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2008年6月15日 (日)

クジャクチョウ  花を再現させた羽

名前 クジャクチョウ(孔雀蝶)
分類 タテハチョウ科
出現期 6月~10月に出現、成虫で越冬する
生息地 本州では山地
私が出会った場所 長野県・美ヶ原、四阿山、湯ノ丸山、烏帽子岳(8月)、白馬山麓(5月…越冬した成虫)、水の塔山(8月)、山梨県・大菩薩峠(8月)、福島県・磐梯山(7月下旬)

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小泉八雲に蝶の美しさを実に見事に表現している文章がある。

自然は絶妙な魔法の使い手であるが、自ら食べて育った花々の、変幻きわまりない万華鏡にも似た色と形を、その小さな羽の上に再現して見せてくれる蝶ほど名状しがたくあいらしき生物は、おそらくほかにはいないであろう。

 この文章に触れたとき、真っ先に頭に浮かんだ蝶がクジャクチョウであった。美しい模様から、さぞかし美しい花を付ける植物を食するであろうと想像すると、肩すかしを食らう。クジャクチョウの幼虫の食草は、イラクサ、カラハナソウなどの地味な植物である。

 そのクジャクチョウに初めてであったのは美ヶ原。クジャクチョウは私にとって子どもの頃からあこがれ続けてきた蝶だった。

 孔雀のように美しいクジャクチョウ。英名は孔雀を意味するPeacock。和名も英名も孔雀のイメージから名前が付けられたということは興味深いことだ。日本産の亜種につけられている学名はNymphalis io geisha。geishaは「芸者」である。誰が名付けたのか私の知るところではないが、まあ、話の種としては面白い学名をつけたものだと思う。

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  撮影 平成19年8月 大菩薩峠 

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2008年6月12日 (木)

アゲハ 別名・ナミアゲハ 二つ折りのラブレター

名前 アゲハ(揚羽) 別名・ナミアゲハ
分類 アゲハチョウ科
出現期 3月~10月
幼虫の食草 ミカン類、サンショウ類
生息地 平地の庭、公園、畑など
私が出会った場所 日本の各地で普通に出会っている。

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 日本昆虫学会が日本の国蝶を選定したとき、オオムラサキに次いでアゲハは次点の票数を獲得した。アゲハは最も身近な、そして美しい蝶である。

 フランスの小説家、ジュール・ルナールに「博物誌」というという作品がある。彼を取り巻く自然を、簡潔な文体で描いたものである。その中の最も有名な小品が「蝶」。

       蝶 

    二人折りのラブレターが、花の番地を捜している。

 アゲハチョウの羽根の見事な模様を見ていると、二つ折りのラブレターという形容がふさわしいと感じる。

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2008年6月 7日 (土)

ウツギ(別名・ウノハナ)  「夏は来ぬ」

名前 ウツギ(空木) 別名・ウノハナ(卯の花)
分類 ユキノシタ科ウツギ属
花期 5月~6月
生育地 平地および山地の川沿いや林縁
私が出会った場所 埼玉県・蓮田市(黒浜地区 5月)、東京都・御岳渓谷(5月)、高尾山(5月)、神奈川県・不老山(6月初旬)、その他 日本の各地で出会っている

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 ウツギは空木。枝が中空になることから名前がついた。別名・卯の花は旧暦4月の卯月に花が咲くことによる。卯の花で思い出されるのが名曲「夏は来ぬ」。その1番と5番に卯の花が描かれる。作詞は国文学者・佐佐木信綱。国文学者だけに中国に々の文字がないことから、佐々木ではなく佐佐木と書くようになったという。

 そんな文学者が書いただけあってその言葉の使い方は子どもには難しく、「夏は来ぬ」は「夏は来ない」という意味だと思っていた。大人になるまで卯の花もホトトギスもクイナ(「夏は来ぬ」で歌われているクイナはクイナの仲間のヒクイナのこと)も知らなかった。知らないのに言葉の響きは大好きだった。卯の花やホトトギス、クイナがどんな生き物か知るようになって、ますますこの曲が好きになった。

夏は来ぬ

1番
卯の花の匂う 垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍び音(しのびね)もらす 夏は来ぬ

5番
五月闇(さつきやみ) 蛍飛び交い
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ

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キジバト  学校での子育て観察日記

名前 キジバト
分類 ハト科
生息地 平地(市街地~里山)から山地の林
私が出会った場所 日本中で出会っている

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 キジバトが枝に止まっている。毎日毎日、通勤途中見ている風景。しかし、そこに雪が加わると、一年に一度見ることができるかどうかという世界となる。

