、昔から日本に存在するショウジョウバカマにオラウータンが使われるなどということがある可能性があるはずがないのは、自明の理なのであるが。

 ショウジョウバカマの猩々は中国の伝説上の怪物・猩々のこと。人の言葉を理解し、酒を好むという。猩々の名がつく生き物としてショウジョウトンボがいるが、いずれもその赤い色から猩々の名前がつけられている。蛇足ではあるが、ショウジョウバエは赤さからではなく、酒を好むことから猩々の名前がついているのだという。

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2008年5月26日 (月)

ミゾソバ  風うつくしき日暮かな

名前 ミゾソバ(溝蕎麦) 別名・ウシノヒタイ(牛の額)
分類 タデ科
花期 7月~10月
生育地 平地から山地の水辺
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町、春日部市 他 全国各地で出会っている。

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 ミゾソバは溝蕎麦。溝に生える蕎麦に似た草という意味である。別名ウシノヒタイ。これはミゾソバの葉の形が、牛の顔を正面から見た形に似ていることによる。

 ミゾソバは美しくかわいらしい花を咲かせる。ただ、夕暮れ時に見るこの花はまた違った趣を呈するのだ。俳句にミゾソバを詠み込んだ山口みちこはきっとその美しさに出会ったに違いない。

溝蕎麦の風うつくしき日暮かな  山口みちこ

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ハキダメギク 夕暮れ時に輝く花

名前 ハキダメギク(掃溜菊)
分類 キク科
花期 6月~11月
生育地 関東地方では道ばたに普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町 他 道ばたに普通に見ることができる

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 大正時代、東京世田谷の掃き溜めで見つかったことから植物学者・牧野富太郎によって命名された。帰化植物で、ふるさとは熱帯アメリカ。

 教師である私の専門は英語だが、ある時、理科を教えることになったことから真剣に植物を学び始めた。そして、植物に興味を持ち、身近な植物の名を覚えていった。そんなときこの花に出会った。小さくてかわいらしい花だと思った。早速、植物図鑑で名前を調べて愕然とした。「ハキダメギク」。この花の本質を好きになれば名前など関係ないと言い聞かせても、どうしてもこの名前が、この花に対しての愛おしい気持ちを萎えさせた。そんな時 まど・みちおの詩に出会った。

◆ハキダメギク  まど・みちお

落し物を拾おうとして
かがんだ小母さんかなんかが
まあ!
と びっくりするのです
いきなり 目の前に
星でも みつけたように
そのへんの 道ばたや
畠のふちなどで…

でも 落し物をする人が
そんなに しょっちゅう
いるわけも ありませんから
ほんとは だれも気がつきません

いやな名前をつけられたまま
ひっそりと光っている
そんな米つぶほどの花のことなどは…

「ハキダメギク」という名前をつけられなけば、まど・みちおが取り上げることはなかったろう。そう思えば「ハキダメギク」という名も悪くはないかとも思う。

さて、小母さんがこの花を見つけたのはいつだろう。おそらく夕暮れ時ではないだろう。
もし、夕暮れ時だとしたら、その美しさといったら…

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2008年5月20日 (火)

ナズナ  清少納言が認めた草

名前 ナズナ(薺) 別名・ぺんぺん草
分類 アブラナ科
花期 3月~4月
生育地 平地の草原、道ばた
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町 他 全国各地で出会っている

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ひっそりかんとしてぺんぺん草の花ざかり  山頭火

 ぺんぺん草はナズナの別称。果実の形を三味線のバチにたとえた命名である。春の七種の一つで、日本では室町時代から七種粥に入れるようになったという。地味な花ではあるが、花に目を近づけて眺めてみると、一株のぺんぺん草の中に、花盛りが感じられる。「枕草子」第六十六段「草は」で、清少納言はおかし(趣がある)と思う草をいくつもあげている。なずなはそのうちの一つである。あげられている草花はどちらかというと地味なものばかりであり、その趣味とそれらを選ぶ感性は私の好みでもある。

 私は雪の日に見るなずなが特に好きだ。

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2008年5月10日 (土)

