キアゲハ 「少年の日の思い出」
名前 キアゲハ(黄揚羽)
分類 アゲハチョウ科
生息地 海岸付近の平地から3000メートルの高山帯まで
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町・春日部市、長野県・志賀高原、東京都・高尾山 他多数
ヘルマン・ヘッセに「少年の日の思い出」という小品がある。私は中学時代、国語の教科書でこの作品に出会った。国語の教科書に載っていた作品で今でも心に残っているものはあるかと尋ねられたら、ためらうことなくこの作品の名を挙げる。
今でも、美しいちょうを見ると、おりおり、あの熱情が身にしみて感じられる。そういう場合、僕はしばしの間、子供だけが感じることのできる、あのなんともいえない、むさぼるような、うっとりした感じに襲われる。少年のころ、初めてキアゲハにしのび寄った、あのとき味わった気持ちだ。また、そういう場合、僕は、すぐに幼い日の無数の瞬間を思い浮かべるのだ。強くにおう、乾いた荒野の、焼けつくような昼下がり、庭の中の涼しい朝、神秘的な森の外れの夕方、僕は、まるで宝を探す人のように、網を持って待ちぶせていたものだ。そして、美しいちょうを見つけると、特別に珍しいのでなくったってかまわない、ひなたの花に止まって、色のついた羽を呼吸とともに上げ下げしているのを見つけると、とらえる喜びに息もつまりそうになり、次第にしのび寄って、輝いている色のはん点の一つ一つ、透き通った羽の脈の一つ一つ、触角の細いとび色の毛の一つ一つが見えてくると、その緊張と歓喜ときたらなかった。そうした微妙な喜びと、激しい欲望との入り交じった気持ちは、その後、そう度々感じたことはなかった。 (ヘルマン・ヘッセ 「少年の日の思い出」冒頭)
キアゲハは自宅近くでもよくみかける蝶だが、写真に撮ることがなかなかできなかった。そんなキアゲハに志賀高原のお花畑で出会った。息を殺してキアゲハに忍び寄りシャッターを切るときの気持ちは、ヘッセが描く小説世界とつながる。
いつまでもキアゲハに心ときめく自分でありたい。
撮影 平成18年8月13日 志賀高原
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