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2011年3月 6日 (日)

キベリタテハ  図鑑ばかり見ていた日々

名前 キベリタテハ
分類 タテハチョウ科
出現期 8月~9月に出現、成虫で越冬する
生息地 中部地方の高山から福島県より北の地方に生息
私が出会った場所 日光・奥鬼怒(8月下旬)、長野県・平標山(8月中旬)、福島県・会津駒ヶ岳、燧ヶ岳(8月下旬)

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 キベリタテハを見かけたことは何度かある。しかし、今までなかなか写真に撮れないでいた蝶であった(正確に表現すると撮れてはいたが紹介するまではいかなかった)。そのキベリタテハを会津駒ヶ岳でようやく写真に撮ることができた。キベリタテハは図鑑ばかり見ていた子どもの頃の私のあこがれの蝶の一つだった。

 子どもの時の私は病弱で、幼稚園も小学校も休んでばかりいた。そんな私があきずにいつも眺めていたのが「昆虫図鑑」だった。特に蝶が好きだった。そして「いつか見てみたい」と強い思いを抱いていた蝶が、このキベリタテハであった。当時の私には、山に行く体力はなかった。

 子どもに「図鑑ばかり見ていてはだめだ」という人がいる。「図鑑だけではなくほんものの自然を見よう」という意味での、その気持ちはわからないでもない。しかし、図鑑を見ることが、まるで悪いことをすることとして否定的な響きを持つ時、私は違和感を感じる。

 子どもの中には、以前の私のように外で蝶を見たくても見られないでいる子どももいる。それに、図鑑を見て蝶にあこがれた子どもが、大人になってその思いを思い出し、そこからほんものの自然に向き合うことだってある。

 図鑑を見ることをやめさせれば、本当の自然に向かうかといえば、そうとは限らない。テレビゲームの世界に向かってしまうこともあるだろう。現在の私の自然への熱い思いは、図鑑ばかりみていた、子ども時代に始まった。

 シュナックの「蝶の生活」のエピソードの中に、中国のある皇帝は、酒宴に招待された美女たちの中から、最も美しい人をキベリタテハに選ばせて恋人にしたというエピソードが紹介されている。前述したように、なかなか近づくのを許してくれなかったキベリタテハがいくら美女であってもそのそばに近寄るとは思えないが、おもしろいエピソードではある。

撮影 平成22年8月 会津駒ヶ岳

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2008年9月24日 (水)

キジョラン(鬼女蘭)   鬼女の生まれ変わり

名前 キジョラン(鬼女蘭)
分類 ガガイモ科キジョラン属
花期 8月~9月
生育地 常緑樹林内
私が出会った場所 東京都・高尾山

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 キジョランはランの仲間ではない、ガガイモ科のツル性の植物である。キジョランはどこででも出会える植物ではないが、高尾山ではそのキジョランに普通に出会うことができる。特に2号路では写真のような見事なキジョランに出会うことができる。

 キジョランの花に関心を持つ人はあまりいない。「これが花なの」と思うような花である。下の写真は望遠レンズを使って撮ったキジョランの花である。この花がいかに地味か理解できるであろう。

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Dscf0476kijoranjpg1jpg1キジョランは漢字で書けば鬼女蘭。和名は、種子の白毛を髪を振り乱した鬼女のものとみなしたことによる。そうキジョランの魅力はその種子なのである。冬から早春にかけて、高尾山ではこの白毛が風に舞う。

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このキジョランを食草とする蝶がいる。アサギマダラという美しい蝶だ。アサギマダラは、この白毛のように夢のようにひらひらと舞う。

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 アサギマダラという蝶は鬼女の生まれ変わりではないだろうか。鬼女の種子に出会って、そんなことを考えた。

◆関連記事 

アサギマダラ 渡りをする

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2008年9月21日 (日)

キツリフネ  私にさわらないで

名前 キツリフネ(黄釣舟)
分類 ツリフネソウ科ツリフネソウ属
花期 6月~9月
生育地 平地の渓流沿い、湿った林内
が出会った場所 日本全国の山で普通

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 帆掛け船のような形をした黄色い花ということでキツネフネという名前がつけられた。赤紫の花をつけるツリフネソウと同じ仲間である。キツネフネはツリフネソウとくらべやや高いところに自生する。