フモトスミレ 高貴な紫をまとった花

名前 フモトスミレ(麓菫)
分類 スミレ科
花期  3月下旬~5月中旬
生育地 山地
私が出会った場所 東京都・大塚山、埼玉県・子の権現、栃木県・塩原渓谷遊歩道

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山渓ハンディ図鑑「日本のスミレ」でフモトスミレは「地味ながらもハイセンスな逸品」と紹介されている。言い得て妙と感じた。私は、花の後ろ側の紫色にハイセンスさを感じる。はっとするような鮮やかな紫である。

撮影 平成20年4月 子の権現

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2008年5月 8日 (木)

ニオイタチツボスミレ  かお くっつけて しゃがんでた(まど・みちお)

名前 ニオイタチツボスミレ(匂立坪菫)
分類 スミレ科
花期 3月下旬~5月中旬
生育地 開けた草地、明るい落葉樹林下
私が出会った場所 栃木県・三毳山、東京都・裏高尾、神奈川県・大山

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前回の寫眞館「エイザンスミレ」で紹介した、まど・みちお作『すみれのはな』には続きがある。

すみれのはな まど・みちお 

きがついたら しゃがんでた
かお くっつけて しゃがんでた
すみれのはな
すみれのはな
それは ちいさな こもれびに
いっしょうけんめい さいてたよ

 私はこのスミレに出会うと、いつもしゃがんで顔をくっつけてみる。そのスミレの名はニオイタチツボスミレ。花にかすかな芳香があることで知られている。このスミレの花を知っている人の多くは、私と同じような行動をとるようだ。裏高尾で、このスミレの花に鼻を近づけている人たちと何度も出会った。

 悲しいことに私はこのスミレの花に匂いを感じたことがない。おそらく私が花粉症であることに関係があるのだろう。この花が咲く頃は私の花粉症の症状のピーク時に当たるからだ。私以外の人でも、このにおいを感じない人はいるようである。裏高尾で出会った人たちの、半分は「いい香り」と言って喜んでいたが、半分は「においがしない」と私と同じ感想を語っていた。

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2008年5月 6日 (火)

エイザンスミレ  ひとりぼっちでさいてたよ(まど・みちお「すみれのはな」)

名前 エイザンスミレ(叡山菫)
分類 スミレ科
花期 4月~5月
生育地
私が出会った場所 埼玉県・伊豆ヶ岳、栃木県・日光小倉山、県民の森、東京都・高尾山、御岳山、神奈川県・大山 その他多くの山で

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童謡『ぞうさん』で有名なまど・みちおに「すみれのはな」という私のお気に入りである詩がある。

    すみれのはな  まど・みちお

しらないまに いっていた
こんにちはって いっていた
すみれのはな
すみれのはな
それは さみしい やまみちに
ひとりぼっちで さいてたよ

 この詩を読んで、私が思い浮かべたのはエイザンスミレ。写真のように葉が深く裂けているので、見分けが難しいスミレの中でもこのスミレはかんたんに同定できる。もっと葉が裂けるヒゴスミレというスミレが存在するが、こちらはエイザンスミレと比べ見られる場所は局所的である。

 さみしいやまみちに ひとりぼっちで咲いているイメージにぴったりのスミレだと思う。

撮影 
上 埼玉県伊豆ヶ岳
下 栃木県県民の森

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2008年5月 3日 (土)

ハクサンチドリ 林間学校の思い出 その2

名前 ハクサンチドリ(白山千鳥)
分類 ラン科
花期 6月~8月
生育地 高山
私が出会った場所 群馬・至仏山、長野・岩菅山、八方尾根 他

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 前回の寫眞館「ギンリョウソウ」で林間学校の紹介をした。その時の林間学校でもう一つ、印象に残っている花がある。それはハクサンチドリ。出会った山は、志賀高原にある岩菅山。

 岩菅山は高山である。山登りが苦手な生徒達はへとへとになっていた。私は最後尾の生徒につき、生徒達を励まし励まし登った。花を紹介しながら、ゆっくりゆっくり登った。そして、頂上近くの難所のざれ場でハクサンチドリに出会った。美しい蘭の花をじっくり味わい、そしてなんとか頂上にたどり着いた。

