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2008年6月 6日 (金)

ニワハンミョウ 現代文学「砂の女」に描かれた虫

名前 ニワハンミョウ(庭斑猫)
分類 ハンミョウ科
出現期 5月~9月
生息地 平地から山地の地面
私が出会った場所 神奈川県・不老山(6月初旬)

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 ニワハンミョウは肉食昆虫ハンミョウの仲間。実は、以前からずっとニワハンミョウに会いたいと思っていた。それは、大学の時夢中になって読んだ安部公房の『砂の女』にこの昆虫が登場するからだ。私は、大学時代この小説に圧倒された。そして一時期、安部公房に夢中になった。

 安部公房は現代文学の世界的作家である。その代表作『砂の女』は読売文学賞のほか、フランスで最優秀外国文学賞を受賞している。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂に埋もれていく一軒家に閉じこめられる物語だ。新潮文庫の解説でドナルド・キーンはこの物語を、20世紀文学の古典と表現している。

その導入部で主人公とニワハンミョウの関係が語られる。

砂地にすむ昆虫の採集が、男の目的だったのである。
けろん、砂地の虫は、形も小さく、地味である。だが、一人前の採集マニアともなれば、蝶やトンボなどに、目をくれたりするものでない。彼等マニア連中がねらっているのは、自分の標本箱を派手にかざることでもなければ、分類学的関心でもなく、またむろん漢方薬の原料さがしでもない。昆虫採集には、もっと素朴で、直接的なよろこびがあるのだ。新種の発見というやつである。

ある日、家の近くの河原で鞘翅目ハンミョウ属の、ニワハンミョウに似た、小っぽけな薄桃色の虫を見つけたのだ。むろんニワハンミョウに、色や模様の変わりものが多いことは、周知の事実である。しかし、前足の形ということになれば、話はまた別だ。(中略)そいつの前足ときたら、まるで分厚い鞘をかぶせたように、もっこりとしていて、黄味がかかっていた。(中略)彼の見間違いでなければ、これは大変な発見になるはずのものだった。ただ、残念なことに、取り逃がしてしまったのである。(中略)
こうして彼は、その黄色い前足をもったニワハンミョウに、すっかりとりこにされてしまったのである。

 丹沢の不老山登山で2匹のニワハンミョウに出会った。山道を歩いていると目の前からふわりと飛んで少し離れたところに着地する虫がいた。まるで私の道案内をしているように。それが写真のニワハンミョウ。ハンミョウの仲間はみなそのような習性があるようで、「道教え」とか「道しるべ」という別名がつけられている。1匹は背中が緑色。もう1匹は茶色。「模様の変わりものが多い」生き物であるということは事実なのだと感じる。

 不老山での出会いは、それはずっとずっと会いたいと思っていたこの昆虫との初めての出会いである。小説の中での出会いから、実に20年以上の年月を経ての出会いであった。

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