2008年9月 9日 (火)

オニヤンマ  「オニヤンマ記念日」

名前 オニヤンマ(鬼ヤンマ)
分類 オニヤンマ科
出現期 6月~10月
生息地 日本全土の平地から山地
私が出会った場所 埼玉県・久喜市(9月)、北本町(8月)、福島県・磐梯山(7月下旬)、栃木県・花之江の里(9月初旬)

20080721_img_6701ed

蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ   中村草田男

 オニヤンマは大きなトンボである。日本最大のトンボである。オニヤンマは鬼ヤンマ、なにやら恐ろしげな名前であるが、その名前は鬼のような顔つきと共に黒と黄の縞模様が鬼がはくとら柄のふんどしを連想させるという理由からついた、ということを知ると思わず吹き出しそうになる。

 そんなオニヤンマが教室に飛び込んできた。給食時のことである。さすがにこの大きなトンボにクラスの生徒たちもびっくり。このオニヤンマ、はじめは教室中を所狭しと飛び回っていたが、しばらく飛び回った後、天井からの吊りものにとまり、そのまま1時間以上もそこに静止していた。しめたとばかり、デジカメで撮影。はじめは驚いていたクラスの生徒たちも、初めて見る巨大なトンボに興味をもち、みんなが近づいては様々な方向から眺めだす。昼休みになると他クラスの生徒、他学年の生徒、先生と次から次へとオニヤンマを眺めにやってくる。私はこの世界をとてもすてきだと感じた。

 5時間目の学活になってもオニヤンマはそのまま。私は黒板にオニヤンマと書いて、オニヤンマと私の出会いの話を始めた。自然が今より多いと思われている40年前の私の少年時代でも、オニヤンマはそれほど多く見られるトンボではなかったということ。オニヤンマには何回か出会ったことがあるが、こんなふうに静止しているオニヤンマに出会ったのは、長い人生で二度目であること。最初の出会いは磐梯山の頂上であったことなどなど(一枚目の写真はそのとき撮ったもの)。

 ちょうど話が終わった後、オニヤンマは飛びたち窓から外に出て行った。その日の学級日誌にはオニヤンマの出現が生き生きと書かれていた。ということで今日は「オニヤンマ記念日」

Dscf0489ed

 最後にオニヤンマを描いた八木重吉の詩を紹介しよう。

 大山とんぼ 八木重吉

大山とんぼを知っているか
くろくて巨きくてすごいようだ
きょう
昼ひなか
くやしいことをきいたので
赤んぼを抱いてでたらば
大山とんぼが路にうかんでた
みしみしあっちへゆくので
わたしもぐんぐんくっついていった

※詩集の解説に大山とんぼはオニヤンマのことと書かれている。この詩の表現からはオニヤンマでよいのではないかと思う。ただ、オオヤマトンボというオニヤンマとは違ったトンボが存在するという事実もある。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月 7日 (日)

ミヤマシロチョウ  半透明の白い衣服

名前 ミヤマシロチョウ(深山白蝶)
分類 シロチョウ科
出現期 7月上旬~8月上旬 年1回発生
生息地 本州中部亜高山帯
私が出会った場所 長野県・烏帽子岳(8月上旬)

Img_7853ed

 2008年8月上旬、湯ノ丸山と烏帽子岳に登った。湯ノ丸山の登山道に大きな看板が立っていた。そしてそこに群馬県嬬恋村の山地には群馬県指定のミヤマシロチョウ、ベニヒカゲ、ミヤマモンキチョウが自然の中で生息していること、捕獲等すると罰せられることが書かれていた。

 この3種類の蝶の中で、まだ出会っていない蝶、それがミヤマシロチョウだった。ベニヒカゲとミヤマモンキチョウとはすんなり出会うことができたが、ミヤマシロチョウとだけどうしても出会うことができなかった。しかたがないとあきらめたとき、白い妖精が目の前に現れた。初めての出会いだったので、それが本当にミヤマシロチョウかどうか自信がなかった。夢中で写真に撮り、家でその写真を確認し、ミヤマシロチョウだったのだと確信が持てた。

 北杜夫は『どくとるマンボウ昆虫記』で高山蝶は「小柄でも高貴な相がある」と形容している。そして「彼女らがもともと北国の冷たく清らかな大気から生まれたことがその一因であろう」と、彼女らの美しさの理由を説明している。そして、彼はミヤマシロチョウに次のような賛辞を送っている。

ミヤマシロチョウは、半透明の白い衣服しか身にまとっていない。それでも大衆の蝶モンシロチョウにくらべればあきらかにその棲息地が推測できる。

 ミヤマシロチョウという清楚な妖精がいつまでも生き続けてほしいと願う。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月 1日 (月)

コムラサキ 少年の日の思い出

名前 コムラサキ(小紫)
分類 タテハチョウ科タテハチョウ亜科
生息地と時期 河川敷などヤナギ類の映えている場所
私が出会った場所 裏磐梯(7月下旬)、埼玉県さいたま市岩槻地区(荒川河川敷)、尾瀬ヶ原

20080721_img_6825

 中学校の国語で出会った作品の中で特に心に残っている「少年の日の思い出」。私が出会ったときから30年以上たった今も、この作品は教科書の中に生き残っている。

 「少年の日の思い出」の主人公である僕は、非の打ち所のない少年エーミールが捕まえたというクジャクヤママユを逆らいがたい欲望に負け盗み、そして、その蝶をつぶしてしまう。ラストで少年はエーミールに盗んだことを告白するが、エーミールは「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」といい、どんることもなくただ軽蔑のまなざしで見る。僕は家に帰ったあと、大切にしていた標本の蝶をひとつひとつとりだし指で粉々につぶしてしまう。

 感動のラストというものではない、中学生には重くつらくのしかかるラスト、それだからこそ、30年以上たっても心に残っているのかもしれない。主人公の僕とエーミールの出会いで重要な役割をするのがコムラサキ。それはこんな風に描かれている。

ある時、ぼくは、ぼくらのところでは珍しい青いコムラサキを捕らえた。それを展翅し、乾いたときに、得意のあまり、せめて隣の子供にだけは見せよう、という気になった。それは、中庭の向こうに住んでいる先生の息子だった。この少年は、非の打ち所がないという悪徳をもっていた。それは子供としては二倍も気味悪い性格だった。(中略)そのため、ぼくはねたみ、嘆賞しながら彼を憎んでいた。
この少年にコムラサキを見せた。彼は専門家らしく、それを鑑定し、その珍しいことを認め、二十ペ二ぐらいの現金の値打ちはある、と値踏みした。しかし、それからかれは難癖をつけ始め…、(中略)

 さて、コムラサキであるが教科書の注には「タテハチョウ科。黒褐色の地色に、黄褐色の斑紋がある」と紹介されている。たしかにそうかもしれない、しかしこれではコムラサキの紫が十分に紹介されていない。確かに地色は黒褐色である。しかし、それはひかりの干渉によって紫色に光り輝くのだ。それは、幻の紫色なのかもしれない。しかし、写真でもその紫は紫にしっかりと記録される。黒褐色も紫も私にとっては本当の色だ。

 写真を撮りだしてからは、なかなか出会うことができなかった蝶であったが、裏磐梯ではここにもかここにもかというほどたくさんのコムラサキに出会うことができた。

 写真 平成20年7月下旬 裏磐梯

◆関連記事 キアゲハ 「少年の日の思い出」   

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ジョウザンミドリシジミ ゼフィルスと呼ばれる蝶

名前 ジョウザンミドリシジミ(定山緑小灰蝶)
分類 シジミチョウ科ミドリシジミ亜科
生息地と時期 ミズナラ・コナラ林
私が出会った場所 磐梯山(7月後半)

20080721_img_6554ed

 磐梯山登山口は霧の中であった。その霧の中、青く光る蝶が無数に飛び交っていた。夢のような景色であった。その蝶はジョウザンミドリシジミ。

 ミドリシジミの仲間をゼフィルスという。ゼフィルスとはなんのことだろう。分類学のレベルが低かった時代に、樹上性のシジミチョウの仲間を総括してZephyrusと呼んでいたのが始まりだという。語源はギリシャ神話の西風の神ゼピュロスである。

 子どもの頃の私に昆虫と共に多くの影響を与えたのは手塚治虫だ。私はアトムの大ファンだった。手塚治虫が虫マニアであったことを知ったのは後のことだが、子どもの時の私は手塚治虫の中にそれを感じ取っていたのかもしれない。

 手塚治虫は生涯3回ゼフィルスという名前を作品に使っている。一つ目はユニコに登場する西風の精ゼフィルス。二つ目は「ゼフィルス」というタイトルでミドリシジミを扱った作品。この作品に登場するゼフィルスはウラジロミドリシジミ。昆虫少年であった手塚治虫だからこそ生み出せた作品で、同じく昆虫作品であった私は、強く深い感動を味わうことができた。そして、三つ目は「地球を呑む」の謎の美女に与えられた名前である。ミドリシジミと謎の美女を重ね合わせる気持ちは、ミドリシジミの仲間のあの美しさに触れたものなら理解できるはずだ。

 霧の中を青い光を振りまきながら舞う、ジョウザンミドリシジミたちは、夢であった。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月31日 (日)

アマゴイルリトンボ 4県でしか確認されていない珍しいトンボ

名前 アマゴイルリトンボ(雨乞瑠璃蜻蛉)
分類 モノサシトンボ科
出現期 6月から8月
生息地 福島・山形・新潟・長野の4県のみで生息が確認されている
私が出会った場所 福島県・裏磐梯(7月後半)

