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2009年8月 6日 (木)

『春一番』に届けられたすてきな感想

先日、第58回全国演劇研究集会で久喜中学校演劇部が上演した『春一番』に、すてきな感想が送られてきました。本人から「実名で紹介してけっこうですよ」というメッセージもいただきました。感謝の思いを込めて、紹介させていただきます。 

『春一番』の舞台を観て     佐藤ゆかり(東京都)

 私が『春一番』に出会ったのは、関東演劇コンクールの舞台を拝見した時でした。季節もちょうど春で、外の空気も暖かかったような気もします。東京都の東久留米南中学校の劇を応援に行くことが目的で出向いたコンクールでしたが、斉藤先生の新作を観劇できることも楽しみにしていました。何本かの素晴らしい劇を観てきて、久喜中学校が最後だったと思います。演目は『春一番』。随分前のキャンディーズの歌と同じタイトルだな…と思い出しながら、それと劇の内容は関係ないだろう…と勝手に思いつつ、幕が開くのを待ちました。
 舞台は放送部の部室。机にはたくさんの音響機材が並べられ、ここで、何が起こるんだろう…と期待させる優しい音楽に誘われ、自分でも気づかないうちに劇の中に引き込まれました。優しい語り口で進められる中での少女たちの葛藤や励ましに、幾度となく涙してしまう舞台に、そこがコンクールであることを忘れ、まるで『春一番』の公演を観に来たかのように思ってしまったことも記憶に残っています。
 「春一番」の登場人物を演じる生徒たちが、斉藤先生の描いた一人ひとりの人間に生命を吹き込むように、何ともいえない優しさで「フレーフレー」と応援する姿から、自分の役を心から大切に思って演じていることが会場の隅々にまで伝わり、舞台が終わった後もしばらくその余韻に包まれました。厚かましいと知りつつも「この劇、自分の生徒にやらせたい!」と思いました。二日間のコンクールのうち、二日目だけを拝見したので、一日目の舞台は拝見できませんでしたが、コンクールの審査でも上位になるだろうと予想されました。結果は最優秀賞。恐らく、私だけではなく、多くの人に静かな舞台の大きな感動が伝わったのだと思います。
 その台本が『演劇と教育』誌に掲載され、食い入るように(穴があくほど、といっては大げさかもしれませんが)何度も何度も通勤中に読みました。朝のバスの中で「今日も大変だろうなぁ…」と思いながら、『春一番』を読んでいると私の心が落ち着くのです。通勤時間だけでは読みきれませんので、また翌日に続きから読むのですが、その度に舞台が思い出されました。私は、頭の中でかすかにBGMを響かせ、由美子の優しい語り口や裕美の思いをよみがえらせながら、短い「現実逃避?」のひと時を過ごしました。
  そして今年、斉藤先生の脚本が『夏休み』のタイトルで出版されると知りました。『春一番』も掲載されているとのことで、早速手にしました。6本のお芝居が繰り広げられたあとに私の目にとまったのは、『春一番が吹いた日に』というあとがきでした。斉藤俊雄先生にインタビューをするみゆきさんはもちろん実在の人物ではありません。しかし、斉藤先生の教え子であるかのように、心温まる会話で斉藤先生とお話されているのが面白く、脚本同様に何度も読みました。斉藤先生が一方的に語るのではなく、みゆきさんとの会話を通して、先生が描きたかったことが少しずつ取り出されることで、先生の温かいお人柄と共に七つ森シリーズの舞台下の魅力が、私たちに伝わってくるような気がしました。
 斉藤先生の脚本集を読み返しても、私は『春一番』がやはり一番好きです。きっと演じた生徒たちもこの脚本を舞台で演じたことは一生の宝になるでしょう。『春一番』は盛りだくさんの笑いを含む劇ではありません(私はそんな作品も好きですが…)。『春一番』は、作品を通して自分を静かに振り返ることで「心の成長」を願い、出会えたことに「ありがとう」と言えるような作品…ではないかと私は思います。この作品の魅力を一語ずつ丁寧に伝えながら、現代の中学生に演じてもらいたいと思っています。
 全劇研で『春一番』が再演されることを知り、もう一度観たい衝動にかられ、全体会の申し込みを決めました。関東のコンクールで演じてくれた生徒たちが役柄を変えて演じていましたが、彼女たちの成長ぶりも、それはそれは素晴らしく、すっかり熟成された『春一番』は、関東以上の感動を与えてくれて、涙が止まりませんでした。初めて観た時と違い、ストーリーの展開も台詞もわかっているのに、新鮮な気持ちで観ることができたのは、久喜中学校演劇部の努力の結晶なのでしょう。「中学生って素敵だな…」と改めて感じるひと時をありがとうございました。またいつか、会えるとしたら…タイムカプセルを開ける時(?)かしらね…。みなさん、どうぞお元気で。

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