フモトスミレ 気品のある花
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名前 ニオイタチツボスミレ(匂立坪菫)
分類 スミレ科
花期 3月下旬~5月中旬
生育地 開けた草地、明るい落葉樹林下
私が出会った場所 栃木県・三毳山、東京都・裏高尾、神奈川県・大山
前回の寫眞館「エイザンスミレ」で紹介した、まど・みちお作『すみれのはな』には続きがある。
すみれのはな まど・みちお
きがついたら しゃがんでた
かお くっつけて しゃがんでた
すみれのはな
すみれのはな
それは ちいさな こもれびに
いっしょうけんめい さいてたよ
私はこのスミレに出会うと、いつもしゃがんで顔をくっつけてみる。そのスミレの名はニオイタチツボスミレ。花にかすかな芳香があることで知られている。このスミレの花を知っている人の多くは、私と同じような行動をとるようだ。裏高尾で、このスミレの花に鼻を近づけている人たちと何度も出会った。
悲しいことに私はこのスミレの花に匂いを感じたことがない。おそらく私が花粉症であることに関係があるのだろう。この花が咲く頃は私の花粉症の症状のピーク時に当たるからだ。私以外の人でも、このにおいを感じない人はいるようである。裏高尾で出会った人たちの、半分は「いい香り」と言って喜んでいたが、半分は「においがしない」と私と同じ感想を語っていた。
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名前 エイザンスミレ(叡山菫)
分類 スミレ科
花期 4月~5月
生育地
私が出会った場所 埼玉県・伊豆ヶ岳、栃木県・日光小倉山、県民の森、東京都・高尾山、御岳山、神奈川県・大山 その他多くの山で
童謡『ぞうさん』で有名なまど・みちおに「すみれのはな」という私のお気に入りである詩がある。
すみれのはな まど・みちお
しらないまに いっていた
こんにちはって いっていた
すみれのはな
すみれのはな
それは さみしい やまみちに
ひとりぼっちで さいてたよ
この詩を読んで、私が思い浮かべたのはエイザンスミレ。写真のように葉が深く裂けているので、見分けが難しいスミレの中でもこのスミレはかんたんに同定できる。もっと葉が裂けるヒゴスミレというスミレが存在するが、こちらはエイザンスミレと比べ見られる場所は局所的である。
さみしいやまみちに ひとりぼっちで咲いているイメージにぴったりのスミレだと思う。
撮影
上 埼玉県伊豆ヶ岳
下 栃木県県民の森
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名前 スミレ
分類 スミレ科スミレ属
花期 4月~5月
生育地 日本全土の人家付近から丘陵まで
私が出会った場所 埼玉県春日部市、杉戸町、久喜市 他
日本に標準和名がカラスであるカラスはいない。関東地方で見られるのはハシブトガラスとハシボソガラスである(最近はミヤマガラスやコクマルガラスも見られるようになってきた)。標準和名がサギというサギはいない。標準和名がシラサギというサギもいない。ダイサギ、チュウサギ、コサギと大きさによって違った名前が与えられている。標準和名がタンポポというタンポポも存在しない。自宅周辺ではカントウタンポポとセイヨウタンポポを見ることができる。
それに対してカモメというカモメはいる。ツバメというツバメはいる。そして、スミレという名のスミレも存在する。まあ、どうでもいいといえばいいことではあるが…。この後話に出てくるスミレは、スミレの中のスミレのことである。
私は子どもの頃、野原で見つけたスミレを家に持ち帰り庭に植えた。その紫色の花が私を引きつけて放さなかったからである。スミレは枯れることなく、ずっとずっと庭の植えた場所で生きた。種もつけた。しかし、毎年知らず知らずのうちに種をつけているのだ。いつも気にしているのに、どうして花を見ることができないのかそれが不思議だった。大人になって閉鎖花の存在を知るまで。閉鎖花とは,花を開かずに,自分で種子を作ってしまう花。自宅の庭は条件が悪かったのか、スミレは花を咲かせず閉鎖花だけを作ったようだ。閉鎖花という存在を知らなかった私は、毎年、今年も花が咲いたのを見逃したと残念がったのであった。
私が勤務している中学校の駐車場にスミレが咲いていた。今でも、子どもの時のようにスミレにときめきを感じることができることが嬉しい。
撮影 平成20年4月 久喜市
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名前 ハクサンチドリ(白山千鳥)