 登山の後、夕食のバーベキューが美味しかったこと。そして、その後行われたキャンプファイヤー。
  暗闇の中に浮かび上がる炎、そして谷川俊太郎の「生きる」の詩が、闇と炎の中を静かな響きとして流れていく。炎がすべて消えた後、打ち上げられた花火の美しかったこと。実行委員達の目から涙がこぼれ、そしてその涙は波紋のように伝わっていった。

  あのとき「生きる」とともに読まれた、まど・みちおの詩「山のてっぺん」をあの当時の実行委員は覚えているだろうか。実行委員達が、この詩が今の私たちにぴったりと選んできた詩だった。

   山のてっぺん まど・みちお

ふもとの小川までおりてきて
ふりかえると
山のてっぺんは 空の中にまだ明るい

ほら あそこに
豆つぶみたいになって ぼくたちがいる
豆つぶなのに
あんなに よく見えて
さっきのままに 風にふかれて
まわりの山々や
とおい町や
町のむこうの海や
海のもっとむこうにかすむ明日へ
あんなに まぶしく手をふって

いつか また
あそこへ登っていく日のぼくたちを
あのまま ああして
待っているかのように

  この詩はあのときの自分たちにぴったりなのではなく、あのときから何年もの時が経過した今にぴったりなのではないかと思う。あの頃の私たちが、岩菅山の頂上で待っている気がする。あの頃の私たちに会ってみたいと思う。話してみたいと思う。

ハクサンチドリは思い出深い花だ。

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2008年5月 2日 (金)

ギンリョウソウ(銀龍草)② 林間学校での思い出 その1

名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている

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  この花を見ると思い出すのが、林間学校でのこの花との出会いだ。訪れた場所は志賀高原・岩菅山。当時、総合的な学習の時間などというものはなかったが、私は学活の時間を使い、下見で確認した鳥の鳴き声を教えたり、そこで見られる花を紹介するなどした。ただ、頂上を克服を目指し、登り切ったはいいけれど、もう二度と山になど行きたくないというような根性重視の苦行僧的登山は行いたくなかった。

  事前の学習が功を奏し、生徒が目の前に現れる花や鳥に興味を持ってくれた。 
  黒地に白い星模様のついたホシガラスが現れたり、先頭を行く生徒たちから「カケスが出ました」という連絡が入ったりと、それはそれは楽しい登山だった。

  頂上にたどり着き、下山途中で見つけたのがこの花・ギンリョウソウ。一緒に歩いていたクラスの生徒はこの花の不思議な魅力に捉えられた。この花を囲んで、この花の魅力を語る自分とその話に目を輝かせて聞きいる生徒たち。今・総合的な学習の時間で私が求めているのはこんな学びの姿勢だ。少なくとも教師→生徒という一方的な学びの場ではなかったのではないかと思う。この時一緒に花や鳥を楽しんだ生徒は、きっとこの後の山登りでも「この花なんだろう」などと考えてくれているはずだと私は思っている。

ギンリョウソウの花はあの頃を思い出させてくれる。

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2008年4月27日 (日)

スミレ(菫) アテナイのシンボルであった花

名前 スミレ(菫)
分類 スミレ科スミレ属
花期 4月~5月
生育地 日本全土の人家付近から丘陵まで
私が出会った場所 埼玉県春日部市、杉戸町、久喜市 他

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 スミレにはたくさんの種類がある。写真のスミレは、スミレの中のスミレ。
 人里に多く、「万葉集」にも登場するなど、古くから親しまれてきた花である。

 古代ギリシャではスミレはアテナイのシンボルであったという。アテナイ人は墓にスミレを供えた。また、ローマ人はその風習を継承し、スミレを墓に捧げに行く日を「スミレの日」と呼んだという。

 