 さて、キジバトは日本中どこででも出会える鳥だ。私が住む関東地方では一年中見ることができる(ただし、北海道では夏鳥)。そんなキジバトも以前はヤマバト(山鳩)と呼ばれていた。かつてはキジバトは人里ではなく山の鳥だったのだという。

 キジバトが人里に進出してくれたおかげで、生徒と一緒にキジバトの子育てを観察することができた。私が顧問を務める演劇部の活動場所は校舎の2階にあった。そして、窓の外にはコナラの木が枝を広げていた。キジバトがそこに巣を作ったのだ。2000年の秋のことだ。私は子どもたちと一緒に観察し、その様子を日記に綴った。

2000年9月25日(月)
  キジバトの巣で雛がかえっていたそうだ。「先生、ハトの雛がかえってます」と2人の男子生徒が報告に来てくれた。演劇部員も何人か確認している。自分がいったときは親鳥がいて雛を見ることができなかった。明日確認したいと思う。無事に育つことを願う。

2000年9月27日(水)
 やっと雛を見ることができる。ただし1羽だけ。黄色い産毛が生えていてかわいい。
雛は2羽いるようだ。

2000年10月2日(月)
 雨であった。雛が雨に濡れないように親バトが雛にかぶさっている。雛はずいぶん大きくなった。もう親に隠れることはできない大きさだ。2羽ともよく見える。親バトの姿を人間と重ねている自分がいる。

2000年10月3日(火)
 親バトが餌を取りに離れたので二羽の雛をよく見ることができた。雛の背中には親と同じ模様の羽が生えはじめている。雛がかえってまだ一週間だというのに…。雛の成長の早さにびっくりする。
 巣を覗き込む生徒の数が増えている。みんなハトを驚かさないよう細心の注意を払っている。生命の営みに触れるという、最高の生命の教材がここにあると感じる。

2000年10月5日(木)
  親鳥が巣から離れていることが多くなった。「先生、大丈夫でしょうか」生徒が、親が子育てをやめたのではないかと心配している。これだけ雛が大きくなっては巣の中に親の居場所はない。成長の早さにびっくりする。休み時間になるとオープンスペースのこの窓をのぞく生徒が大勢いる。無事育ってほしい。

2000年10月10日(火)
 「雛がいなくなっています」。なんかとんでもないことが起こったというように、二人の生徒があわてて報告に来た。私は生徒と一緒に、駆け足でオープンスペースに向かった。確かに巣に雛がいなくなっている。今朝は確認しているのに…。そして、辺りを見回したら、いたいた、2羽とも巣の近くの枝にちょこんととまっていた。
 雛が巣立ったのだ。親は直接雛(雛といってももうかなり大きい)のところにやってきて餌を与えていた。
 もう、羽もすっかり親と同じ色になり、首の回りに黄色の産毛をかすかに残すだけだ。もう、体のサイズ以外は親と同じである。
 生徒は雛の生存を確認し、ほっとしている。そして「かわいいかわいい」を連呼している。とってもすてきなワンシーンがそこにあった。透き通った空気があたりを満たしていた。

2000年10月12日(木)
 親鳥も雛もいなくなった。うれしいような淋しいような。雛のいなくなった巣の中にコナラのドングリが一つ転がっているのが印象的だ。

 演劇の練習をしながら、毎日毎日雛の成長を見守ったこと、それが部員たちにとって最高の劇の練習になった。そして命を学ぶ場所ともなった。

撮影 埼玉県杉戸町 

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2008年6月 6日 (金)

ニワハンミョウ 現代文学「砂の女」に描かれた虫

名前 ニワハンミョウ(庭斑猫)
分類 ハンミョウ科
出現期 5月~9月
生息地 平地から山地の地面
私が出会った場所 神奈川県・不老山(6月初旬)

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 ニワハンミョウは肉食昆虫ハンミョウの仲間。実は、以前からずっとニワハンミョウに会いたいと思っていた。それは、大学の時夢中になって読んだ安部公房の『砂の女』にこの昆虫が登場するからだ。私は、大学時代この小説に圧倒された。そして一時期、安部公房に夢中になった。

 安部公房は現代文学の世界的作家である。その代表作『砂の女』は読売文学賞のほか、フランスで最優秀外国文学賞を受賞している。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂に埋もれていく一軒家に閉じこめられる物語だ。新潮文庫の解説でドナルド・キーンはこの物語を、20世紀文学の古典と表現している。