2008072221_img_6852_2

 アマゴイルリトンボは雨乞い瑠璃糸蜻蛉。新潟県の朱門岳にある雨乞池で発見されたため、この名前がついた。日本特産で生息場所は福島、山形、新潟、長野の4県に限られるという。

 磐梯山登山後、裏磐梯を訪れた際、この蜻蛉に出会った。磐梯山は表登山口から裏磐梯に抜ける一番長い道のりを選択した。全13.2㎞は47歳という年齢にはこたえる。そんな疲れをこの蜻蛉は癒してくれた。

 裏磐梯に数多くある湖沼の一つでは、一番多く見られる蜻蛉であると聞いていたが、本当に出会う蜻蛉の8割がこの蜻蛉だったので驚いた。目までが青く彩られた美しい蜻蛉。雨乞いというのは単に発見された地名なのではあるが、なんとなく雨乞いという響きが似合う蜻蛉だと思う。

撮影 平成20年7月 裏磐梯

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月15日 (日)

クジャクチョウ 亜種名が「芸者」である蝶

名前 クジャクチョウ(孔雀蝶)
分類 タテハチョウ科
出現期 6月~10月に出現、成虫で越冬する
生息地 本州では山地
私が出会った場所 長野県・美ヶ原、四阿山、湯ノ丸山、烏帽子岳(8月)、白馬山麓(5月…越冬した成虫)、水の塔山(8月)、山梨県・大菩薩峠(8月)、福島県・磐梯山(7月下旬)

Img_1227

 孔雀のように美しいクジャクチョウ。日本産の亜種につけられている学名はNymphalis io geisha。geishaは「芸者」である。誰が名付けたのか私の知るところではないが、まあ、話の種としては面白い名前をつけたものだと思う。

 クジャクチョウにはじめて出会ったのは、大人になってからである。美ヶ原でクジャクチョウに出会ったとき、稲妻が体中を駆けめぐった。

  子どもの時の私は病弱で、幼稚園も小学校も休んでばかりいた。そんな私があきずにいつも眺めていたのが「昆虫図鑑」だった。特に蝶が好きだった。そして「いつか見てみたい」と強い思いを抱いていた蝶が、このクジャクチョウであった。孔雀の羽のような美しさを身にまとった蝶に惹かれた。しかし、当時の私には、山に行く体力はなかった。

 子どもに「図鑑ばかり見ていてはだめだ」という人がいる。「図鑑だけではなくほんものの自然を見よう」という意味での、その気持ちはわからないでもない。しかし、図鑑を見ることが、まるで悪いことをすることとして否定的な響きを持つ時、私は違和感を感じる。子どもの中には、以前の私のように外で蝶を見たくても見られないでいる子どももいる。それに、図鑑を見て蝶にあこがれた子どもが、大人になってその思いを思い出し、そこからほんものの自然に向き合うことだってある。図鑑を否定すれば、本当の自然に向かうかといえば、そうとは限らない。テレビゲームの世界に向かってしまうこともあるだろう。現在の私の自然への熱い思いは、図鑑ばかりみていた、子ども時代に始まった。

撮影 平成19年8月 大菩薩峠

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月12日 (木)

アゲハ 別名・ナミアゲハ 二つ折りのラブレター

名前 アゲハ(揚羽) 別名・ナミアゲハ
分類 アゲハチョウ科
出現期 3月~10月
幼虫の食草 ミカン類、サンショウ類
生息地 平地の庭、公園、畑など
私が出会った場所 日本の各地で普通に出会っている。

Img_5358

Img_5352

Img_7325

 日本昆虫学会が日本の国蝶を選定したとき、オオムラサキに次いでアゲハは次点の票数を獲得した。アゲハは最も身近な、そして美しい蝶である。

 フランスの小説家、ジュール・ルナールに「博物誌」というという作品がある。彼を取り巻く自然を、簡潔な文体で描いたものである。その中の最も有名な小品が「蝶」。

       蝶 

    二人折りのラブレターが、花の番地を捜している。

 アゲハチョウの羽根の見事な模様を見ていると、二つ折りのラブレターという形容がふさわしいと感じる。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月 6日 (金)

ニワハンミョウ 現代文学「砂の女」に描かれた虫

名前 ニワハンミョウ(庭斑猫)
分類 ハンミョウ科
出現期 5月~9月
生息地 平地から山地の地面
私が出会った場所 神奈川県・不老山(6月初旬)

Img_61602

Img_62313 

 ニワハンミョウは肉食昆虫ハンミョウの仲間。実は、以前からずっとニワハンミョウに会いたいと思っていた。それは、大学の時夢中になって読んだ安部公房の『砂の女』にこの昆虫が登場するからだ。私は、大学時代この小説に圧倒された。そして一時期、安部公房に夢中になった。

 安部公房は現代文学の世界的作家である。その代表作『砂の女』は読売文学賞のほか、フランスで最優秀外国文学賞を受賞している。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂に埋もれていく一軒家に閉じこめられる物語だ。新潮文庫の解説でドナルド・キーンはこの物語を、20世紀文学の古典と表現している。

その導入部で主人公とニワハンミョウの関係が語られる。

砂地にすむ昆虫の採集が、男の目的だったのである。
けろん、砂地の虫は、形も小さく、地味である。だが、一人前の採集マニアともなれば、蝶やトンボなどに、目をくれたりするものでない。彼等マニア連中がねらっているのは、自分の標本箱を派手にかざることでもなければ、分類学的関心でもなく、またむろん漢方薬の原料さがしでもない。昆虫採集には、もっと素朴で、直接的なよろこびがあるのだ。新種の発見というやつである。

ある日、家の近くの河原で鞘翅目ハンミョウ属の、ニワハンミョウに似た、小っぽけな薄桃色の虫を見つけたのだ。むろんニワハンミョウに、色や模様の変わりものが多いことは、周知の事実である。しかし、前足の形ということになれば、話はまた別だ。(中略)そいつの前足ときたら、まるで分厚い鞘をかぶせたように、もっこりとしていて、黄味がかかっていた。(中略)彼の見間違いでなければ、これは大変な発見になるはずのものだった。ただ、残念なことに、取り逃がしてしまったのである。(中略)
こうして彼は、その黄色い前足をもったニワハンミョウに、すっかりとりこにされてしまったのである。

 丹沢の不老山登山で2匹のニワハンミョウに出会った。山道を歩いていると目の前からふわりと飛んで少し離れたところに着地する虫がいた。まるで私の道案内をしているように。それが写真のニワハンミョウ。ハンミョウの仲間はみなそのような習性があるようで、「道教え」とか「道しるべ」という別名がつけられている。1匹は背中が緑色。もう1匹は茶色。「模様の変わりものが多い」生き物であるということは事実なのだと感じる。

 不老山での出会いは、それはずっとずっと会いたいと思っていたこの昆虫との初めての出会いである。小説の中での出会いから、実に20年以上の年月を経ての出会いであった。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年5月31日 (土)

コバノトンボソウ 蜻蛉に似た花

名前 コバノトンボソウ(小葉の蜻蛉草)
分類 ラン科ツレサギソウ属
花期 6月~8月
生育地 山地から亜高山にかけての日当たりのよい湿地
私が出会った場所 長野県・志賀高原四十八池(8月)、群馬県・尾瀬ヶ原(8月)

Img_4925

 コバノトンボソウは小葉の蜻蛉草。小さい葉の蜻蛉に似た草という意味である。距と呼ばれる部分が後ろにぴんと跳ね上がっている。この跳ね上がりかたは、夏の暑い日、蜻蛉がおしりをあげてとまっている様子にそっくりである。絶妙なネーミングだと思う。

Img_3865

 おしりをぴんと上げてとまるハッチョウトンボ。コバノトンボソウもハッチョウトンボも尾瀬ヶ原で見ることができる。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年5月29日 (木)

アサギマダラ  海を渡る美しい蝶

名前 アサギマダラ(浅葱斑)
分類 タテハチョウ科マダラチョウ亜科
食草 ガガイモ科キジョラン、イケマ
出現期 4月~5月に第一回目の発生その後、1~2回発生、その後長距離移動をする
生息地 市街地~高山帯
私が出会った場所 埼玉県・長瀞、東京都・高尾山(5月、9月)、栃木県・奥鬼怒(8月)、長野県・霧ヶ峰(8月)、志賀高原(8月)、烏帽子岳(8月)、群馬県・赤城山(8月)、四国・石鎚山(8月)  他

Img_1302

Img_4643

妻と初めて登った山は四国の石鎚山だ。その石鎚山でこの蝶と出会った。

「きれいな蝶」
「うん、アサギマダラっていうんだ」

 それ以来、アサギマダラは二人にとっての思い出の蝶となった。平成2年の夏のことだ。アサギマダラは美しい蝶だ。黒と茶に縁どられた翅脈のまだら模様が、浅葱色に透き通ることから名付けられた。その響きが何とも心地よい。ほとんど羽ばたかずに舞い、その半透明の羽根の向こうに青空が透けて見える。夢のように舞うという形容がふさわしい蝶である。

 アサギマダラの撮影に初めて成功したのは、霧ガ峰。その当時は望遠レンズを持っていなかったため、少しずつ、少しずつ近づき息を止めて写真を撮ったことを覚えている。志賀高原では百を軽く超えると思われるアサギマダラの群れに出会った。そこはヨツバヒヨドリのお花畠だった。