 私は子どもの頃、野原で見つけたスミレを家に持ち帰り庭に植えた。その紫色の花が私を引きつけて放さなかったからである。スミレは枯れることなく、ずっとずっと庭の植えた場所で生きた。種もつけた。しかし、毎年知らず知らずのうちに種をつけているのだ。いつも気にしているのに、どうして花を見ることができないのかそれが不思議だった。大人になって閉鎖花の存在を知るまで。閉鎖花とは,花を開かずに,自分で種子を作ってしまう花。自宅の庭は条件が悪かったのか、スミレは花を咲かせず閉鎖花だけを作ったようだ。閉鎖花という存在を知らなかった私は、毎年、今年も花が咲いたのを見逃したと残念がったのであった。

  私が勤務している中学校の駐車場にスミレが咲いていた。今でも、子どもの時のようにスミレにときめきを感じることができることが嬉しい。

撮影 平成20年4月 久喜市

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ギンリョウソウ(銀龍草)① 『西の魔女が死んだ』で描かれた植物

名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている

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昨日紹介した『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)にはキュウリグサと共にもう一つ印象深い植物が登場する。主人公が林の中にある穴の中に落ちたとき、その植物が穴の中一面に咲いているのだ。その植物は物語の中で次のように表現されている。

◆穴の脇は更に深い洞のようになっていて、その一面に美しい銀色の花が咲いていたのだ。暗い林の奥の、そのまた暗い、ほとんど陽も届かないはずの場所に。その植物は二十センチくらいの、葉を持たない銀白色の鱗をつけた茎の先に、やはり銀細工のような小さな蘭に似た花をつけていた。それが何十本となく、まるで茸かつくしのように地面から生えているのを見るのは不思議な光景だった。

山の植物を少し知った人なら、この描写でこの花が銀龍草(ギンリョウソウ)だとわかるだろう。この小説の他の植物は片仮名で表現されているのに、このギンリョウソウは銀龍草にギンリョウソウというルビが振ってある。確かに漢字で表現したくなる素敵な名前の植物である。私の幻の森にふさわしい幻のような花だ。

撮影 2004年6月 駒止湿原にて

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2008年4月26日 (土)

ハナイバナ  キュウリグサに似た花

名前 ハナイバナ(葉内花)
分類 ムラサキ科ハナイバナ属
生育地(分布) 日本全土の道ばた、畑、庭にごく普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、宮代町 他Img_3887

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 ハナイバナはキュウリグサと同じムラサキ科の植物。名前は葉と葉の間に花をつけることによる。キュウリグサ以上に味気ない名前ではあるが、キュウリグサとの違いを理解するにはよいのかもしれない。前回紹介したキュウリグサは、茎の先にサソリの尾の形に花を多数つける。

 3月から5月はハナイバナとキュウリグサのどちらも花を咲かせるので紛らわしい。6月になるとキュウリグサの花は終わり、ハナイバナのみが咲くようになり、ハナイバナはその後11月くらいまで花を見ることができる。

撮影 平成20年4月 埼玉県杉戸町

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キュウリグサ 『西の魔女が死んだ』に登場する植物

名前 キュウリグサ(胡瓜草)
分類 ムラサキ科
花期 3月~5月
生育地(分布) 日本全土の道ばたや庭
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市 他 日本の各地
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『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)という小説は生命を扱った素敵な物語だった。この度、映画化されたようである。

この物語には、シジュウカラ、エナガ、コガラ、ホトトギス、ホオノキ、クサノオウ、カヤツリグサ…と、たくさんの生き物が登場する。それがどんな生き物か知らなくてもこの小説を楽しむことはできる。しかしその生き物が映像として浮かぶとき、この物語は更に面白さをますはずだ。

 主人公の少女はサンルームの床のれんがの隅に生えている小さな雑草に興味を持つ。そしてそのワスレナグサを小さくしたような青い花にヒメワスレナグサという名前を付ける。素敵な名前だ。この花の正式名がキュウリグサであることは最後で提示されるが、この物語に心を動かされた人はこのキュウリグサがどんな植物か知っておくといいだろう。もむとキュウリのような匂いがするというキュウリグサ(試してみたが、そういわれればキュウリの匂いという気もする、その程度の匂いだと私は感じている)、私の好きな花の一つでもある。都会、田舎に関わらず日本中の平地のどこでも見ることができる花だが、とても小さいのでこの花に目を止める人はほとんどいない。