その導入部で主人公とニワハンミョウの関係が語られる。

砂地にすむ昆虫の採集が、男の目的だったのである。
けろん、砂地の虫は、形も小さく、地味である。だが、一人前の採集マニアともなれば、蝶やトンボなどに、目をくれたりするものでない。彼等マニア連中がねらっているのは、自分の標本箱を派手にかざることでもなければ、分類学的関心でもなく、またむろん漢方薬の原料さがしでもない。昆虫採集には、もっと素朴で、直接的なよろこびがあるのだ。新種の発見というやつである。

ある日、家の近くの河原で鞘翅目ハンミョウ属の、ニワハンミョウに似た、小っぽけな薄桃色の虫を見つけたのだ。むろんニワハンミョウに、色や模様の変わりものが多いことは、周知の事実である。しかし、前足の形ということになれば、話はまた別だ。(中略)そいつの前足ときたら、まるで分厚い鞘をかぶせたように、もっこりとしていて、黄味がかかっていた。(中略)彼の見間違いでなければ、これは大変な発見になるはずのものだった。ただ、残念なことに、取り逃がしてしまったのである。(中略)
こうして彼は、その黄色い前足をもったニワハンミョウに、すっかりとりこにされてしまったのである。

 丹沢の不老山登山で2匹のニワハンミョウに出会った。山道を歩いていると目の前からふわりと飛んで少し離れたところに着地する虫がいた。まるで私の道案内をしているように。それが写真のニワハンミョウ。ハンミョウの仲間はみなそのような習性があるようで、「道教え」とか「道しるべ」という別名がつけられている。1匹は背中が緑色。もう1匹は茶色。「模様の変わりものが多い」生き物であるということは事実なのだと感じる。

 不老山での出会いは、それはずっとずっと会いたいと思っていたこの昆虫との初めての出会いである。小説の中での出会いから、実に20年以上の年月を経ての出会いであった。

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2008年6月 5日 (木)

アオオビハエトリ  アリを襲うクモ

名前 アオオビハエトリ(青帯蝿捕り)
分類 ハエトリグモ科
出現期 5月~9月
生息地 平地から里山
私が出会った場所 埼玉県杉戸町

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 私が住んでいる埼玉県杉戸町のとある森の入り口でのこと。大きな蟻が小さな蟻を襲っているのだと思った。この生き物はアリの後ろからアリを攻撃していた。

 私はアリグモというアリに似たクモを見たことがあったので、その生き物がアリグモに近いクモであることに気がついた。それで写真を撮って家で調べてみると、アオオビハエトリ。肉眼では気がつかなかったが、美しい青い帯がある。

 アリを襲うクモを見るのは初めてのことであった。私が暮らしている町でも、森を歩けば、いつもいつも発見がある。いつもいつも今まで出会ったことがない生き物と出会うことができる。

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2008年6月 4日 (水)

ツバメ  先生、燕がきました

名前 ツバメ(燕) 
分類 スズメ目ツバメ科
出現期 夏鳥として3月~
生息地 市街地から山地の開けた場所
私が出会った場所 埼玉県・久喜市、杉戸町、宮代町 他・日本の各地で出会っている

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 ツバメは他の夏鳥に先駆けて日本にやってくる。夏鳥の多くは4月から5月にかけて日本にやってくるが、ツバメは3月・春の訪れとともにその姿を見ることができる。

 ツバメに関係する物語はいくらでも存在する。
 例えばアンデルセンの童話「親指姫」(ツバメは助けてくれたお礼に、親指姫を南の国へと連れて行き、そこで親指姫は花の国の王子と結婚する)
  例えば、オスカー・ワイルドの童話「幸福な王子」(この童話ではツバメは悲しい最後を迎える)
例えば女性解放運動のリーダー平塚雷鳥と年下の奥村博史という画家との恋愛から生まれた「年上の女性の愛人である若い男性」という意味を与えられた若い燕という言葉。
 例えば巌流島の戦いで有名な佐々木小次郎の得意技・燕返し。更に、燕軍団ヤクルトスワローズの活躍などなど。

 さて、私は中学の教師である。中学の教師で自然が大好きな私には、ツバメが登場する宝物のような詩がある。丸山薫の「北の春」という作品だ。

      北の春 丸山薫

       どうだろう
     この沢鳴りの音は
     山々の雪をあつめて
     轟々と谷にあふれて流れくだる
     この凄じい水音は

     緩みかけた雪の下から
     一つ一つ木の枝がはね起きる
     それらは固い芽の珠をつけ
     不敵な鞭のように
     人の額を打つ
     やがて 山裾の林はうっすらと
     緑いろに色付くだろう
     その中に 早くも
     辛夷の白い花もひらくだろう

     朝早く授業の始めに
     一人の女の子が手を挙げた
     ――先生 燕がきました

               詩集『仙境』

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