 アサギマダラを探すなら、ヨツバヒヨドリの花。蜜を吸うことに夢中になっているときの撮影は容易である。

 さて、石鎚山でこの蝶に出会った頃は、アサギマダラが渡りをする蝶であるという認識はなかった。実は、アサギマダラが渡りをすることが発見されたのは1981年。それほど昔のことではないのだ。現在、この蝶にマーキングすることによって、渡りのルートを調べる調査が行われている。マーキングは羽の裏面に油性のフェルトペンで、個体を識別するためのマーク(自分の名前の略、採集地、日付)を書き込む。そして、その蝶を放す。この地道な調査によって渡りのルートが明らかになってきた。すごいことだと思う。

 この小さな蝶が、なんと2000キロをこえる旅をすることもあるのだという。この小さな体でどうしてそんな旅ができるのか。なぜこの蝶は生まれながらにして、どこに向かうべきかを知っているのか。アサギマダラは畏敬の念を感じずにはいられない美しい蝶である。

Img_0341ed

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年5月20日 (火)

アオスジアゲハ クラスの生徒との思い出となった蝶

名前 アオスジアゲハ(青筋揚羽)
分類 アゲハチョウ科
出現期 4月~10月
生息地 平地の公園~山地の広葉樹林
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、東京都・高尾山 他 日本の多くの場所で出会っている 

Img_5165

Img_4988

 アオスジアゲハは昔は出会うことが少なかった蝶だ。親戚の家に行ったとき初めて見た青の美しさ、その胸のときめきを私は今でも覚えている。しかし、うれしいことに最近はこの蝶に頻繁に出会えるようになった。原因はクスノキの並木道ができたこと。アオスジアゲハの食草はクスノキなのである。

 さて、これから語るのは、平成15年、私が一年の担任をしていたときの話である。クラスの生徒が羽化しそうな、羽根の色が透けて見えるアオスジアゲハのさなぎを教室に持ってきてくれた。私は、みんなが見られるようにそれを教卓の上に置いた。しかし移動教室で全員が教室を離れているうちにアオスジアゲハはさなぎから出ていた。誰もその羽化を見ることができなかった。休み時間まだ羽根が伸びきっていないアオスジアゲハをみんなで見た。他のクラスの生徒も見に来た。
 「羽化の時間が私の授業と重なったらよかったのに」と思った。そしたら一時中断して羽化を見たことだろう。

 私は、その蝶が飛びつ姿を生徒とともに見たかった。しかし、私は午後から埼玉県庁に出張しなければならなかった。後ろ髪を引かれる思いで教室を出た。

 翌朝、教室に入ると、黒板の隅にメッセージが書かれていた。

「先生、アゲハが1:30に飛び立ちました」

 そして、その下に飛び立つアオスジアゲハの絵が描かれていた。
生徒たちはみんなで飛び立つ様子を見たんだろうな。そう思った。すてきな一日が始まろうとしていた。

撮影 平成20年5月 久喜市青葉公園

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ →幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年4月26日 (土)

スジボソヤマキチョウ butterflyとバターとの関係

名前 スジボソヤマキチョウ(筋細山黄蝶)
分類 シロチョウ科
生息地 高原・林縁・渓流沿い
私が出会った場所 奥鬼怒 

Img_5555

Img_5546

蝶の英語名はbutterflyであるが、これはイギリスの博物学者がヤマキチョウをButter-colored Fly(バターの色をした昆虫)と読んだことに由来するという。
ルイス・キャロルのアリスの物語にはBread-and-ButterflyというBread-and-butterとButterflyを掛け合わせたキャロルの創造した蝶が登場するが、ButterflyにもともとButterの意味が含まれていたことをキャロルは知っていたのだろうか。

撮影 平成18年8月 奥鬼怒

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月18日 (土)

スミナガシ 「いき」の世界に生きる蝶

名前 スミナガシ(墨流)
分類  タテハチョウ科
生息地・時期 樹林の周辺・5月~8月
私が出会った場所 東京都・高尾山

Edimg_9839

Edimg_9817

九鬼周造に『「いき」の構造』という著書がある。様々な「いき」について語られた名著である。いきな色については次のように語られている(抜粋)。

「いき」を表すのは決して派手な色ではあり得ない。「いき」の表現として色彩は二元生を低声に主張するものでなければならぬ。
「いき」な色とはいわば華やかな体験に伴う消極的残像である。(中略)温色の興奮を味わい尽くした魂が補色残像として冷色のうちに沈静を汲むのである。

「いき」な蝶は何かと問われれば、私は即座にスミナガシと答える。スミナガシは「墨流し」。水面に墨を流し、波状の模様をつくり、それを紙などに写し取るのが「墨流し」である。派手ではなく、それでいて地味でもない。まさに九鬼周造の「いき」の世界に生きる蝶である。

撮影 高尾山 平成19年7月

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月17日 (金)

ミヤマクワガタ  地元ではとれなかったクワガタ

名前 ミヤマクワガタ(深山鍬形虫)
分類 クワガタムシ科
見られる時期 7月~8月
生息地 平地から山地の林
私が出会った場所 東京都・高尾山(7月) 、長野県・秋山郷(8月)

Edimg_9726

  ミヤマクワガタは漢字で深山鍬形。深山に棲むクワガタムシという意味である。しかし、実際は山奥に行かなければ見ることができないというクワガタムシではない。東京では高尾山のような低山で見ることができる。ただ個体数は多くない。

  私が子どもの時、近くの雑木林でとれたクワガタは、コクワガタとノコギリクワガタの2種類。ミヤマクワガタは図鑑でのみ出会える憧れのクワガタだった。

  そんなミヤマクワガタに高尾山で出会った。子どもの時の私とは違い、今の私はクワガタはとらない、いやとる、ただ写真で撮るのだが。

  子どもの頃のときめきに出会うということは、とてもよい体験である。

20080823825_img_9294ed

撮影 上 7月 東京都・高尾山
    下 8月 長野県・秋山郷  

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月16日 (木)

ルリボシカミキリ 憧れの中の憧れ

名前 ルリボシカミキリ(瑠璃星髪切)
分類  カミキリムシ科
出現時期 6月~9月
生息地 平地・山地の森や林
私が出会った場所 東京都・高尾山(3号路・山頂…7月下旬)

Edimg_9685

憧れの虫というのがいる。ルリボシカミキリはその中の一つだ。虫屋にはこんなものも見ていないでよく虫好きといえるな、などと言われそうだが、そうなのだから仕方がない。

ルリボシカミキリに初めてであったのは高校の文化祭。私の家の隣にある高校の生物部はその文化祭で毎年昆虫の標本を展示していた。その中で私がもっとも美しいと思ったのが、ルリボシカミキリだった。生物部の人たちに一つくれないかと頼んだことを記憶している。あのときはもらえたのだったろうか?毎年、標本のルリボシカミキリには出会えたが、生きたルリボシカミキリにはずっと出会えないでいた。

ところがこの日、私は高尾山では何度も何度もルリボシカミキリに出会った。今まで出会えなかったことが不思議なほどに。
展示してあったルリボシカミキリも美しかったが、生きているそれの美しさといったら…

撮影 平成19年7月  高尾山 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年8月15日 (水)

アオカナブン  思い出との出会い

名前 アオカナブン
分類 コガネムシ科
見られる時期 7月~8月
生息地 低山から山地
私が出会った場所 東京都・高尾山

Edimg_997

 アオカナブンとの最初の出会いは今でも鮮明に覚えている。あれは父と二人で館林のツツジを見に行ったときのことだ。小学生にはいるかはいらないかの時だったのではないだろうか。そのとき、私は生まれて初めてアオカナブンに出会った。その輝きのまぶしかったこと。

高尾山の頂上で、アオカナブンに出会った。懐かしい思い出がよみがえった。

撮影 高尾山 7月 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月31日 (火)

オオモノサシトンボ  3種類目の絶滅危惧種

名前 オオモノサシトンボ(大物差蜻蛉)
分類 トンボ目イトトンボ科
生息地 マコモなどの多い池
私がであった場所 埼玉県・杉戸町

Edimg_0052

週末訪れる、自宅近くの遊水池。
これまでにオオセスジイトトンボとベニイトトンボという絶滅危惧種が発見されている場所だ。そこで今日、今まで見たことのない蜻蛉を目にした。
早速、写真を撮り、自宅で調べてみると、オオモノサシトンボ。
絶滅危惧種に登録されていた。

けっこう多くの場所に絶滅危惧といわれている生き物が生息しているのかもしれない。見る目さえあれば、そのような生き物に出会えるのかもしれない。

撮影 平成19年7月 杉戸町 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月13日 (金)

ハッチョウトンボ  日本一小さい蜻蛉

名前 ハッチョウトンボ
分類 トンボ科
出現期 5月~10月
生息地 丘陵地の湿地
私が出会った場所 群馬県・尾瀬ヶ原、福島県・宮床湿原 

Edpict0037

ハッチョウトンボは日本一小さな蜻蛉である。その大きさはわずか2㎝。写真はその小ささを正確には表現してくれない。この蜻蛉が見られる場所は、少なくはないのに、地域での天然記念物になっていたりする。それは日本一の小ささによるのだろうか。まあ、この愛らしい蜻蛉が保護されるということはよいことだ。この時期、福島県の宮床湿原ではたくさんのハッチョウトンボを見ることができる。この写真は二年前、宮床湿原を訪れたときに撮ったもの。きっと今年もハッチョウトンボを楽しむことができることだろう。

撮影 2005年6月末 宮床湿原

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月11日 (水)