 こんな可憐な花なのに、名前はキュウリグサ。ドナウ川の川辺で恋人のため花を摘もうとした青年が、川に落ち急流に飲まれる前に恋人に花を投げ「私を忘れないで」と叫んだことから名前がつけられたといわれるワスレナグサ(勿忘草)と比べるとかわいそうな気もする。『西の魔女が死んだ』は、このちっぽけな花に多くの人が目を向けるきっかけを作ってくれるかもしれない。そうなればいい。

※撮影 2008.4 埼玉県・杉戸町

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2008年4月 6日 (日)

カタクリ 紫色の怪しい文字

名前 カタクリ(片栗) 
分類 ユリ科・カタクリ属
生育地 低山林内
私が出会った場所 埼玉県・寄居町、栃木県・三毳山、東京都・高尾山、福島県・仁田沼、新潟県・角田山・臥牛山・弥彦山・樋曽山、長野県・白馬 他多数 

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 かたくりの一つの花の花盛り         高野素十

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宮澤賢治の『若い木霊』という作品にカタクリは登場する。多くの人にとってはカタクリは花を楽しむ植物であるが、賢治が注目するのはその葉だ。私はこの賢治の作品を読んで以来、カタクリの葉の模様も楽しむようになった。

  (若い木霊は)ふらふら次の窪地にやって参りました。 
その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいかたくりの花が咲いていました。
  若い木だまにはそのうすむらさきの立派な花はふらふらうすぐろくひらめくだけではっきり見えませんでした。却ってそのつやつやした緑色の葉の上に 次々せわしくあらわれて又消えて行く 紫色のあやしい文字を読みました。
「はるだ、はるだ、はるの日がきた、」
  字は一つずつ生きて息をついて、消えてはあらわれ、あらわれては又消えました。
「そらでも、つちでも、くさのうえでもいちめんいちめん、ももいろの火がもえている」

紫色の怪しい文字から、世界を紡ぎ出す賢治に惹かれる。

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撮影 上から
     平成18年4月1日 樋曽山
     平成19年4月7日 角田山
     平成19年4月7日 角田山
     平成19年3月17日 三毳山
     平成19年3月17日 三毳山

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2008年4月 5日 (土)

オオミスミソウ(雪割草) みんな夢 雪割草が 咲いたのね

名前 オオミスミソウ(大三角草) 別名 雪割草
分類 キンポウゲ科・ミスミソウ属
生育地 平地~山地 日本海側に分布
私が出会った場所  新潟県・弥彦山、角田山、樋曽山(角田山の隣にある、登山口に案内さえ出ていない山)、臥牛山

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みんな夢雪割草が咲いたのね  
                三橋鷹女

鷹女のこの句が好きだ。鷹女が描いた雪割草に会うために、4月になると新潟の山々を訪れる。新幹線を使えば、新潟にあっという間に着いてしまう。そして、この美しい花と出会うことができる。青い花、ピンクの花、白い花そのグラデーションからなる雪割草のお花畑は美しい。その色のバリエーションの多さは不思議であり、その不思議が強烈な美を生み出している。

撮影 平成19年4月7日  角田山 
    平成20年5月     佐渡(一番下の写真)

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2008年3月31日 (月)

コブシ 初めての担任・お別れ会・そしてコブシの花

名前 コブシ(辛夷)
分類 モクレン科モクレン属
花期 3月~4月
生育地 丘陵、山地
私が出会った場所 東京都・高尾山、群馬県・伊香保森林公園、長野県・戸隠森林公園
類似種との違い タムシバというコブシとそっくりの花を咲かせる気があるが、コブシはコブシは花の下に小葉がある。タムシバにはない。

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 コブシの花をみると思い出すことがある。
 それは教師になって初めて担任したクラスのことである。