分類 ラン科
花期 6月~8月
生育地 高山
私が出会った場所 群馬・至仏山、長野・岩菅山、八方尾根 他
前回の寫眞館「ギンリョウソウ」で林間学校の紹介をした。その時の林間学校でもう一つ、印象に残っている花がある。それはハクサンチドリ。出会った山は、志賀高原にある岩菅山。
岩菅山は高山である。山登りが苦手な生徒達はへとへとになっていた。私は最後尾の生徒につき、生徒達を励まし励まし登った。花を紹介しながら、ゆっくりゆっくり登った。そして、頂上近くの難所のざれ場でハクサンチドリに出会った。美しい蘭の花をじっくり味わい、そしてなんとか頂上にたどり着いた。
登山の後、夕食のバーベキューが美味しかったこと。そして、その後行われたキャンプファイヤー。
暗闇の中に浮かび上がる炎、そして谷川俊太郎の「生きる」の詩が、闇と炎の中を静かな響きとして流れていく。炎がすべて消えた後、打ち上げられた花火の美しかったこと。実行委員達の目から涙がこぼれ、そしてその涙は波紋のように伝わっていった。
あのとき「生きる」とともに読まれた、まど・みちおの詩「山のてっぺん」をあの当時の実行委員は覚えているだろうか。実行委員達が、この詩が今の私たちにぴったりと選んできた詩だった。
山のてっぺん まど・みちお
ふもとの小川までおりてきて
ふりかえると
山のてっぺんは 空の中にまだ明るいほら あそこに
豆つぶみたいになって ぼくたちがいる
豆つぶなのに
あんなに よく見えて
さっきのままに 風にふかれて
まわりの山々や
とおい町や
町のむこうの海や
海のもっとむこうにかすむ明日へ
あんなに まぶしく手をふっていつか また
あそこへ登っていく日のぼくたちを
あのまま ああして
待っているかのように
この詩はあのときの自分たちにぴったりなのではなく、あのときから何年もの時が経過した今にぴったりなのではないかと思う。あの頃の私たちが、岩菅山の頂上で待っている気がする。あの頃の私たちに会ってみたいと思う。話してみたいと思う。
ハクサンチドリは思い出深い花だ。
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名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている
この花を見ると思い出すのが、林間学校でのこの花との出会いだ。訪れた場所は志賀高原・岩菅山。当時、総合的な学習の時間などというものはなかったが、私は学活の時間を使い、下見で確認した鳥の鳴き声を教えたり、そこで見られる花を紹介するなどした。ただ、頂上を克服を目指し、登り切ったはいいけれど、もう二度と山になど行きたくないというような根性重視の苦行僧的登山は行いたくなかった。
事前の学習が功を奏し、生徒が目の前に現れる花や鳥に興味を持ってくれた。
黒地に白い星模様のついたホシガラスが現れたり、先頭を行く生徒たちから「カケスが出ました」という連絡が入ったりと、それはそれは楽しい登山だった。
頂上にたどり着き、下山途中で見つけたのがこの花・ギンリョウソウ。一緒に歩いていたクラスの生徒はこの花の不思議な魅力に捉えられた。この花を囲んで、この花の魅力を語る自分とその話に目を輝かせて聞きいる生徒たち。今・総合的な学習の時間で私が求めているのはこんな学びの姿勢だ。少なくとも教師→生徒という一方的な学びの場ではなかったのではないかと思う。この時一緒に花や鳥を楽しんだ生徒は、きっとこの後の山登りでも「この花なんだろう」などと考えてくれているはずだと私は思っている。
ギンリョウソウの花はあの頃を思い出させてくれる。
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名前 ギンリョウソウ(銀龍草 別名・ユウレイタケ)
分類 イチヤクソウ科ギンリョウソウ属
花期 5月~8月
生息地 山地のやや湿り気のあるところ
私が出会った場所 東京都・高尾山、栃木県・日光湯の湖周辺、塩原渓谷遊歩道、福島県・駒止湿原、長野県・志賀高原 他・多くの場所で出会っている
昨日紹介した『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)にはキュウリグサと共にもう一つ印象深い植物が登場する。主人公が林の中にある穴の中に落ちたとき、その植物が穴の中一面に咲いているのだ。その植物は物語の中で次のように表現されている。