ジャコウアゲハ  番町皿屋敷との関係

名前 ジャコウアゲハ(麝香揚羽)
分類 アゲハチョウ科
出現期 私が住む埼玉県では5月~9月
生息地 草地から深い森林まで
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町 東京都・高尾山 その他 

Img_4877

Img_5668

 ジャコウアゲハという蝶がいる。そう簡単には見ることができなくなってしまった蝶ではあるが、私が働いている久喜市では今も見ることができる。ウマノスズクサという毒草を食草とするため体内に毒を持ち、鳥におそわれるのが少ない蝶である。その姿から山女郎という妖しい名でも呼ばれる。

 妖しい名前がついているのは成蝶だけではない。この蝶のさなぎは「お菊虫」と呼ばれている。この名前はお菊さんが「一枚、二枚……」と皿を数えるシーンで有名な、「番町皿屋敷」の伝説に由来している。「番町皿屋敷」の主人公であるお菊が、無実の罪で手打ちにされた際、後ろ手にしばられた姿に似ていることによるのだという。

Edimg_3914

ジャコウアゲハのさなぎが番町皿屋敷とつながっている、私はこの関係をすてきだと思う。

撮影 
蝶   平成19年7月  久喜市(一枚目♂、二枚目♀)
さなぎ 平成19年3月  久喜市

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 9日 (月)

クロイトトンボ トンボに食べられるトンボ

名前 クロイトトンボ(黒糸蜻蛉)
分類 イトトンボ科
出現期 4月~10月
生育地 平地や丘陵地の池・沼など
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、栃木県・三毳山にある池

Edimg_9600_1

 自宅近くの蜻蛉の池で、一番個体数の多いのがこのクロイトトンボ。
この池で一番小さな蜻蛉でもある。

 今日は絶滅危惧種のベニイトトンボに食べられている、クロイトトンボに出会った。
蜻蛉が蜻蛉を食べる生態系。自然とは恐ろしい場でもあり、その恐ろしさに向き合うことなしで自然の本当のすばらしさを感じることはできないのだとも思う。

Edimg_9423

撮影 平成19年7月

上  杉戸町
下  杉戸町  (クロイトトンボを食べるベニイトトンボ♀)

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 5日 (木)

ベニシジミ 肩にベニシジミがとまっているぞ

名前 ベニシジミ(紅蜆)
分類 シジミチョウ科
出現期 3月下旬~11月
食草 スイバ、ギシギシなど
生息地 平地から亜高山帯
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町、春日部市 他 日本各地で出会っている

Edimg_9432

Img_4203

ベニシジミは身近な蝶。そして美しい蝶。
野田秀樹に『野獣降臨(のけものきたりて)』という劇がある。
その劇のオープニングで「肩にベニシジミがとまっているぞ」
という台詞があった。場面が一気に転換する、そのきっかけになる台詞だった。
演劇が好きで自然が好きでベニシジミが好きだった私には、その台詞が鮮烈な光に感じられた。

演劇とベニシジミ、私の中ではつながっている。

撮影
上 平成19年7月  杉戸町
下 平成20年4月  大山 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 2日 (月)

チョウトンボ (蝶蜻蛉) 夢幻の世界

名前 チョウトンボ(蝶蜻蛉)
分類 トンボ目トンボ科
生息地 平地の湖沼
私がであった場所 埼玉県春日部市のかしま池(絶滅)、杉戸町

Edimg_9327

夢を見ているようだった。何十ものチョウトンボが羽根を休めていた。
日が沈むまで、ずっとずっと見ていた。
Edimg_9320

Edimg_9493_1

 私は子どもの時トンボ少年でもあった。近くにあったかしま池と呼ばれる池にトンボを捕りに行のが好きだった。かしま池はトンボに溢れていた。

 そのトンボの宝庫であるかしま池はある時突然埋め立てられ、チョウトンボも池とともに消えていった。かしま池は私の心に存在する幻の池となった。

 私が住んでいる町で、久しく出会うことのなかったチョウトンボに再び出会うことができた。この池がかしま池と同じ運命をたどらないことを願う。

  撮影 埼玉県杉戸町 平成19年6月30日(土)

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月25日 (月)

ハグロトンボ 戻ってきた自然

名前 ハグロトンボ(羽黒蜻蛉)
分類 トンボ目カワトンボ科
生息地 未成熟個体 水辺の林などの暗い場所 成熟個体 明るい水辺
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、小川町、高知県・四万十市 他

Img_0216

Img_1030

Edimg_9054

 トンボ少年だった私は、親戚の家を訪れたとき初めてこのトンボに出会った。私はその時の感動を今でも覚えている。漆黒の羽根、メタリックな輝きを持つ胴体、ひらひらと舞う飛び方。どれも私の地元にいるトンボとは違っていた。それは図鑑の中のハグロトンボが命を与えられ、私の中で羽ばたいた瞬間だった。

 昭和60年に出版された杉村光俊 著『トンボ王国』のに、ハグロトンボは次のように説明されている。

以前なら、平地の小川に行けばいくらでも見られたハグロトンボだが、今では、かなり山間部でないとお目にかかれない。

確かに、私の住んでいる地域でもかつてハグロトンボが姿を消したことがあった。ハグロトンボがみつかったことが新聞の記事になったことがあるくらいだ。しかし、最近このトンボを目にすることが多くなった。少なくとも私が働いている埼玉県久喜市ではハグロトンボを普通に見ることができる場所が存在する。今日もたくさんのハグロトンボに出会った。環境は悪い方向に向かってだけいるわけではない。それをハグロトンボは証明してくれている。自然破壊を嘆くことも大切だと思うが、自然が戻ってきたことを素直な心で見つめ、それを喜ぶことも大切にしたい。

撮影 上から

 埼玉県 小川町
 高知県 四万十市
 埼玉県 久喜市(未成熟な個体)

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年6月15日 (金)

コガネムシ(黄金虫)

名前 コガネムシ(黄金虫)
分類 コガネムシ科
出現期 6月~7月
生息地 公園、草原など
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町

Edimg_8238

スミレという名のスミレは種として存在する。しかし、タンポポという名のタンポポは種として存在しない。カントウタンポポ、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポとタンポポの前にまくらがつく。
ツバメという名のツバメは種として存在する。しかし、サギという種のサギはいない。コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アマサギとサギの前にまくらがつく。
それではコガネムシという名のコガネムシは種として存在するか。
答えはYes。写真の虫がコガネムシ。

野口雨情と中山晋平が創った童謡に「黄金虫」がある。

  黄金虫は金持ちだ♪

この黄金虫はチャバネゴキブリだという説があるそうだ。
説得力のある理由も添えられたりもしているが、私はそうは思いたくない。
「黄金虫」の歌は、この光り輝くコガネムシにぴったりだと思うからだ。
チャバネゴキブリには申し訳ないが、ゴキブリでは詩人の色彩に対しての感覚が疑われる。

撮影 平成19年6月  杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月12日 (火)

ベニイトトンボ  絶滅危惧種が身近に

名前 ベニイトトンボ(紅糸蜻蛉)
分類 イトトンボ科
出現期 5月~10月
生息地 平地や丘陵地の湖沼
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町

Edimg_8286

Edimg_9585

環境省のレッドデータブックでVUにランクされている絶滅危惧種のベニイトトンボの♂をみつけた。めったに出会えないトンボであることがわかっているだけに、撮影するとき手が震えた。

しかし、こんな美しいトンボが自宅の近くにいるなんて。埼玉県杉戸町、ゆたかな自然がまだまだ残っている。

撮影 平成19年6月9日(土) 杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月10日 (日)

ムスジイトトンボ 同定の難しい青いイトトンボ その2

名前 ムスジイトトンボ(六筋糸蜻蛉)
分類 イトトンボ科
出現期 5月~10月
生息地 平地の湖沼
私が出会った場所  埼玉県・杉戸町

Edimg_8331

昨日のブログにオオイトトンボと誤認していたトンボがいた事実を書いた。その誤認を認識するきっかけとなったのが、昨日撮影した中に写っていた上に掲載したトンボの写真。ムスジイトトンボの♀のようである。胸にある六つの黒い筋からこの名前がついたようだ。

私がトンボを見るために通っている池にこのトンボの♀がいるなら♂もいるはずだ。そしてもしかしたら今まで撮った写真の中に♂が写っているかもしれない。そう思って、昨年撮った写真を調べてみると、いたいた。昨年オオイトトンボと考えていたトンボの中にムスジイトトンボの♂を見つけることができた。

Edimg_6713

このトンボが昨年オオイトトンボと思っていたムスジイトトンボの♂。

撮影(上) 平成19年6月9日(土) 杉戸町
撮影(下) 平成18年8月 杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 9日 (土)

セスジイトトンボ 同定の難しい青いイトトンボ その1

名前 セスジイトトンボ(背筋糸蜻蛉)
分類 トンボ目イトトンボ科
生息地 平地の池沼
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町

Edimg_9367

私の町もトンボの季節を迎えたようだ。
数種類のトンボを見ることができた。

セスジイトトンボの仲間を見分けるのは難しい。私は昨年見たこのトンボをオオイトトンボだと思っていた。今日見直してみると、オオイトトンボと思っていたものは、セスジイトトンボとムスジイトトンボであることがわかった。

Edimg_6726

 昨年の8月に撮影したセスジイトトンボの交尾。この時点ではオオイトトンボだと思っていた。

撮影 平成19年6月2日  杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 8日 (金)