 私のクラスは1年2組だった。初めての担任ということで、がむしゃらに生徒とぶつかった。ずいぶんへまもしたがたくさんの涙と笑いがあった。毎日、毎日が新鮮だった。

 終了式の前日の午後、クラスのお別れ会が開かれた。班の出し物、歌、ゲームなど生徒が企画したお別れ会。ゲームも生徒と一緒に参加した。罰ゲームなどもやらなければならなかったりした。そんなお別れ会の終盤、「これなーに?」というゲームが始まった。

 指名された数名の生徒が水槽の中にあるものを手で触って当てる。豆腐などはまだいい、ねばねばの納豆であったり生卵であったり、「うわー」という感じのゲームだった。そして「最後は先生お願いします」。みんなの盛大な拍手の中、拒否することができず私は目隠しをした。いったい、私はどんなものを触らなければならないのだろう。恐る恐る手を水槽の中に入れた、生徒の悲鳴のような叫び声が聞こえる。思わず手を引っ込めた。また、手を入れる。しかし、手は何も触れることができない。「もっと下、もっと下」と生徒たち。私を恐る恐る水槽の下まで手を伸ばした。いくら私が初めて担任をした若造の教師だとしても、ぱちんと手を挟むねずみとりのような仕掛けを試みたりはしないはずだと信じて。

  手は、何か薄いものに触れた。両手で形を確かめると、それは四角形のとても軽い何かだった。しかし、私が想像するものの中にどうしてもその物体と合致するものは存在しない。私は、降参した。目を開けると、私の手にあったものはメッセージカードだった。「先生、一年間ありがとうございました」と書かれていた。胸が熱くなって、そのカードを見つめて、ただ何も言わずに立っていた。生徒たちの顔は笑顔だった。

  驚きはそれだけでは終わらなかった。黒板に貼られている模造紙に書かれたプログラム。そのプログラムには中ほどに折りこんで隠されている部分があり、学級委員がその折り込みを伸ばすと、そこに「先生感動のコーナー」という文字が現れのだ。「なんだなんだ」とびっくりしていると、学級委員の男子が私へのメッセージを書いた原稿用紙を取り出して読み出した。

  その原稿用紙は前日、私が「初めての担任としての記念にするから、どんなことでもいいから書いて提出してくれ」と全員に渡したものだった。その気持ちに応えて、この日の朝、みんながみんな何枚もに及ぶ熱いメッセージを書いて提出してくれたのだった。しかし、絶対忘れるはずのないクラスをまとめ続けてきた男子学級委員だけが、「本当にすみません、家に置いてきてしまいました」といって提出しなかったのだ。まだ未熟だった私は、「なぜおまえが」とみんなの前で怒ってしまった。そのなぜが、一瞬にして氷解した。提出しないで怒られることまでも計算に入れて、こんなことを企んでいたんだ。涙があふれ、止まらなくなった。生徒も泣き出した、誇張ではなく、みんな泣いた。

 お別れ会が終わり、私は外に出た。私の目の前には学校のシンボルであるコブシが満開の花を咲かせていた。この当時の私は植物のことを全然知らなかった。コブシという木はこの学校に来て覚えた。夕日に輝く、コブシがまぶしかった。
 
 コブシの花をみると私はあの日のことを思い出す。

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2008年3月29日 (土)

フデリンドウ  お別れの日の思い出

名前 フデリンドウ(筆竜胆)
分類 リンドウ科リンドウ属
生育地 平地から山地  
私がであった場所 埼玉県・蓮田市、春日部市、栃木県・竜王峡 その他

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 リンドウは秋に咲く花だと思っていた。しかし、日本には春に咲くリンドウが3種類あったのだ。その一つがフデリンドウ。