 学名は Impatiens noli-tangere 。属名Impatiensは「こらえきれないもの」という意味。Impatiensはインパチェンスという発音でホウセンカの仲間の属名である(日本で売られているインパチェンスはアフリカホウセンカ)。小種名noli-tangereは「私にさわらないで」。学名を属名、小種名と並べると「こらえきれない、私にさわらないで」となる。学名らしからぬ学名である。英名はTouch-me-not.フランス名はNe-me-touchez-pas、いずれも「私にさわらないで」花言葉も「私にさわらないで」である。

 なぜこのような世界的な共通性がうまれるのだろうか。それは熟した果実が、軽く触れただけで音を立ててはじけ飛ぶという性質に由来している。ホウセンカの仲間の特徴である。

 雨の礼文島で写真のキツリフネに出会った。女性的な花だと思った。清楚な美しさをまとったその花は「私にさわらないで」と語っているようだった。

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2008年9月19日 (金)

キキョウ  桔梗色の空

名前 キキョウ(桔梗)
分類 キキョウ科キキョウ属
花期 7月~9月
生育地 平地および山地
が出会った場所 野生では長野県にある日本百名山の麓で出会っただけ(8月初旬)

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 花に興味を持ってからしばらく、キキョウを園芸種だと思っていた。野生で見られる花ではないと思っていた。
 花に興味を持って山歩きを始め10年、野生のキキョウに長野県にある日本百名山の麓で初めて出会った。

 『万葉集』の山上憶良の歌に「秋の野の花を詠める二首」が載っている。

花を指折りかき数ふれば
七種の花
萩の花尾花(おばな)葛花(くずばな)
瞿麦(なでしこ)の花女郎花(おみなえし)
また藤袴(ふじばかま)朝顔の花

 さてこの歌の最後に詠まれている朝顔の花の正体は実はキキョウであると言われる。その根拠として朝顔が庭の花で野の花でないことや、朝顔はもともと日本にあった花ではなく、日本への渡来が平安時代であることから万葉集が編纂された奈良時代には見ることができない花であること等があげられている。

 宮澤賢治の名作『銀河鉄道の夜』には桔梗いろが銀河を覆う空の色として使われている。

がらんとしした桔梗いろの空から、さっき見たやうな鷺が、まるで雪の降るやうに、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに舞ひおりて来ました。

美しい美しい桔梗いろのがらんとした空の下を実に何万といふ小さな鳥どもが幾組もめいめいせはしくせはしく鳴いて通って行くのでした。

 私は賢治の描く桔梗いろの空と鳥の取り合わせの美しさに圧倒された。目がくらむほどに美しい…
 賢治が好んだ美しい色を宿したキキョウが、野生で普通に見られるようになればいいと思う。

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2008年9月18日 (木)

ワレモコウ  さびしききわみを感じる花

名前 ワレモコウ(吾亦紅)
分類 バラ科
花期 7月~10月
生育地 平地および山地(山地では普通に見られる)
が出会った場所 埼玉県・久喜市、他、長野県・霧ガ峰、山梨県・大菩薩峠、群馬県・尾瀬ヶ原 その他多くの場所で 

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 バラ科であるが、花はどう見てもバラの仲間には見えない。しかし、その独特の風情はなぜか人を惹きつける。古くは「源氏物語」の匂宮の巻にも描かれ、現在は花材やドライフラワーでもよく使われている。

 「徒然草」には「家にありたき木は…、(中略)秋の草は荻薄、きちかう(キキョウのこと)、萩、女郎花、藤袴、しおに(シオンのこと)、われもかう…」とある。ワレモコウは兼好法師の美意識に適う花なのである。

 ワレモコウを描いた俳句や短歌には心惹かれる歌が多い。

吾も亦(また)紅(くれない)なりとひそやかに  高浜虚子
吾亦紅 すすきかるかや 秋草の さびしききはみ 君におくらむ 若山牧水

 さびしき極みをプレゼントする。何とすてきなプレゼントだろう。わびしき極みは美しさの極みでもあると私は感じる。さて、ワレモコウを描いた現代の詩を最後に紹介したい。    

      ワレモコウ まど・みちお

やあ!
と思わずぼくは
笑いかけたような気がする

やあ!
とひびくようにきみも
笑いかえしてきたような気がする

どこもかしこも
しらない草ばかりぼうぼうの
この草原にことしもきて
やっと見つけた顔なじみ
ワレモコウ!

やまびこの子どもが忘れていった
ボンボンのように
雲のハンカチの上にちらばって
五つ六つ

いまごろ
どこでどうしているだろう
「ワレモコウっていうのよ」
と教えてくれた
あの去年の
リスのような目の女の子は

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