ヨツボシトンボ トンボは歩くことができない

名前 ヨツボシトンボ
分類 トンボ科
出現期 4月~9月
生育地 平地から丘陵地の池沼
私が出会った場所 栃木県・三毳山

Edimg_7645_1

ヨツボシトンボ。初めて見た。
見たことはあるのかもしれない。けど認識していないのは見ていないのと同じ。
昨年の夏から、トンボに興味を持ち、たくさんのトンボに出会ってきたので、このトンボとの出会いを認識できた。初めての出会いは、うれしい。

 さて、以前から興味を持っていたトンボであったが、最近再び興味を持つようになった。そして今から20年近く前に買った『トンボ王国』(杉村光俊 著 新潮文庫)を本棚の奥から取り出し、熟読した。そして、驚きの文章に出会った。

  「トンボの肢はつかまるためのもので、歩くことはできない」

 確かに今までトンボが歩いているところに出会ったことはない。とんぼ返りまでできる飛行術の天才であるトンボが歩くことができないなんて…。というより飛行術の天才だからこそ歩く必要がないのであろう。
 身近な自然も、知らないことだらけであるという事実を突きつけられた気がした。
   「トンボは歩くことができない」
 私は今、とんでもなくすごい知識に出会った満足感でいっぱいだ。

撮影 平成19年5月27日 (日)

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 6日 (水)

ショウジョウトンボ トンボの季節到来

名前 ショウジョウトンボ(猩猩蜻蛉)
分類 トンボ科
生息地 平地や丘陵地の湖沼
私が出会った場所 埼玉県・久喜市 栃木県・三毳山

Edimg_7651

大好きなトンボの季節がやってきた。
三毳山にある池ではたくさんのトンボが飛んでいた。
ショウジョウトンボも飛んでいた。ショウジョウトンボは、猩々蜻蛉。猩々は中国の架空の怪物で赤い顔をし、人の言葉を理解し、酒を好むという。その赤い髪に見立てて名前がつけられたそうだ。
水辺にその赤が映える。
この池にいるトンボでどうしても種を特定できないものがいた。下の写真のトンボがそれ。

Edimg_7644

今日ようやくこのトンボの正体がわかった。ショウジョウトンボの未成熟の雌。
もやもやが解消した。

撮影 平成19年5月27日(日) 三毳山

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 5日 (火)

ウスバシロチョウ 空を舞う美しい和紙

名前 ウスバシロチョウ(薄羽白蝶)
分類 アゲハチョウ科
出現期 年1回4月下旬~5月
幼虫の食草 ケシ科のムラサキケマン、ジロボウエンゴサク
生息地 林の周辺
私のであった場所 東京都・高尾山(5月初旬)、新潟県・奥胎内(5月下旬) 、松之山温泉(5月中旬)

Edimg_7952

Img_5572

 ウスバシロチョウは空飛ぶ和紙といった形容がふさわしい蝶だ。一年のうち春のほんの短い間見られるスプリング・エフェメラル(春のはかない命)である。この蝶は氷河期の生き残りでもあるようだ。

 この蝶の食草はムラサキケマン。しかし、成蝶はムラサキケマンには産卵せず、近くにある木の下枝などに産卵する。そして卵のまま越冬して翌年、卵からかえる。小さな卵のまま、一年近くを過ごすということが驚きである。

 ウスバシロチョウは、シロチョウという名前からモンシロチョウの仲間だと思う人が多くいるようだ。しかし、ウスバシロチョウはアゲハチョウ科に属する。シロチョウ科ではないので,ウスバシロチョウという名前は適切ではないことから、ウスバアゲハに名前を変えようとする動きがあったようだ。
 ウスバアゲハという響きは悪くはない。しかし、名前を変えることでまた違った混乱を呼ぶこともある。私は、ウスバシロチョウはウスバシロチョウのままでよいと思う。 

撮影 
上 平成19年6月3日(日) 新潟県奥胎内
下 平成20年5月18日(日) 東京都高尾山

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 2日 (土)

サカハチチョウ 覚えやすいネーミング

名前 サカハチチョウ(逆八蝶)
分類 タテハチョウ科
出現期 年2回発生 4月~6月上旬 7月~8月
生育地 平地から山地の樹林
私が出会った場所 東京都・高尾山、福島県・背戸峨廊、 新潟県・奥胎内 他

Edimg_7769

サカハチチョウ。八を逆さまにした形が羽に描かれているのでそう呼ばれている。
このネーミング、よいと思う。以前この蝶にはじめて出会ったとき、すぐそれとわかった。
この時期、山に行くとよく見かける。

撮影 6月2日(土) 新潟奥胎内

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月15日 (日)

ルリタテハ 青の魔力

名前 ルリタテハ(瑠璃蛺)
分類 タテハチョウ科
食草 サルトリイバラ 
生息地 市街地から山地
私が出会った場所 埼玉県・春日部市(内牧サイクリングロード)、杉戸町、久喜市、栃木県・三毳山、東京都・高尾山

Edimg_5241

「かなりあ」などの童謡で有名な西条八十に「蝶」という詩がある。

蝶  西条八十

やがて地獄へ下るとき、
そこに待つ父母や
友人に私は何を持つて行かう。

たぶん私は懐から
青白め(あおざめ)、破れた
蝶の死骸をとり出すだらう。
そうして渡しながら言ふだらう。

一生を
子供のやうに、さみしく
これを追つてゐました、と。

 青ざめ破れた蝶とははどんな蝶だろう。青ざめた蝶であるのだから、それは青い蝶であるとは限らない。しかし、この詩を読んだ時、私の頭にはルリタテハの姿が浮かんでいた。子どもの頃、ルリタテハはあこがれの蝶だった。ルリタテハに初めてあったのは小学生の時だった。息をのむという瞬間が、小学生の自分にあったことを覚えている。

 西条八十の「蝶」という詩は、好きな詩ではない。私は生きた蝶を取り出したい。そして「子供のように楽しくこれを追っていました」と言いそうな気がする。だからこそ、私は詩人になりきれないのであるが…

 ルリタテハは成虫で越冬する。冬枯れの風景の中、この蝶の青は鮮烈だ。私はルリタテハから青の魅力、いや、青の魔力を感じる。

撮影 平成19年4月 三毳山

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月25日 (水)

ナツアカネ(夏茜) 泉鏡花の描いた赤蜻蛉

名前 ナツアカネ(夏茜)
分類 トンボ科
出現期 6月~12月
生息地 平地から低山の湖沼
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、宮代町 他 日本各地の多くの場所で

Img_80861

あれあれ見たか、
    あれ見たか。
二つ蜻蛉が草の葉に、
かやつり草に宿をかり、
人目しのぶと思えども、
羽はうすものかくされぬ、
すきや明石に緋ぢりめん、
肌のしろさも浅ましや、
白い絹地の赤蜻蛉。
雪にもみじとあざむけど、
世間稲妻、目が光る。  
あれあれ見たか、
    あれ見たか。

                  泉鏡花『縷紅新草』

『縷紅新草』は泉鏡花の遺作である。その小説の冒頭に描き出された赤蜻蛉の美しさ。鏡花が描いた赤い蜻蛉にもっともふさわしいのは顔まで赤く染まるナツアカネではないだろうか。

撮影 平成18年10月 埼玉県杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月22日 (金)

エルタテハ  エルとは何か?

名前 エルタテハ
分類 タテハチョウ科
出現期 7月~9月 成虫で越冬
生息地 山地の樹林周辺
私が出会った場所 長野県・志賀高原、福島県・姥湯温泉

Img_44301jpg

この蝶の名前はエルタテハ、不思議な名前である。エル=Lとは何か。 その答えは下の写真にある。

Img_44261

羽の後ろにある模様の真ん中にある小さなLの模様が分かるだろうか。さてこの蝶、いつ頃からエルタテハと呼ばれるようになったのだろう。

平成18年8月12日 志賀高原にて

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月21日 (木)

キオビベッコウ  あまりに違う雄と雌

名前 キオビベッコウ
分類 膜翅目ベッコウバチ科
出現期 7月~9月
生息地 平地
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町

Img_28821jpg_1

2種類の蜂が戦っているのだと思った。戦っていたという判断は正しかったと思う。しかし戦っていたのは2種類の蜂ではなくキオビベッコウの雄と雌だった。この雄と雌、長い間、別の種類と考えられていたようである。これだけ姿形が違えば違う種類と捉えられるのは当然だろう。なぜこんなに違った雄と雌が互いを認識しあえるのか。不思議だ。
この蜂と比べたら、人間の男と女は似ている。

ちなみに、このベッコウバチは昆虫にとって危険きわまりない蜘蛛を狩る蜂である。「ファーブル昆虫記」にはこのベッコウバチについての観察記録が紹介されている。

  平成18年 埼玉県杉戸町にて

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月15日 (金)

ウスバキトンボ 素朴な疑問

名前 ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)
分類 トンボ科
出現期 4月~11月
生息地 平地や丘陵地の池、沼、水田
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町

Img_68031

ウスバキトンボは東南アジアの熱帯地方から海を渡って日本にやってくるトンボだそうだ。
日本で世代交代を繰り返し、北海道やカムチャッカまで北上するが、寒さに弱いため本州より北では全滅するという。「トンボ王国」( 杉村光俊・著 新潮文庫)、「トンボのすべて」( とんぼ出版)、「ヤマケイポケットガイト水辺の昆虫」( 今森光彦・著 山と渓谷社)等の本の紹介では、いずれも北へ北へと飛んでいくことが紹介されていてはいるが、途中で引き返すという記載は一切無い。それどころか、 越冬して生き残ったものは翌年また南に向かうという記述もある。同じ昆虫でもアサギマダラやオオカバマダラなどの蝶は、北に向かった後、故郷に向かって引き返す世代の蝶が生まれるのにこれはどういうことだろう。