 この花を初めて認識したのは、忘れもしない教師となって初めて勤務した学校での最後の日。初めて教員になってから10年後の3月31日のことである。私は朝の新聞を見て愕然とした。なぜか毎年紹介されていた異動する教員が掲載されていないのだ。自分の異動を自分の口で私が顧問を務めている演劇部員に伝えるということはとてもつらく苦しいことだった、できれは部員が新聞を見てそこで知り、覚悟を決めて部活に来てほしかった。しかし…。登校してきた演劇部員は皆笑顔だった。
 そんな笑顔の生徒たちを集めて、異動の話をした。そして、何度も自然観察に訪れた黒浜沼に出かけることを提案した。
私のあとを継いでくれる顧問の先生のためにも、お別れ会的なしめっぽくて、後を引くような別れはしたくなかった。今後のしっかりした見通しも話し、部員達もちょっと安心し、笑顔での自然観察会が始まった。そんなとき、部員の一人が
「先生、この青い花なんですか」
と聞いてきた。それが、この花だった。
 私は、この年免許外で1年生の理科を担当したことから、学校周辺の草花を覚えた。そして、覚えているうちに草花に興味を持った。わからない草花を見つけると、すぐに理科の先生に聞き、それでもわからない時には図鑑で調べた。そうしてこの周辺の植物ならほとんどなんだかわかると言えるくらいになった。しかし、この花は何かわからなかった。外国からやってきた園芸種の野生化したものではないかなどとも思った。
「離任式で来る時までに、調べておくよ。これはみんなとの思い出の花になったね」
そして離任式のスピーチで宿題の答えを話した。
「君たちとの思い出となったあの花はフデリンドウでした」

「青い花」という小説で有名なノヴァーリスに次のような文章がある。

すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。
きこえるものは、きこえないものにさわっている。
感じられるものは感じられないものにさわっている。
おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。

好きな文章の一つだ。
その後私はフデリンドウを、急に目にするようになった。フデリンドウが急に増えたなどということはない。今までは目には入ってきていたのに、その映像をとらえていなかったのだ。「みえるもの」と「みえないもの」、それは 私自身 の世界が変わることで変わってくるものなのだと思う。
今の私がみえているものがさわっている、みえないものとはいったいどんなものなのだろう。

撮影 

上・埼玉県蓮田市
下・福島県いわき市

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2007年6月30日 (土)

エゾノタチツボスミレ(蝦夷の立坪菫)

名前 エゾノタチツボスミレ(蝦夷の立坪菫)
分類 スミレ科
花期 5月~6月
生育地 山地(本州中部地方以北)
私が出会った場所 山梨県・八ヶ岳山麓、長野県・岩菅山

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先日訪れた八ヶ岳でのこと。私はバスに乗り遅れた。昼はバスの便が少なく、次のバスまで2時間近く待たなければならない。2時間は短い時間ではない。
私は近くをぶらぶら散策することにした。そしてエゾノタチツボスミレに出会った。
このスミレは、私が植物に興味をもつようになった年に登った山で出会った花である。スミレにもこんなに背が高いものがあるのだと思った。
そのときの私は、このスミレは山ではどこででも普通に出会える花なのだろうと思った。その時から15年。私は今日までこのスミレに出会うことはなかった。久しぶりの再会である。
あれから15年たった今も、エゾノタチツボスミレほど背が高いスミレには出会っていない。

バスに乗り遅れることも、悪くはない。いや、バスに乗り遅れた悔しさから何とかして悪くないことにしようとしたことは正解だった。

撮影 平成16年6月17日(日) 八ヶ岳美濃戸口周辺

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2007年6月25日 (月)

クリンソウ(九輪草) サクラソウの女王と褒め称えられた花

名前 クリンソウ(九輪草)
分類 サクラソウ科
花期 5月~6月
生育地 山地の湿り気のある場所
私が出会った場所 栃木県・日光・中禅寺湖、山梨県・ 入笠山

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 クリンソウはサクラソウの仲間である。サクラソウに比べずっと大きいので、サクラソウの仲間というイメージでとらえるのは難しい。
雨に濡れたクリンソウの群生。美しい。

 日本を最初に訪れた植物学者はイギリスのロパート・フォーチュン。その彼が、日本で最も美しく、心惹かれる花として挙げたのがクリンソウ。彼はクリンソウを「サクラソウの女王」と褒め称えた。現在、白やピンクのクリンソウを見かけることがあるが、それはイギリスで品種改良されたものの逆輸入なのだという。

撮影 平成19年6月24日(日) 入笠山

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