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2011年1月24日 (月)

サンタが町にやってくる 1

 新作『とも』には実話を元にした部分がある。それは私の最初の赴任校での出来事である。

 今から20年前のことである。私が顧問を務めていた演劇部にある依頼が届いた。それは筋ジストロフィーの子どもたちのために、クリスマス会で劇を上演してほしいという内容だった。私はその依頼を引き受けることにした。どんな内容にするか実行委員長と話し合いを重ねた。実行委員長は高校3年生の少女だった。彼女も病と闘っていた。それでいて、自分よりも若い子どもたちのためにクリスマス会を企画していたのだった。

 「子どもたちに、中学生のはつらつとした姿を見せてください」という希望に、ダンスと短い劇を組み合わせた内容にすることにした。ただ、どんな内容にしたらよいのか、なかなかよいアイディアが浮かばなかった。

 私は、実行委員長にお願いして、会に参加する子どもたちに直接会わせてもらった。患者と接する時に気をつけなくてはいけないこと、介護の仕方などを教えてもらった。そして、その後患者の親の会合にも参加させてもらった。その会合では、様々な悩みが生々しく語られていた。最後に代表の方が次のような発言をした。「信じてください。今は、治療薬は見つかっていません。しかし、いつか必ず治療薬はできる。そう信じてください」。

 この言葉が耳に残った。そして、治療薬=サンタクロースという図式ができあがった。
私は「サンタが町にやってくる」という短編を書いた。サンタの存在を信じる妹と、それを否定する兄の物語だった。二人は夢の中でサンタに案内され様々なショーを見る。夢から覚めた兄は部屋に今までなかったはずのサンタの帽子を発見し、もしかしたら本当にサンタは存在するんじゃないかと思う。最後に全員が舞台に登場し、「信じればサンタが町にやってくる」という言葉を連呼するところで劇は終わる。

 部員全員に筋ジストロフィーとはどんな病気なのか、どのように介護してほしいと伝えられたか、そして上演劇『サンタが町にやってくる』の根底を支える「治療薬=サンタクロース」という図式について話した。「もちろん『治療薬=サンタクロース』を知っているのは君たちだけだ、脚本に直接この図式は書かれていない。でも君たちはこのことを心に刻みつけて演じてほしい」そんなことを語ったことを覚えている。

 発表当日がやってきた。実はこの日は私の妹の結婚式だった。私は午前中通し練習を行い、その後、舞台道具をクリスマス会場まで運搬したところで、部員とその保護者に任せ、結婚式場へと向かった。

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