すべてのウスバキトンボがただ北にだけ向かう本能を持っているとすると、ウスバキトンボはすぐに絶滅してしまうことになる。しかし、こんな素朴な疑問に答えてくれる本は今のところ存在しない。お盆の頃空を埋め尽くすほどに飛ぶことから精霊(ショウリョウ )蜻蛉とも呼ばれているようだが、私はその特徴が精霊のようだと感じる。
ウスバキトンボは謎である。

 平成18年9月10日(日) 杉戸町にて撮影

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月10日 (日)

ツマグロヒョウモン 温暖化の証拠

名前 ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)
分類 タテハチョウ科
出現期 4月~11月
生息地 平地の草原など
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、東京都・高尾山、千葉県・流山市 など

Img_81981

Img_66681

 自宅近くでツマグロヒョウモンを見つけた。自宅近くでこの蝶を見るのは初めて。初めてこの蝶を認識したのは、屋久島の縄文杉を見に出かけたときのこと。林道でこの蝶に出会った。その時は、南の蝶に出会ったという印象であった。
 1985年に発行された「生物大図鑑昆虫Ⅰ」のツマグロヒョウモンの生息地の説明には「本州(中部以西)」と記されている。1999年に発行された「ヤマケイポケットガイド・チョウ・ガ」では「本州(三重県以西)」となっている。
 実は、ツマグロヒョウモンは温暖化に伴い生息域を北に広げている蝶なのである。

 自宅近くでこの美しい蝶に出会えるということはうれしいことでもあるのだが…、手放しでは喜べない複雑な気分である…。

※平成19年、ツマグロヒョウモンは埼玉県東部で、秋に最も普通に見られる蝶となっている。

撮影 平成18年9月9日(土)  埼玉県杉戸町(上♀ 下♂)

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月 4日 (月)

アキアカネ  空いっぱいの赤とんぼ

名前 アキアカネ(秋茜)
分類 トンボ科
生息地  平地から低山の池・沼・水田 
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町 他さまざまな場所で

Img_55651

 夏、山で数え切れないほどの赤とんぼを見た。尾瀬も志賀高原も日光も吾妻連峰も、赤とんぼでいっぱいだった。

 その多くはアキアカネ。アキアカネは活動によって体温が気温より10℃から15℃高まるため暑さの厳しい平地では生きていけないらしい。そのため避暑のため山に移動する。そして秋になると赤く成熟してまた平地に戻ってくる。

 「赤蜻蛉」という有名な曲がある。作詞 ・ 三木露風、作曲・ 山田耕筰の名曲である。  その1番と4番で赤とんぼが歌われる。

 1 夕焼小焼の、赤とんぼ
    負われて見たのは、いつの日か

 4 夕焼小焼の、赤とんぼ
    とまっているよ、竿の先

「夕焼け小焼けの赤とんぼ」のフレーズで連想されるのは、アキアカネである。

Img_7847

空を見上げた。空は赤とんぼでいっぱいだった。

    蜻蛉   島木赤彦

お庭が寒く
なつたのか
蜻蛉が揃つて
空をとぶ

夕日が空に
のこるのか
光は蜻蛉の
羽ばかり

Img_74401

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月 3日 (日)

ミヤマカラスアゲハ (深山烏揚羽) 飛ぶ宝石

名前 ミヤマカラスアゲハ(深山烏揚羽)
分類 アゲハチョウ科
生息地 山地の樹林帯
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・奥鬼怒(手白沢温泉)

Img_57821_1

飛ぶ宝石。そんな形容が似合う蝶。
手白沢温泉の庭でみつけた。

「ヤマケイポケットガイド⑨チョウ・ガ」の著者、松本克臣さんは森の中で見るその姿を、「宇宙的」と表現している。メタリックな輝きを持つこの蝶に、ふさわしい形容だと思う。

撮影 2006年8月19日(土) 手白沢温泉

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月 2日 (土)

キゴシジガバチ (黄腰似我蜂)  謎に満ちたハチ

名前 キゴシジガバチ(黄腰似我蜂)
分類 膜翅目アナバチ科
出現の時期 7月~9月
生息地 平地
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町(いずれも道ばた)

Img_53851_1

Img_8312

 NHKの「迷宮美術館」でキリコの特集が放送された際、キリコが敬愛したニーチェの「謎以外に、一体なにを愛せようか」という言葉が紹介された。
その言葉に触れたとき、ある蜂の姿が脳裏に浮かんだ。その蜂の名前はキゴシジガバチ。

 この蜂の黄色く彩られた腰を見るたび「謎」という言葉が空間を漂う。
どうして生きていられるのだろう。生命を維持していくためにはこの蜂の黄色い腰は細すぎるように思える。

 更に謎は続く。ジガバチの仲間はこれから生まれてくる子どものために狩りをする。この蜂の獲物はクモである。このひ弱そうな体のどこにクモを狩る知恵と力が隠されているというのだろうか。

 キゴシジガバチは「謎」である。謎以外に愛するものはないとまでは言わないが、キゴシジガバチの「謎」は愛すべきものである。

 撮影2006年8月16日 埼玉県杉戸町の公園

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月30日 (水)

キアゲハ 「少年の日の思い出」

名前 キアゲハ(黄揚羽)
分類 アゲハチョウ科
生息地 海岸付近の平地から3000メートルの高山帯まで
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町・春日部市、長野県・志賀高原、東京都・高尾山 他多数

Img_46961Img_47231

ヘルマン・ヘッセに「少年の日の思い出」という小品がある。私は中学時代、国語の教科書でこの作品に出会った。国語の教科書に載っていた作品で今でも心に残っているものはあるかと尋ねられたら、ためらうことなくこの作品の名を挙げる。

 今でも、美しいちょうを見ると、おりおり、あの熱情が身にしみて感じられる。そういう場合、僕はしばしの間、子供だけが感じることのできる、あのなんともいえない、むさぼるような、うっとりした感じに襲われる。少年のころ、初めてキアゲハにしのび寄った、あのとき味わった気持ちだ。また、そういう場合、僕は、すぐに幼い日の無数の瞬間を思い浮かべるのだ。強くにおう、乾いた荒野の、焼けつくような昼下がり、庭の中の涼しい朝、神秘的な森の外れの夕方、僕は、まるで宝を探す人のように、網を持って待ちぶせていたものだ。そして、美しいちょうを見つけると、特別に珍しいのでなくったってかまわない、ひなたの花に止まって、色のついた羽を呼吸とともに上げ下げしているのを見つけると、とらえる喜びに息もつまりそうになり、次第にしのび寄って、輝いている色のはん点の一つ一つ、透き通った羽の脈の一つ一つ、触角の細いとび色の毛の一つ一つが見えてくると、その緊張と歓喜ときたらなかった。そうした微妙な喜びと、激しい欲望との入り交じった気持ちは、その後、そう度々感じたことはなかった。 (ヘルマン・ヘッセ 「少年の日の思い出」冒頭)

 キアゲハは自宅近くでもよくみかける蝶だが、写真に撮ることがなかなかできなかった。そんなキアゲハに志賀高原のお花畑で出会った。息を殺してキアゲハに忍び寄りシャッターを切るときの気持ちは、ヘッセが描く小説世界とつながる。

 キアゲハは世界的に分布しているチョウで、その分布の広がりは北アフリカから、ヨーロッパ、アジアと続き日本に達している。英語にswallowtail(スワローテイル)という単語がある。燕の尾を表すこの単語は英和辞典で調べるとアゲハチョウという意味もあることがわかる。ただ、日本で最も普通に見られるアゲハ(別名・ナミアゲハ)ではないようだ。ナミアゲハは、日本では最も普通に見られるアゲハチョウだが、世界的には極東にしか分布していないようである。英語のswallowtail(スワローテイル)はキアゲハのことを指すようだ。スワロウテイル、なんともおしゃれな名前ではないか。

  撮影 平成18年8月13日 志賀高原

◆関連記事 コムラサキ 少年の日の思い出

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月16日 (水)

オオセスジイトトンボ 42年前の確認を確認

名前 オオセスジイトトンボ(大背筋糸蜻蛉)
分類 トンボ目イトトンボ科
生息地 マモコなどの多い湖沼
私がであった場所 埼玉県・杉戸町

Edimg_9525

Edimg_8339

 平成18年8月13日(日)の読売新聞朝刊に「オオセスジイトトンボ 42年ぶり確認 杉戸で5歳が捕まえる」という記事が載っていた。オオセスジイトトンボは埼玉では42年間発見されていなかったのだそうだ。町立図書館主催の自然観察会で講師として招かれた日本蜻蛉学会の方が、5歳の男の子が捕らえたトンボをオオセスジイトトンボと確認したのだという。そしてその方こそ42年前の1964年にこのトンボを採取した本人であった。

 さて杉戸町というのは私が住んでいる町だ。県立図書館は車で10分ほどの場所にある。新聞に発見された場所は書かれていないが、きっとこのあたりであろうという当たりをつけた場所にでかけた(今日は私にとって夏休み3日目)。42年間発見されなかったトンボであるから、発見するには大変な苦労が待ちかまえているかもしれないと思ったが、予想した場所に着いてすぐ目的のトンボが目の前に現れた(上の写真がオス、下の写真がメス)。

 ちなみにこのオオセスジイトトンボは環境省のレッドデータブックで絶滅の可能性が極めて高い「絶滅危惧種Ⅰ類」に分類されている。自宅近くにこのような自然があるということに、少し誇らしい気持ちになった。