◆穴の脇は更に深い洞のようになっていて、その一面に美しい銀色の花が咲いていたのだ。暗い林の奥の、そのまた暗い、ほとんど陽も届かないはずの場所に。その植物は二十センチくらいの、葉を持たない銀白色の鱗をつけた茎の先に、やはり銀細工のような小さな蘭に似た花をつけていた。それが何十本となく、まるで茸かつくしのように地面から生えているのを見るのは不思議な光景だった。
山の植物を少し知った人なら、この描写でこの花が銀龍草(ギンリョウソウ)だとわかるだろう。この小説の他の植物は片仮名で表現されているのに、このギンリョウソウは銀龍草にギンリョウソウというルビが振ってある。確かに漢字で表現したくなる素敵な名前の植物である。私の幻の森にふさわしい幻のような花だ。
写真 2004年6月 駒止湿原にて
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名前 ハナイバナ(葉内花)
分類 ムラサキ科ハナイバナ属
生育地(分布) 日本全土の道ばた、畑、庭にごく普通
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、宮代町 他
ハナイバナはキュウリグサと同じムラサキ科の植物。名前は葉と葉の間に花をつけることによる。キュウリグサ以上に味気ない名前ではあるが、キュウリグサとの違いを理解するにはよいのかもしれない。前回紹介したキュウリグサは、茎の先にサソリの尾の形に花を多数つける。
3月から5月はハナイバナとキュウリグサのどちらも花を咲かせるので紛らわしい。6月になるとキュウリグサの花は終わり、ハナイバナのみが咲くようになり、ハナイバナはその後11月くらいまで花を見ることができる。
撮影 平成20年4月 埼玉県杉戸町
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名前 キュウリグサ(胡瓜草)
分類 ムラサキ科
生育地(分布) 日本全土の道ばたや庭
私が出会った場所 埼玉県・杉戸町、久喜市 他 日本の各地
『西の魔女が死んだ』(梨木香歩 作)という小説は生命を扱った素敵な物語だった。この度、映画化されたようである。
この物語には、シジュウカラ、エナガ、コガラ、ホトトギス、ホオノキ、クサノオウ、カヤツリグサ…と、たくさんの生き物が登場する。それがどんな生き物か知らなくてもこの小説を楽しむことはできる。しかしその生き物が映像として浮かぶとき、この物語は更に面白さをますはずだ。
主人公の少女はサンルームの床のれんがの隅に生えている小さな雑草に興味を持つ。そしてそのワスレナグサを小さくしたような青い花にヒメワスレナグサという名前を付ける。素敵な名前だ。この花の正式名がキュウリグサであることは最後で提示されるが、この物語に心を動かされた人はこのキュウリグサがどんな植物か知っておくといいだろう。もむとキュウリのような匂いがするというキュウリグサ(試してみたが、そういわれればキュウリの匂いという気もする、その程度の匂いだと私は感じている)、私の好きな花の一つでもある。都会、田舎に関わらず日本中の平地のどこでも見ることができる花だが、とても小さいのでこの花に目を止める人はほとんどいない。
こんな可憐な花なのに、名前はキュウリグサ。ドナウ川の川辺で恋人のため花を摘もうとした青年が、川に落ち急流に飲まれる前に恋人に花を投げ「私を忘れないで」と叫んだことから名前がつけられたといわれるワスレナグサ(勿忘草)と比べるとかわいそうな気もする。『西の魔女が死んだ』は、このちっぽけな花に多くの人が目を向けるきっかけを作ってくれるかもしれない。そうなればいい。
※撮影 2008.4 埼玉県・杉戸町
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名前 スジボソヤマキチョウ(筋細山黄蝶)
分類 シロチョウ科
生息地 高原・林縁・渓流沿い
私が出会った場所 奥鬼怒
蝶の英語名はbutterflyであるが、これはイギリスの博物学者がヤマキチョウをButter-colored Fly(バターの色をした昆虫)と読んだことに由来するという。
ルイス・キャロルのアリスの物語にはBread-and-ButterflyというBread-and-butterとButterflyを掛け合わせたキャロルの創造した蝶が登場するが、ButterflyにもともとButterの意味が含まれていたことをキャロルは知っていたのだろうか。
撮影 平成18年8月 奥鬼怒
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