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2009年9月 3日 (木)

『春一番』 二つで一つ

 第58回全国演劇教育集会(全劇研)の発表の2日前。私は全員に「明日への一歩」と題したプリントを配った。理由は部活の空気に目標に向かっていく強い力を感じなくなったからだ。数日前グループ・オオルリは『春一番』の本番を終えた。そのオオルリのメンバー全員が、一週間後の全劇研の発表に出る。ただしキャストを入れ替えての上演のため、出番はオープニングの5分間である。自分たちが中心の発表を終えた気のゆるみからか、このメンバーの中に衣装を忘れてくるものが複数出た。それも2日連続で。あと数日で本番だというのに2日連続で衣装を忘れる生徒がいるということは、そのまま何も言わないでよいことではなかった。
 プリントのはじめは次のような言葉で始まる。「一人でも多くの人に感動を与えるために 今日はあえて厳しいことを言います!」そして、プリントの最後は次のような言葉で締めくくった。「よい劇はみんなで創る。今日からはオオルリもカワセミもない。日曜日は全員がオオルリだった。そして、今日からは全員がカワセミである。2つのグループがあるのではない」(グループ・オオルリとカワセミについては8月31日のブログを参照してください)
 そして、グループ・オオルリのメンバーに話をした。「君たちの発表の前、君たちが少しでも多く練習できるように、舞台のセットを全部してくれたのは誰だったろう。君たちの最後のリハーサルの時、君たちより早く昼食を終えて、準備をしてくれたのは誰だったろう」
「カワセミのメンバーです」そうオオルリのメンバーが答えた。
 そう、3年生中心で構成されたグループ・カワセミは2年・1年生が多く出演するグループ・オオルリを少しでも助けようと、彼女らには練習をさせてあげて、舞台準備を自主的に行ってあげていたのだ。
 「そうだよね。君たちは全員カワセミの発表にも出るよね。それは最初の数分だけど、出るよね。数分だからどうでもいいのかな。衣装なんか忘れても関係ないのかな。君たちは、ライバルだったのかな。競い合ってここまできたのかな。この前に日曜日の発表はオオルリとカワセミの2つのグループがあったのかな。違うよね。あの日はみんながオオルリだった、そうだよね。今日からは、みんながカワセミにならなくちゃいけないんじゃないか」
 私の話を聞いている部員の目から、私からのメッセージは伝わったと感じた。部活の空気が引きしまった。そして、2日前のブログで書いた取り組みがとても意味あるものになった。教室での最後の通し練習は、一人一人が舞台で生きている本当に素てきなものとなった。劇が終わった後、全員の顔が晴れやかだった。晴れやかな中に涙があった。

 8月1日の発表直前、みんなに話をした「さっ、今日はみんながカワセミだ。それじゃ、応援の意味で同じ役同士で握手をしようか」。その言葉とともに、同じ役同士が握手しあった。空気が応援の言葉で満たされた。もう、この段階で胸が一杯になって、劇の始まる前だというのにみんな泣いていた。そして、本番の幕が上がった。

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