Img_51101

私は珍しい生き物ばかり追っているわけではないが、オオセスジイトトンボのおかげでトンボの世界のすばらしさに再び出会うことができた。そう、私は42年前トンボ少年だった。そしてこのトンボは私をトンボ少年に戻してくれた。
少年が「好奇心に満ちあふれている人」という意味で使われるならば、私は今でも少年である。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 2日 (日)

ノシメトンボ  蜻蛉釣り今日はどこまで

名前 ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉)
分類 トンボ目トンボ科
発生時期 5月~11月
生息地 平地、丘陵地の池、沼、水田
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町 その他

Img_22301_1

私の住んでいる埼玉県杉戸町では最も普通に見られる蜻蛉である。
私は子どもの頃、蜻蛉釣りが好きだった。近くの池によくとんぼ釣りに出かけた。

蜻蛉釣り今日はどこまで行つたやら  加賀の千代女

加賀の千代女が、わが子を亡くした後詠んだ句だそうだ。子を亡くした悲しみを抑制のきいた文章で表現する彼女の歌は、静かにそして深く私の心を打つ。

とんぼ捕ろ捕ろその児のむれにわが児なし 山頭火

とんぼ捕り(とんぼ釣り)、懐かしくもあり寂しくもある。

Img_9069

Img_78401

蜻蛉(とんぼう)の羽に輝く夕日かな 正岡子規

撮影 埼玉県・久喜市、宮代町、杉戸町

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

続きを読む "ノシメトンボ  蜻蛉釣り今日はどこまで"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月21日 (水)

スジグロシロチョウ 昆虫図鑑の思い出

名前 スジグロシロチョウ(筋黒白蝶)
分類 シロチョウ科
食草 アブラナ科タネツケバナ、イヌガラシなど
出現期 3月~10月
生息地 平地の雑木林周辺、市街地
私が出会った場所  埼玉県・杉戸町、久喜市、宮代町 他 日本の各地で出会っている

Img_1695

幼稚園の頃だったろうか。病弱だった私に父が一冊の本を買ってくれた。
それは小学館の学習図鑑シリーズの一つ『昆虫の図鑑』。
その図鑑は今は手元にはない。しかし、表紙の写真の記憶は今も失われていない。
それはスジグロシロチョウがアザミの花にとまっている写真だった。

蝶が好きだったから買ってくれたのか、あの図鑑が私を蝶好きにしたのか、その記憶は定かではないが、あの図鑑が私の人間形成に多大な影響を与えたことだけは間違いない。

小学1年のとき年間69日も休んでしまい勉強が遅れがちだった私に、両親は「もっと勉強しなさい」などとは言わなかった。両親は私が草原や林で蝶を追うことを黙って見守ってくれた。今の私はそのことを感謝している。その後、私は次第次第に丈夫になり、中学・高校と皆勤賞を手にすることとなる。

スジグロシロチョウはどこにでもいる普通の蝶。しかし私にとって、スジグロシロチョウとの出会いは、いつもいつも心にとめきめをもたらす出来事だ。
スジグロシロチョウとは数え切れない出会いをしてきた。しかしその出会いは、私を懐かしい空気で満たしてくれる。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 7日 (水)

カゲロウ 儚さに出会う旅

名前 ①フタスジモンカゲロウ(二筋紋陽炎) ②クロマダラカゲロウ(黒斑陽炎)
分類 カゲロウ目
出現期 6月~9月
生息地 河川の上流
私が出会った場所 塩原渓谷遊歩道

Img_07821

儚さに出会うため塩原の箒川を訪れた。

夜の腕にかげろふ触れし梅雨入かな 石田波郷

上・フタスジモンカゲロウ  下・クロマダラカゲロウ
       6月5日  塩原・福渡温泉にて

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

Img_08241

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 6日 (火)

エゾハルゼミ 『君の手がささやいている』が頭に浮かぶ

名前 エゾハルゼミ
分類 セミ科
生息地 本州では山地の広葉樹
私が出会った場所 栃木県・那須山麓、日光戦場ヶ原

Img_08611_2

Img_0873_2

6月5日(月) 体育祭の振替休。日光・戦場ヶ原に出掛けた。
戦場ヶ原ではエゾハルゼミの声が鳴り響いている。
この鳴き声なくして種の存続はありえない。
聴覚が種の存続の必要条件である。

総合的な学習の時間に聴覚障がいを扱ったドラマ『君の手がささやいている』をみた。
聴覚が失われた人が共に生きることができるノーマライゼーションに基づいた世界を模索している人間。私はそんな人間という生き物のことを素晴らしいと思う。

「悪い、悪い」といわれた人間が、発憤してよくなろうとすることは多くの人たちが考えているほど多くはない。「悪い」といわれることで悪さに磨きがかかる、悪くていいと開き直る、学校現場で多く見られることだ。私は人間のよさを見つめていきたい。日光・戦場ヶ原でエゾハルゼミの声に包まれ、そんなことを考えた。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 4日 (日)

カラスアゲハ 幻の森の思い出

名前 カラスアゲハ(烏揚羽)
分類 アゲハチョウ科
生息地 平地から亜高山帯まで
私が出会った場所と時期 埼玉県・春日部市(子どもの頃見た場所では絶滅)、東京都・高尾山(日影沢に多い 5月)、栃木県・奥鬼怒(手白沢温泉 8月) 、神奈川県・不老山(6月)

Img_02231_2

 昨日までの雨が上がり、絶好のハイキング日和となった。朝6時半に家を出て高尾山に出掛ける。今年2回目の高尾山だ。先日購入したデジタル一眼レフで高尾山の生きものたちを撮影できると思うと、胸が高鳴る。

 今回はケーブルカーを使い、まずは蝶が多いという日影沢に向かう。昨日の雨で水溜まりがたくさんできていた、そしてその水溜まりでたくさんのアゲハの仲間が給水している。オナガアゲハとクロアゲハが多い。その中に一頭カラスアゲハの姿があった。

 カラスアゲハは昆虫少年だった子ども時代を懐かしく思い出させてくれる蝶だ。私は近くにあった鎮守の森でこの蝶を追った。蝶が飾られた標本箱の中に一頭、緑の光沢を振りまいて存在したカラスアゲハ。あの一頭を捕まえたのは、自分だったのか、それとも父だったのか。記憶は定かではない。あの当時は昆虫採集が奨励されていた時代であり、私が夏休みの宿題で提出した標本は校内展、市内展を経て埼葛展という地区の展覧会で表彰された。

 その時を堺に、私は昆虫採集をやめる。蝶に針を刺すことにちくりと刺すような痛みを覚えたことによる決断だった。私は家で夏蜜柑の木や山椒を育て、それを食草とする蝶を育てるようになった。

カラスアゲハを追った森。その生き物が溢れていた鎮守の森は見る影もない痩せた森になってしまった。カラスアゲハの森 - それは、私の心の中に現れては消えていく幻の森である。

Img_7905ed

撮影  
上 高尾山 日影沢 5月21日(日)…本文に書いた日に撮影
下 湯ノ丸山 8月

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 2日 (金)

ラミーカミキリ 二人の私の顕在化

名前 ラミーカミキリ
分類 カミキリムシ科
出現期 5月~7月
生育地 平地
私が出会った場所 東京都・高尾山

Img_12401

  ラミーカミキリ。出会ったときすぐにその名前が浮かんだ。
その美しいボディー、日本の昆虫とは思えない名前、図鑑を眺め以前から見たいと思っていた甲虫だ。

  早速この虫について詳しく調べてみた。そして、この虫は江戸時代後期に中国から長崎にラミーという植物と共に侵入し、以後分布を広めている虫だということがわかった。
なかなか出会うことができない珍しい昆虫だと思っていたのだが、最近は都市部でも出会うことができるのだという。その事実を知ったとたん、私の中にある美しいという思いがしぼんでいくのが分かる。

  私の中に存在する二人の私が自己内対話を始める。
「お前の美しさの基準は、珍しいという事実に左右されるのか。珍しくなくとも美しいものは美しいのではないのか。珍しくないという事実を知ったことで、ラミーカミキリへの思いをしぼませてしまってよいのか」
「それはきれい事だ。人間は珍しいものを愛する、珍しいものに価値を感じる。お前もそんな人間の一人なのだ。もっと自分に素直になれ。お前が愛する芸術は、どこにでも転がっているものに価値を与えるか?与えないはずだ。そもそも美しさは絶対的存在ではない」
「もしかして、お前はこの虫が国外からやってきたということでその興味を失ったのではないか」
「それがどうしていけない」
「日本の国の生き物だけを愛するという考えは危険ではないか、その考えは人間にまで繋がるのではないか」
「人間と他の生き物は別だ」
「本当に別のことと考えてよいのか?帰化生物を排する考えは外国人差別と繋がりはしないのか」
「繋がらないと断言はできない。しかし、現在の日本は帰化生物であふれかえっている。このままでは日本固有のそれ故に世界に誇れる風景が失われてしまう。グローバル化というのは地球がどこでも同じような世界になることではないと私は考える、違いを超えてその違いを尊重すること(もちろんただ違うというだけではなく)、それがグローバル化だと思う。」
「それはきれい事だ。尊重できる違いとそうでない違いはどう見分けるのだ」
「…」

ラミーカミキリが二人の私を顕在化させる。二人の私、どちらも本当の私。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月 6日 (土)

ヒメギフチョウ 緑玉髄(クリソプレーズ)」の卵

名前 ヒメギフチョウ(姫岐阜蝶)
分類 アゲハチョウ科
生息地 ウスバサイシンの生育する林
私が出会った場所 白馬周辺

Exmg3004

ヒメギフチョウは数日前紹介したツマキチョウと同じスプリング・エフェメラル(春の束の間の命)の仲間である。 Dscf1391himegifujpg1

ウスバサイシンの葉にヒメギフチョウが産み落とした卵は宝石だ。私は澤口たまみがヒメギフチョウの卵の美しさについて書いていたことを思い出し、自宅に帰ってからその著『虫のささやき聞こえたよ』を読み返した。彼女はヒメギフチョウの卵との出会いを次のように記している。

◆「この美しさには、どこかで出会ったことがある」と感じた。それは、やはり春の山でいっせいに顔を出す、カラマツの新芽である。これを岩手の詩人.宮澤賢治は、その詩「小岩井農場」の中で「から松の緑玉髄(クリソプレーズ)」と表現している。緑玉髄とは石英の仲間の玉髄(キャセルセドニー)いう鉱物に、酸化ニッケルが含まれたもので、きれいな緑色をして飾り石に使われるという。いかにも、鉱石に詳しい宮澤賢治らしいたとえである。「これらのからまつの小さな芽をあつめ、わたくしの童話をかざりたい」とも言う、その表現を借りるならば、ヒメギフチョウの卵もまた、「緑玉髄」にほかならないのだった。
 “後に、私はヒメギフチョウの卵や、カラマツの新芽が持っていた美しさの正体を、知ることができた。そのヒントとなったのは、古代日本で卵のことを表した「かいこ」

という言葉である。「かいこ」とはとは、殻子あるいは貝子とも書き、殻を持ったものをさすが、折口信夫によれば、「成長する生命力をぴったりと内部に包んで、これを堅い殻で密封するもの」を意味するという。ヒメギフチョウの卵や、カラマツの新芽が持っていた美しさとは、その内に秘められた「これから成長しようとする生命力」だったに違いない。◆

※左写真・ウスバサイシンに産卵するヒメギフチョウ。ヒメギフチョウはまだ葉が開く前のウスバサンシンに産卵する。胴が短いために葉が開いてからでは産卵ができないらしい。

Dscf1393himegifujpg1_1

これから成長しようとする生命力が作り出す美しさ、素敵な発想だと思う。教師として大切にしたい言葉だ。

撮影 平成18年5月4日(木) 白馬周辺

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月 1日 (月)

ヒメツチハンミョウ 毒虫の正体とファーブルとの繋がり

名前 ヒメツチハンミョウ
分類 ツチハンミョウ科
生育地 山地
私が出会った場所 栃木県・那須

Dscn1713

前回紹介したハンミョウに毒虫という誤解を与えることになったのが、ツチハンミョウの仲間である。三斗小屋温泉に向かう途中、青い光沢のある美しい虫と出会った。初めての出会いだが、ツチハンミョウの仲間だということがわかった。卵を詰め込んでぱんぱんにはった胴と飛ぶことに関して役に立たない羽根がそう語っていた(家に帰ってから写真をもとに図鑑で調べたところ、これがヒメツチハンミョウであることがわかった)。

ツチハンミョウは愛読書・ファプル昆虫記の中でも取りあげられている昆虫で、その生活誌は不思議に満ちている。

以前マメハンミョウというこの仲間を自宅近くで見かけ、そのグロテスクさに嫌悪感を抱いたことがあった、しかし、その一生を知ることによって、嫌悪感は畏敬へと変わっていったことを記憶している。

まずこの虫の産む卵の数が尋常ではない。ファープル昆虫記にはこの虫の親戚が4000以上の卵を産むことが記されている。そして、その幼虫はアザミなどの花によじ登り、ハナバチのオスが蜜を吸いに来るのを待ち、蜜を吸いに来たところでハナバチの体から生えている毛にしがみつく。更にハナバチのオスとメスが出会うときに、この幼虫はオスからメスへと移動する、そしてハナバチが生まれてくる幼虫のえさとして用意した蜜の塊に卵を産み付けるときに、その卵の上に飛び移りまずはその卵を食べる。その1齢幼虫は卵を食べるのに適した形に外見が作られている。この1齢幼虫は卵の上から落ちてしまうと蜜に溺れて死んでしまう。そして卵を食べ終えるとこの幼虫は脱皮して2齢幼虫となる。これは1齢幼虫とは形が違い、蜜の上に浮いて蜜を食べるのにふさわしい形となっている。
この幼虫は次々と自分の形を変えていく不思議な変態を繰り返す。そしてファープルはそれを過変態と呼んだ。

人間はよく人間の道徳を他の生きものに当てはめることをする。ツチハンミョウのように他の生きものに寄生することをモラルを欠いたこととして表現することがある。
しかし、ファープルはそんなことはしない。ファープルは昆虫記に次のように書いている。

◆各自の種を維持しようと(生きものは)順次に追い剥ぎとなり追い剥がれとなり、順次に喰う奴となり、喰われる奴となる。自然が生物に強制しているこの宿命的な苛烈な闘争を思いめぐらすとき、重苦しい感情に交じって、各寄生昆虫が目的を達するのに使う手段に感心せずにはいられない。

この虫の仲間はカンタリジンという、微量でも人を死に至らしめることができる毒物を含んでいて或るものはそれを体から出すということを本で読んで知っていたため、近づいて写真をとるときに少し緊張感があった。

この虫との出会いが、私とファープル昆虫記の世界との結びつきを更に強めてくれたことは確かである。

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月30日 (日)

ハンミョウ(斑猫) 美しさから生じた誤解

名前 ハンミョウ (斑猫)
分類 ハンミョウ科
生息地 路上でよく見られる
私が出会った場所 千葉県・梅ヶ瀬渓谷(4月後半)、長崎県・対馬(5月初旬)

Dscf1223

 ハンミョウは漢字で書くと斑猫。背中に斑紋があり、仕草が猫に似ているからこの名前がつけられたという。英語ではtiger beetle、つまり虎のような甲虫という名前がつけられている。ハンミョウは狩りの名人で、体の大きな毛虫やバッタなどを狩る、その獰猛さからそう名付けられたという。獰猛さからだけ判断すると、英語の名前がこの虫にふさわしい気もする。

 ハンミョウは成虫だけでなく、幼虫も獰猛な狩人である。その狩人である幼虫を釣遊びがある。ハンミョウの幼虫は日当たりのよい庭や固い地面の道に小さな穴をあけて、獲物を待つ。そのハンミョウの巣穴に、細長い葉を差し込むとハンミョウの幼虫が餌だと勘違いしてかみつく、その時その葉を引き上げるとハンミョウの幼虫が釣れるというものだ。

 上の写真のように、ハンミョウは美しい虫だ。そして毒がないのに毒虫と間違えられている虫である。

 たしかに斑猫(はんみょう)という名の毒物は存在する。しかし、それはハンミョウではなくツチハンミョウから抽出される毒物である。ツチハンミョウが持つカンタリジンという物質は大変強い毒で30ミリグラムという極微量(数匹分)で人間を死に至らしめるという。

 ハンミョウは文学者にとっても魅力的な虫のようで、『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫)や『私設博物誌』(筒井康隆)でも紹介されている。奥本太三郎はNHKの人間大学で行った『虫の文学史』と題された講座の中でハンミョウを取り上げている。
3人ともハンミョウが毒虫と間違われていることに言及していることが面白い。

 泉鏡花に『龍潭譚』という小説がある。主人公の少年は美しい虫に刺されることで異界を彷徨うことになる。主人公を刺したその美しい虫の形容は次のようなものだ。

つくづく見れば羽蟻の形して、それよりもやゝ大なる、身はたゞ五彩の色を帯びて青みがちにかゞやきたる、うつくしさいはむ方なし。

 これはまさにハンミョウを描写したものである。ここでハンミョウは毒虫として扱われている。ただ『龍潭譚』はそんな間違いをはるかに越えた魅力ある作品であるのだが。

 梅ヶ瀬渓谷で久しぶりにこの虫に出会った。そして、この美しさそのものに毒があると感じた。

撮影 平成18年4月30日(日)梅ヶ瀬渓谷

 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月15日 (土)

ツマキチョウ 春の妖精(スプリング・エフェメラル)

名前 ツマキチョウ(褄黄蝶)
分類 シロチョウ科
生息地・時期 平地から山地 3月下旬~5月
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、蓮田市(4月) 他

Dscf0809ed

スプリング・エフェメラルという響きのよい言葉がある。Spring ephemeral=「春のはかない命」という意味だという(英和辞典を引くとehpemeralは昆虫や花が一日しか生きないことを表す形容詞である)。

 写真のツマキチョウは里山で見ることができるスプリング・エフェメラルの代表選手として挙げることができる。私はこの蝶が大好きで、昨年はこの蝶の写真を撮りに何度も隣町の森に出掛けた。しかし、飛翔が速く、満足する写真を撮ることができなかった。そして、スプリング・エフェメラルはその姿を消してしまった。

 待つこと1年。ツマキチョウが私の目の前で羽をひろげてとまってくれた。まるでどうぞ私をお撮りくださいとでもいうように。緊張した、「飛ぶなよ」と願って何度も何度もシャッターを押した。子どもの頃、虫取り編みを持って蝶と対峙したときの気持ちが蘇った。

撮影 4月15日(日) 蓮田黒浜沼

 

◆生きものがたり図鑑目次  ○分類別(名前の順)  ○投稿順

◆ホームページ→幻の森

| | コメント (0) | トラックバック (0)